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第一話:白き地獄

 そこはどこまでも真っ白い異様な空間だった。


 ここには物もなければ果てもない。白一色の世界は俺の遠近感を狂わせて遥か彼方まで続いてるようにもすぐそこで終わっているよう見えてしまう不思議な光景。


 夢でも見ているのかと思ったのだが、俺はさっきまでニューヨークを舞台に銃撃戦を繰り広げていたのだ。それは紛れもない現実のはずだ。今でも硝煙の臭いと冷たい銃の感触がこびりついている。


 俺を逃がすために犠牲になったジェームズ。愛を交わしたキャサリン。敵でありながら憎めない性格のボブ。俺の過ごした今日という濃密な一日がすべて夢だとでもいうのか? ……夢かもしれない。


「お、新入りがきたな」


 白一色というのは語弊があった。

 精神衛生上、無意識に視界から消してしまっていたのだが、俺の周りには十数人もの男が手持ち無沙汰そうにしていたのだ。


 どいつもこいつも冴えない風貌で一目見ただけで陰キャ非モテ非リア充なのが丸わかりだ。できればこいつらとは関わりあいたくはなかったのだが、その中の一人が俺に話しかけてきやがったのだ。

 うわー、童貞がうつるー、って俺も童貞なんだけどね。


「えーと、あなたは? 」

「俺は地味太志」

「モテなそうなお名前ですね」

「ああっ! アンタ喧嘩売ってんのか? 」

「ごめんなさい、つい本音が。昔からマジメで正直なことしか取り柄がなくてハハハ」

「なんか照れ笑いしているけどそこは謙遜する場面じゃないからな? ったく、何も知らないアンタに色々教えてやろうと思ったのによ」


 ちっ、誤魔化されなかったか。


「本当に悪かったと反省しています。この通り謝りますからどうか機嫌を直してください。同じ童貞じゃないですか」

「アンタ全然悪かったと思ってねーだろ。はあ、まあいいや。童貞同士でいがみ合っててもしょうがねえしな」

「話の分かる童貞でよかったよ」

「さっきから一言余計なんだよ! 」


 こいつ名前の割に反応が面白いな。

 なかなか弄りがいがある。でも、これじゃ話が進まないか。


「それでここはどこなんですか? ネットで面白ニュースや面白画像とかよく漁ってますけど、こんなおかしな空間はじめて見ましたよ」

「だろうな。俺やここにいる連中もみんなそう思った」

「はあ、そうですか。で? 」

「ん? 」

「いや、ここはどこなんですか? 」

「知るわけがないだろ」

「じゃあ俺たちは何のために集められたんですか?」

「そんなこと俺に聞かれてもなあ」

「おい! 」


 こいつ事情通なふりして偉そうなこと言ってたが何もしらねーのかよ。使えないゴミじゃないか、まったく。


「まあ、怒んなって。俺だって突然連れて来られたんだから仕方ないだろ」

「だったら思わせぶりなこと言うんじゃねーよ」

「お、素が出たな。正確なことは俺たちをここに連れてきた奴に聞かないと分からないけでよ。それでも予測することならできるんだぜ」

「予測? いったいなにを? 」

「奴の目的さ。アンタ、ここにいる奴らを見て何か気づいたことはないか? 」

「一生童貞で終わりそうなやつらだなっと」

「相変わらず口が悪いな。だが、そのとおりだ。俺もそれに気づいて全員に話を聞いて回ったんだ。そして共通点を見つけた」

「童貞? 」

「大正解。ここにいるのは全員童貞だ。しかもただの童貞じゃない。年季の入った筋金入りの童貞だ。三十年熟成されてる」

「地獄絵図だなおい」


 はあ、どおりでこの空間はイカ臭いわけだ。実はこの白さは精液の色なんじゃねーの?


「ここまで言えばピンとくるものないか? 」

「いやさっぱり」

「巷にはこんな都市伝説がある。それは童貞が三十歳を超えると魔法使いになるというやつだ」

「あーあーあーあー、あったあった。そんな話たしかにあったな。ネットの笑い話だろ? 」

「俺もそう思っていたが、今の状況とピタリと一致するんだ」


 いやー、いくらなんでもそれはないだろー。童貞菌が脳みそにまで回ったんじゃないだろうか。こいつ。


「俺がお前に話しかけたのはこの説を裏付けるためのものだ」


 ああ、なるほどな。意味もなく童貞と喋るやつなどいないと思っていたんだ。やはり裏があったか。


「聞かせてくれ。おまえの年齢を 」

「童貞かどうかは聞かなくていいのか? 」

「見れば分かる。さあ教えてくれ」


 失礼な奴だなまったく。俺も大概だからお相子だけど。


「……たしかに三十だ」

「よっし! これはもう確定だろ! 十八人が全員三十歳で童貞だなんて偶然じゃありえない。これは意図して集められたんだ。ひゃっほー」


 いい歳した童貞がはしゃいでやがる。見苦しいったらありゃしない。

 しかし奴の言うとおり俺たちは何らかの意図で集められたことは確かだろう。だけど果たしてそれが魔法をもらえるなんて好意的なものなのかは疑問だ。


 むしろ世界に貢献しない不要なものとして処分される恐れだってあるんじゃないか?

 もしそうだとしたら……プライドを捨てて風俗かなんかで脱童貞しとけばよかったか? いやでもなあ。


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