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助けてください!天狼さん。  作者: 落田プリン
第四章 走らなきゃだめですか…天狼さん。
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番外編 オオカミ達のクリスマス。(その6)

 暗闇の中で青年は目を覚めた。

どれぐらい意識を飛ばしていたのだろうか?

身体の痛みから、そんなに経っていないと思う。

膿蟲に叩きつけられた衝撃で背中が痛い。

それもそうか、打った所を体重をかけているから、そりゃあ痛い。

青年は身体を動かした。

あ…動く。

黒蟲に群がれて身動き取れなかったのに、今は、普通に動かせることができた。

むっくりと起き上がる。

「いっつう…」

背中痛い…

青年は頭を掻いた。

「耳とか出てないよな…」

あれだけのことがあって、オオカミに戻る事はなかったが…

おねしょ、もとい、中途半端になることは避けたい。

「ああ、よかった…出てないすね…ケツも…出てない」

尻尾とか勘弁だな…

ズボンに穴を開けていないから、もっこりなりそうだ。

新調したスーツに穴を開けたくはなかったが、これから何度もこんなことが起きる。

人前でもっこりなる前に、穴を開けなくては…

「はあ…」

自然とため息をついた。

「俺、かっこわるいっす…」

あの一撃を防げたのに、まんまと受けて、結果はこれだ。

「…はぁ…」

まさか、正俊さんがああなるとは思わなかった。

結構、実力がある人だと聞いていた。

「俺、騙されている…?いやいやいや…まさかね?…正俊さん、無事かな…?ヤバかったらどうしよう…。自分で言うのもなんだけど、あの人、馬鹿そうだし…アホそうだし…そんでもって、ゴキブリ並みの生命力だと思うし大丈夫っすね!」

なんか元気出た。

「むしろ勝馬さんの方が、危なくないすか?」

あれだけ、鬼火おにびを使ったんだ。

体力的にも危ない。

「助けに行かないと…!」

青年は立ち上がった。

少しふらついたが、問題ない。

「しかし、ここはどこっすか?」

真っ暗で何も見えない。

においを嗅いでみる。

「くんくん、おえ…」

血生臭いのは変わらない。

気配は……今の所は何も無い。

黒蟲の蠢く気配、膿蟲の気配、人狼の気配も感じられない。

「俺、一人っすか…」

ぼっちだ…俺、今ぼっちだ…。

そんでもって…

「俺、鬼火使えない」

この暗闇で、鬼火が使えないのは痛感だった。

鬼火は黒蟲を滅するのも有効な術の一つだ。

鬼火が使えなくても、他の術を使えばいいだけの話だが、青年は術すら使えなかった。

地獄蟲を滅するための術が使えないとなると、それはただの人狼だ。

だが、青年はこうなることをわかっていた。

他の人狼の足を引っ張ることも、命の危機にだって陥るのもわかっている。

わかっていて、山犬になることを決意し、ここまで頑張って来た。

「せっかく、山犬になったんっす!弱音は吐かないっす!」

青年は暗闇の中をしっかりとした足取りで進んだ。

すると、足に何か当たった。

重みがある物だった。

足に当たった物を手に取る。

「こ、これは!俺の!紅桜べにざくらっす~~~!」

手になじむ延べ棒は、俺の武器だ。

すべすべの紅桜を撫でまわして、武器の調子を見てみる。

暗闇だから、そこまでわからないが、床を軽く叩いて音を確かめる。

重みがある低くい音が響いた。

「いいっすね」

武器の調子はいいみたいだ。

そうして、青年は警戒しながら、暗闇の中を進んで行った。


 暗闇の中を歩いて、おでこをぶつける。

もん絶しつつ、目の前に壁があることを認識した。

青年は額を押さえながら、壁伝いに歩いた。

すると、ドアノブらしきものを手に触れて、そこは扉だと認識する。

「ここっすね!」

青年は一気にドアノブを回し扉を開けた。

視界一杯の明るさに目を細めた。

青年の前に広がったのは、廊下だった。

それも、幾つもの扉がある廊下だ。

「ここって…戦った場所とは違うっすね…」

扉にはプレートがつけられている。

プレートには番号があり、それぞれ順につけられていた。

青年が出て来た扉には、105と番号がふられていた。

向かいの扉には104とふっていた。

きちんとした番号がふられていることから、確立した世界だと認識した。

正俊達といた場所は、廊下と扉が歪んでいた。

異常だとすぐにわかった。

だが、ここは誰かに言われないとわからない場所だ。

長い廊下はなく、行き止まりがあり、上へと続く階段があった。

反対の通路には、カウンターがありレジがあった。

カウンターの先には、出口らしき扉もあった。

現世の世界と似た世界だった。

一般の人が迷ったら確実に現世だと間違えるだろう。

「ここって、カラオケボックスっすよね?えらく広い建物っすねぇ…」

きっと上の層もカラオケボックスになっていると違いない。

青年はとりあえず、出口の方に向かい、開くかどうか確かめた。

「やっぱりっすか…」

扉はガッチリしまっていて、開かなかった。

ここは幽世、そう簡単には帰してはもらえない。

「なんなら、どうするか…頑張るしかないっすね」

青年はこの空間を見渡し、気合を入れた。

「さて、幽世攻略と行くっす!」

どれぐらい、一人で行けるかわからない。

だが、動かなければ何も始まらない。

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