第6話―奇怪その1
現在は午前8時55分、男は朝休憩の時間である。この家ではリーンのような旅人を止めている間だけ、偶数班に分かれて仕事をする。今回はたまたま女性一人だったので男女班に分かれて仕事をしているのだ。
ガイの祖父はコーヒー片手に新聞を見ている。このご時世、物騒な話が多いためか、新聞は癒しの情報が大半を占めている。癒し効果のあるアロマだったり、癒される猫の動画だったり、まぁ色々だ。
「なぁガイ、遺産はどうするんだ?」
祖父はコーヒーを口に含み、新聞紙を捲る。こんな風に話し出すとき、ほとんどがエロ本と関係ある話だ。
「遺産って父さんたちの?」
「そうだ」
「前にも言ったけど、使う時が来たらドカッと使うさ。今更なんでそんなことを?」
「いや、最近小遣いが足りないからちょっとだけ貰おうかなと……」
「祖母ちゃんがいるのにエロ本買ってんじゃねえよ! このクソジジイ!」
「仕方ないんじゃ! 今の祖母ちゃんはそんなにエロくないから……」
瞬間、祖父の頭部に手刀が落ちた。祖母のものだった。どうやら先ほどの会話を聞いていたらしい、顔が真っ赤だ。そのままの勢いで彼女は祖父にこう言う。
「祖父ちゃん、後で話がある」
祖母は鬼の形相で階段を上がってく。その背中からは初対面の人間が恐怖を覚えるほどのオーラが見えた。
それから数時間後、現在はお昼休憩の時間で4人全員リビングに集まっていた。昼食をとりながら談笑でもしているとウォーレンがやって来た。いつものスーツが土で汚れている。いったい何があったのだろう。
「いつもより遅れたなウォーレン。何かあったのか?」
「ははっ邪魔なものを一掃してきただけです」
「そうか。これから何をどうするんだ?」
「言ったでしょう?第3段階へ突入するんですよ」
「だからその第3段階の内容をだなぁ……」
どんな内容か二人に知らせたかったんだけどな、とガイは頭をかく。
「あっそうだ。リーンさん、あなたが必要ですので来てください」
「そうなんですか? でもタリスさんたちに迷惑が……」
リーンはガイの祖父母を見つめた。彼らだけでは羊たちの世話は無理なのでは、と暗に言っているようなものだ。だが彼らはそれを気にも留めず、大きな声で笑い出した。
「大丈夫じゃリーンちゃん!ワシらこう見えて筋力あるから。」
「それにもしもの時のためにロボットを購入してるからね、大きな問題は無いさ」
その言葉を聞いたリーンは安心したようで、ウォーレンの頼みを快く受けたのだった。