ある女子生徒のお話。
パラパラと黒い灰が落ちてくる。
黒い毛虫が焦げて灰となって土に還ろうとしていた。
緋色に輝く夕陽のせいで焼けたのか、それとも黒毛虫自体が燃えたのか、今の私にはわからなかった。
だけど、この異形が確かに終わりを迎えてる事はわかった。
焦げたにおいが私を包む。
密かに香る匂いに私は気がついた。
あっこの甘い香り…。
金木犀の香り。
確か保健の先生に貰った匂い袋があったはず、制服のポケットを探ると小さな紅い巾着が出てきた。
あっ破れてる!
紅い巾着は虫にでも食われたように破れていて、中から金木犀の花弁がぽろぽろと出てきた。
「どうして…どうして…どうして」
とても悲しそうな声が聞こえた。
小さく泣きそうな澄んだ声でそれは言った。
「…どうしてぇ、わたしなの?」
私の目の前のいる銀色の人狼は、そこに立ったままじっと聞いていた。
「わたしなにか…悪いことした?」
バラバラになった四肢が、じりじりと焼いていく彼女がいた。
首だけになっても彼女の口元は動いてはおらず、マネキンのように青白く瞳は虚ろなままだった。
だけど、魂というものがあるのならば彼女はそこにいるのかもしれない。
「どうしてなの?みんな!どうして私を無視するの!」
私は察した。
この経験は、誰にでもあるのかもしれないし、ないかもしれない経験だ。
胸の奥がズキっと痛くなった。
「どうして、私になったの?私!みんなの為にお菓子いっぱい作ったのに!可愛いものだっていっぱいあげたのに…どうしてぇ…みんな捨てるの?」
胸の痛みがひどくなって、私は胸を押さえた。
「ねえ、教えてよ!どうして!わたしなの?どうして…どうして…どうして…………」
彼女が、どういうモノだったのか私にはわからない。
でも、目の前の女の子は学校生活に悩む学生だったのかもしれない。
もしかしたら、私と同じくらいの普通の女の子だったのかもしれない。
彼女が燃え尽きる間際まで、私はどうしようもできなかった。
ただただ、その言葉を受け取るぐらいしかできなかった。
ポロポロと落ちる金木犀の花弁が香って来たのだろうか?
最後には、
「…いい匂い」
そう言い残して、その声は遠くなった。
本作のテケテケの正体。
分かりやすく解説します。
ある女子生徒のクラスでは、いじめがありました。
いじめの対象は、最初は彼女ではなかった。
彼女は、お菓子作りや小物づくりが好きでした。
それを、クラスの女子たちに配っていたりして、いじめから遠ざけようとしたのです。
でも、ほんの少しのずれで、いじめの対象となってしまったのです。
そして、彼女は怪物になってしまった。
後の詳しいことは、本作にて。