第17話―装置/「夜明けの明星を目指して」―
そういえばガッシュ2更新日やん! ってことで投稿です
魔獣の女王、アリアが宣戦布告をした日から3日経っていた。ガイたちはできる限りの準備をして、徒歩でガニメデタウンへと向かっていた。カレンシティの岩山を超えて、もうすぐガニメデタウン。彼らは早朝に出発したが、既に周囲は夜闇に包まれていた。
月明りの下、ガイは考えた作戦が上手くいくのか不安に感じていた。
「リーン、隠密だから徒歩っていうのは分かるけど、本当にあのイベントの装置が生きてるのか?」
「断言はできませんが、あれは街を覆う防御魔術を発生させるためのものです。私の全力を以てしても破壊することは不可能です。魔獣の姫アリアでも完全破壊は難しいでしょう。それにそれだけのメリットもない。」
彼らの計画は希望的観測も少し混じった推測だった。この短期間で考えた作戦であり、敵もある程度は想定しているだろう。しかしそれだけオーソドックスな作戦なため、これに賭けなければ運試しの要素が強くなりすぎる。アーロンたちとの協力も必要であり、これ以上の作戦は難しかった。
深夜の行軍はうまく成功した。今2人はガニメデタウンの家屋の中だった。
町のいたる所から腐臭が漂っており、ニュースでは分からない凄惨さが伺える。しかしそんな状況でも建物は基本的に整った形で残っていた。
(町が綺麗なままだな。ここまで綺麗だと、防壁発生装置は以前と同じ場所にあるかもな)
(ええ。調査する時間が省けそうですね)
ガイたちが探しているものは防壁発生装置だ。ガニメデタウンだけの話ではないが、錬金事変のきっかけとなった襲撃事件の影響でテロ対策をより強固なものにするために作られた物だ。防壁生成魔術は待つ同地点から球状に展開されるため、町の真ん中に設置する必要がある。
そして今、この町の中心にあるのは避雷針のようなものが天高く伸びている白いビル。名は……
(行きましょう、夜明けの明星へ)
この私、ウォーレンを含めた最強たちはオールヘクス社の前に居た。オールヘクスは本国から隔絶された島にあり、独立国家のような影響力も持っている。だからこそ一国の貴族という立場では格が足りず、国家を背負う最強という力を以てしてアーロン様は依頼をしたのだ。
「「時間がかかるとは思ってたけど、こんなにかかるとはね~」」
幻術双子のアリーシャとフィオナは、白雷の桜凛太郎にぶら下がって遊んでいた。2人の言葉に、凛太郎さんが返事をする。
「うまくいけば確実に我々が勝利する力だ。時間がかかった分、質の高い物を作ったということだろう」
凛太郎さんは2人に雷を物理的に落とし、双子はそれを楽しそうに避けている。凛太郎さんの制御力もさることながら、2人のスピードも凄まじい。この3人はとても仲良しで、最強で集まる機会があれば毎回この遊びをしている。
子供の遊びにしては少々過激な姿を見ながら、私はインさんたちと話し合っていた。
「アーロンという子、運がいいですよね。実力としては私たちより数段低いのに、あのアリアとかいう魔獣の統領と戦って生還しているとは」
最コウの盾と呼ばれるインさんは自身の魔術を応用して作り出したマッサージチェアに座っていた。魔術の調整が難しいらしく、自分の分しか作り出していない。一瞬羨ましそうにカストルさんが見つめていた。
「確かニィ、奴の運は良いナァ。それに財力もあルゥ。個人という目線では、俺達の誰よりもナァ」
彼の言葉に人形遊戯のネロが続ける。
「許可を取って試しましたが、僕の人形操術も効果が薄いです。特に強力な人形操術・烈火でさえ、解除されかけました。どうやら洗脳系に対する耐性が高い体質のようです」
ネロは現代の最強の中では2番手の古参。インさん以外は洗礼として人形操術・烈火を使われたことがあります。私も当然受けたことがありますが、結果は惨敗。カストルさんは魔術の応用で突破したそうですが、直撃したら彼も解くことはできないでしょう。
「アーロン様は洗脳魔術を2年ほど受け続けていたので、耐性が強くなったのでしょう」
「オイ、俺初耳だぞ!」
カストルが妙な発音をしていない。本当に驚愕しているらしい。
「えっ、カストルさんも居るときに言いましたよね? 今日は意地悪言ってないですよ」
私はたまに意地悪で嘘をついたりします。しかしこんな大事なことで嘘をつくほど愚かじゃない。
「カストルくん、あなた肝心なところだけ毎回聞いてないですよね。そろそろ私も限界ですよ」
カストルは不真面目な見た目をしていて、中身も不真面目である。肝心なことも聞いていないこともあるし、提出義務のある書類でさえ、監禁か軟禁されないとめんどくさがってやらないこともある。それだけ傲岸不遜なところもある彼だが、最強最古参であるインには頭が上がらない。
「イン爺さん、本当にごめんなさい」
オールヘクス社のロビー。俺は数多くの社員に見送りをされていた。確かに俺は一国の貴族でもある。だが、それ以上にもしもの時のために武力を揃えているようだった。どうやら外に控えている最強たちにも負けるつもりはないらしい。
もしもの時には、そんなことを考え、貴族として恥じないようにふるまうように心がけていた。とてもつらい。
「アーロン様、今後ともご贔屓にしてくださいませ。私共、首を長くしてお待ちしております」
眼前に居るのはオールヘクス社の魔術関連機器開発部門担当のメリィ・ファンだ。眼鏡をかけた長い黒髪の女性で、今回の開発にも大いに貢献してくれた。
「こちらこそ、最先端の魔術開発を垣間見ることができ、恐縮でございました。また利用させていただきます。それでは失礼いたします」
踵を返してロビーから出る。ガラス張りの扉から出て、アーロンはやっと一息ついた。オールヘクスを一国と捉えるならば、相手は自分と同等以上の地位にある貴族と言えるだろう。顧客でもある立場から対等に接しようと考えていたが、それでも全面戦争が起きないか戦々恐々としていた。
「ふぅ……試作品も使ってはいたが、本当に小さくなるとはな」
以前使った試作品は軽自動車程度の大きさの機械だった。しかし今は前腕を包むことができる程度のものになっている。
「アーロンさん、無事に受け取ったようですね。誠意として1人で受け取りに行く、と聞いたときはドキドキしましたよ」
「ああ、だがこれで……」
「準備は万端、ですね。お遊びはお終いにして、出立しますよ」
インが目くばせをして、最強たちは目つきが変わった。子供だろうが、大人だろうが、殺すという覚悟を感じる。
「夜明けの明星を目指して」




