番外編 オオカミ達のクリスマス。(その2)
牡丹雪がゆっくりと振り落ちる夜に、街の片隅を歩く。
年期が入ったビルとビルの隙間に入る。
換気扇から白い息が漏れ出ているのを見ては、少しでも暖を取ろうと手をかざす。
その路地裏に、タバコの吸い殻を見つける。
幾つものタバコの吸い殻の中から一つのタバコを拾い、人の痕跡を辿る。
「…間違いない、この先だ」
正俊は相棒に告げ、懐から携帯灰皿を出し、タバコを入れる。
「さすがだな」
そんな相棒を褒め、勝馬は持っていた刀を渡す。
「ぐふふっ野良の知恵ってやつよ~、これっテストに出るから!」
「だそうだ」
二人の視線が青年の方に向いた。
「えっ俺っすか!」
後から着いて来た新米の青年。
「誰がいるんだ?わん子郎」
「そうだぞ」
「うわっマジすか」
二人に言われて、青年は困惑した。
「俺、その臭いは苦手で…あ、他の嗜好品なら大丈夫なんですけど…」
「そっちじゃない」
「えっ?」
「お前、奴らの臭いには慣れておけ。微かな臭いでも足取りを辿れる」
正俊の言葉に青年は、目を見開いた。
「マジすか、あのタバコだけで…」
正俊はタバコ一つの臭いで地獄蟲の居場所を辿れる。
大抵の人狼は、臭いが濃いものと別の臭いを同時に嗅ぎ分けるのは難しい。
刺激臭を一気に鼻に入れているようなもので、濃い臭いに負けてしまうからだ。
青年は驚いていた。
「正俊さん、すごいっすね」
「でぇへへへ~☆」
「おい、あまり褒めるな。図に乗る」
勝馬の指摘が入る。
正俊は頭を掻きながら笑っていたが、道端にあった雑誌の山に足を突っ込むことになる。
「誰だよ!こんな所に雑誌置いた奴!はっ…まさか、エロ本か!」
スッと正俊は膝折り、雑誌に手を伸ばす。
勝馬は手の平に青い火を灯した。
「おい、正俊。それは不法投棄だ…そのまま燃やされたいか?」
正俊は素直に勝馬の言葉に従った。
「すいませんでした」
さすがに一緒に燃やされたくない。
あと、勝馬の鬼火は火事が起きる。
「わかったな、こいつは馬鹿だ」
「はあ…」
青年は戸惑いながら返事をすることになった。
今後、正俊達はタバコに付いた地獄蟲の臭いを辿って行くことになる。
ビルの窓から漏れる明かりを頼りに、暗い路地裏を進んで行く。
正俊は途中、味噌ラーメンの匂いがしたと、そっちの方に行ってしまった。
そんな彼を勝馬は、真面目にやれと頭を叩き、首根っこを掴み連れ戻す。
「さっき、食べただろう」
「それは、それ。これは、これ。ラーメンはデザートだ」
「言ってろ」
そのやり取りを聞きながら、青年は二人について行く。
二人は気が抜けた会話をしてるが、青年は気にならなかった。
青年にとっては、これが初の任務だからだ。
自然と気が引き締まる。
すると、ある喫茶店にたどり着く。
レトロな雰囲気がある喫茶店だ。
青年はあることに気づく。
「ここって、表通りにでも行けるっすよね。どうして、わざわざ裏から?」
その言葉に勝馬が答える。
「幽世に入るには三つ条件がある」
「その条件とは?」
「一つは、奴らが招きやすい条件を作ることだ」
「招きやすいって…俺ら、奴らを退治行くんっすよね。そんなわざわざ、下手に出るようなことするんすか?」
「退治するからこそだ。奴らの立場になって考えて見ればわかる。我々が表に立って、奴らは早々に巣に招き入れるか?」
「確かに、自分たちを退治しに来てますもん、よけい入れたくないっすよね」
「我々が迷った振りをして、奴らの目を誤魔化す」
「なるほどっす」
「二つめは、陰陽。簡単にまとめると、光と闇のようなもの。二つはあっての現世。闇側に奴らが棲んでいるとなると、我々もそれなりに道を歩まなければならない。要は、道を外すことだ」
「道を外す?えっ?」
「言っておくが、罪を犯す方じゃないぞ。人の道、表道から外れることを指す。今の我々のように表の道を使わず、裏道を使うことで、陰の道に入れるということだ。ただし、ここを間違えるな裏道を使ったって、幽世に入れんからな」
「えっと…要するに、出来るだけその闇の道に近づけることで、より幽世に入る確率を上げるため?ってことっすか?」
「その通りだ。正俊がよくわからんで突き通した条件二だ。賢いな」
「そうっすか…」
それを聞いていた正俊が、うるせぇとぼやいていた。
「そして、三つめは…」
勝馬がそう言うと、正俊は急に飛び出した。
「俺らが人間じゃないこと!」
正俊は喫茶店の方へと走って行った。
「あの馬鹿、人の話を…まあいい。行くぞ、遅れると迷子になるぞ」
「あっはいっす!」
勝馬と青年は正俊の後を追った。
正俊は喫茶店の正面の入り口に入らず、裏口に回った。
従業員入り口と書かれた扉を見つけては、扉を開けそのまま入った。
勝馬達もその扉に続いて入って行った。
ぼちぼち、投稿していきます。(/・ω・)/
分からない点や誤字間違え、文章間違えとかありましたら、気軽に教えてね。




