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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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番外編 オオカミ達のクリスマス。(その7)

 正俊はひっくり返っては、くしゃみをした。

「ふぇっくっしょん!」

「風邪か…いつも腹を出して寝ているからな、いつかは風邪を引くと思っていた」

「勝馬くん、そんな冷静に答えないでくれる?多分だけど、これは誰かが俺のことを噂していると思うんだけど…」

「そうだな…お前がゴキブリ並みの生命力だと言っているのかもしれん」

「それ、ほとんど悪口じゃん!」

「褒めていると思うぞ?」

「いやいやいや!」

正俊は慌てて起き上がった。

膿蟲に投げ出された衝撃で頭を打ったせいで、痛みとめまいがした。

「うぐっ頭痛い…おうちかえりたい…」

「残念だが、家には帰れないぞ。ここから出られても、我々には報告義務と言うものがある。本部に戻り、今後の対応をしなければならない」

「あたたっ!頭痛い!痛いよー!俺、早退していい?」

「それが出来るのならいいのだが…この任務が終わりしだい、首根っこ掴んで局長の元へ連れてこいと言われている。お前、何かしたのか?」

「…マジで」

「大まじだ」

「俺さぁ、局長が隠し持っていた菓子類を食ったんだけど、それかな~?きちんとハッピー〇ーンの粉を残したはずなんだけどな~」

「正俊、伝えたからな」

「あっ勝馬くん、ひどい!って勝馬くん、パトラッシュになってる!」

勝馬の姿はオオカミの姿となっていた。

「だまれ、少し休んだら元に戻る」

黒毛のオオカミは灰色の瞳をして、暗がりの場所でもその瞳が光って見えた。

体毛で隠れているが顔には傷があった。

勝馬は力を使い過ぎたのか、身体を伏せって動けないでいた。

「そう…ちなみに俺ってどうなったわけ?」

正俊が聞くと勝馬は答えた。

「お前は膿蟲との戦闘で頭を打って気絶していた。その間、膿蟲の隙を見て戦闘を離脱し、お前を連れて隠れている所だ」

「後輩ちゃんは?」

「黒蟲に連れ去られた」

「マジか」

だとすると、まだ時間はある。

親蟲に産み付けられるか、膿蟲の餌となるかは、それはあいつ次第だ。

あいつが早々にくたばる野郎なら、最初から連れて行かない。

耐えろよ、山犬なんだから…かっこわりぃとこ見せんじゃねーぞ。

正俊はそう念じながら、立ち上がった。

「あの後輩ちゃんが、くたばる前に動きますかな。しかし、あの膿蟲やべぇ~な!」

孵化ふか直前だった。完全になる前に滅しなければ…」

「違う違う、あのねーちゃんのケツがヤバかったって話だ」

「…………」

勝馬は呆れた目になった。

「いいケツしてた」

正俊はわきわきと指を動かしていた。

「孵化する前に、あのケツを守らなければ」

「…孵化する前に、滅することはわかった。だが、お前の脳みその大半が馬鹿になって、手遅れになっていることが深刻だ。一度、死に戻りしたらどうだ?治るかもしれん」

「治るか!」

正俊はオオカミに向かってつっこんだ。

「ところで勝馬くん、ここはどこ?」

正俊は周りを見渡した。

幾つかロッカーがあり、テーブルとイスがある所から休憩所のような場所だった。

しいて言うなら、従業員が使うような場所だった。

「逃走の際、適当な部屋に入ったからな、ここがどこに位置するのかはわからない」

「ふ~ん」

正俊はこの部屋を探り始めた。

電気のスイッチを見つけては点けて見た。

電気は見事に点いた。

「ふん~ふ~ん」

「正俊、何をしている」

「何って、調べもの~」

正俊はロッカーを開けては探っていた。

「ほら、俺らがここに来た理由わけって、従業員行方不明があったからでしょ?」

「そうだ」

「店長は災難だね。いきなり、何人も従業員がいなくなっちゃうだもの。そんでもって、人攫さらいの容疑者としてなっちゃうし、可哀そうだわ」

「仕方ない、表向きでは証明できないことだ。だが、だからと言って、このまま冤罪えんざいを見逃すわけにはいかない。この事件を解決することで、我々がその証明に立てることができる」

「そだねぇ~」

「どうした?」

「ん~?やっこさんがどういう気持ちで、地獄蟲と契約をしたのかなってさ~。あのねーちゃん、美人だったし」

「言っておくが、同情はするなよ。地獄蟲との契約は人道を外れている。理由はともあれ、罰を受けるべきだ。一つ聞くがさっきから、何を探している?」

正俊は、ずっとロッカーの中を探っていた。

「行方不明者は、ほとんど女の子だよね」

「そうだ」

「その彼女達の物が全部ここにある」

正俊は勝馬にロッカーの中身を見せた。

血がついた女物が入っていた。

その奥にあるものも。

勝馬はそれを見た時、目を細めた。

正俊達が行方不明事件を聞いた時から、この案件は手遅れに近かった。

膿蟲が孵化間近と迫って来ている今、被害者は一人二人ではないだろう。

正俊は小さく呟いた。

「わかっているよ…」

勝馬に言われなくても、わかっている。

別に地獄蟲に魅了された奴に同情はしていない。

ただ、行き場のない怒りが膨らんだだけだ。

これから出会うであろう奴に、冷静に対応するために、肝に銘じておきたかった。

地獄蟲に囚われた彼女も喰われた彼女達もみんな、この呪縛から解き放つ。

正俊は床に転がっていた刀を拾った。

勝馬はオオカミから人の姿に戻り、床に散乱した服を拾った。

準備が整えると二人はその部屋から出た。


 部屋から出るとそこは短い通路だった。

その通路はレンガ模様の壁紙を使っており、レトロを感じさせるものだった。

通路を抜けるとそこは喫茶店の店内だった。

店内は先ほどの通路と同じレンガ模様をモチーフにした店内だった。

その店内に着ぐるみと一人の男性が店内の末席に座って居た。

着ぐるみはシカっぽい着ぐるみを着ていた。

長くていかつい角がついているのだからシカだろう。

男性はただずっと下を向いて虚ろげだ。

正俊達が警戒しながら近づくとシカの着ぐるみは言葉を吐いた。

「メリークリスマス、オオカミさん」

正俊はシカの言葉に答えた。

「シカくん、仕事場間違ってない?サンタはどこ行ったの?」

シカの着ぐるみは口から煙を吐いた。

着ぐるみの中でタバコを一服しているようだ。

「オレは、シカじゃねーよ。オレは、ウシだよ」

シカの着ぐるみは、角を取った。

ウシだった。

正俊は言葉を出した。

「紛らわしいんだけど…?」

「これも営業なんだよ、今日はクリスマスだからな。言っておくが、サンタは目の前にいるぞ?」

ウシの答えに目の前の男はビクっと怯えるように反応した。

「へえぇ~あんたがサンタなんだ?何配ってんの?」

正俊の言葉に男性は震えながら答えた。

一応、喋れるみたいだった。

「お、おま、お前たちが悪いんだっ!お、おれの彼女をっ!ころ、殺した!」

「はあ?何言ってんの?」

ウシはタバコを灰皿で潰してから、言葉を出した。

「オオカミさん達、そこまでにしてもらっていいか?」

「こっちも仕事なんでね、無理なんだわ。ウシさんあんたから、蟲のにおいするんだけど?臭いんだけど?」

「ウシさん、このタバコ臭ささがアイデンティティーなんだけど、ちょっとショックだわ。後でウサギさんになぐさめてもらおう」

ウシは携帯を取り出しては、ぽちぽちと打っていた。

ウシは着ぐるみを着ていても携帯を使いこなせていた。

「ちょっとウシさん、話まだ終わってないんだけど?」

「オオカミさん、今日は雪が降っているみたいだ。こんな日に、夢を壊すなんてことはいけないよ」

ウシは立ち上がり、うつむく男の肩を叩いては、そのまま店の出口に向かった。

「待て!」

勝馬が鬼火を使い、出口を防いだ。

正俊は刀から刀身を出し、ウシに斬りかかった。

「やれやれ、オオカミさんは怖いねぇ…すぐに喰ってかかる」

正俊の刃はウシの素手によって止められた。

「……っ!」

そのまま、刀ごと投げ出されてしまった。

勝馬が鬼火を追加しようとした時、背後に黒蟲がいた。

2メートル級の黒蟲がいた。

「くっ…!」

勝馬は直ちにそれを焼き切るが、湧いて出る黒蟲達に足を取られる。

すると、一匹の黒蟲がウシの前に現れた。

その黒蟲は身体を蛍光していた。

まるで蛍のようだった。

「オレはなぁ…蛍が好きなんだ。ほう~ほう~ほ~たる~こいってなぁ…」

蛍のような黒蟲はいきなりその身体を膨張し始めた。

勝馬は嫌な予感がした。

「……っ!!」

派手な爆発音を奏で、店内の一部を破壊した。

勝馬は吹き飛ばされた。

蛍のような黒蟲は爆弾だったのだ。

煙が舞う中、ウシは店内からそのまま出てしまった。

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