番外編―ある日のガニメデタウン
遅れて本当にすみません……。思ってたより伸びちゃって、細かいところを調整してたら今になってしまいました。
番外編ですが、そこそこ重要なので読んでいただけると幸いです。
森の中のボロ家、そこで僕は産まれた。父さんと母さんは、いのちをねらわれてる? とかで、人が居ない所に行きたかったらしい。
僕が産まれてから5年くらい経った時、僕たちのボロ家にある人がやってきた。
「リーン・ターナーと申します」
どんな理由でやって来たのか、どうして僕らの家を知ってるのか、気になることはたくさんあったけど、聞けなかった。
リーンお姉ちゃんを初めて見て、僕は見るものが変わったんだ。何でもない川が、森が、きのこや、みみずも、リーンお姉ちゃんと一緒に見たら初めて見るみたいにワクワクした。
どうしてなんだろう、また会いたいと思った。
しばらくした後、お姉ちゃんはまたやって来た。なんでか知らないけど、お父さんとお母さんは泣きながら「ありがとうございます」って言ってた。悲しいのにありがとうってどういうことなんだろう?
でも、ここからまた僕の見るものが変わったんだ。
次の日、僕たちはガニメデダウンってところに行った。これからはここにずっと住むらしい。森も良かったけど、ここも面白いね。
リーンお姉ちゃんがまたやって来た。花がいっぱいある所に、花を置いてた。僕もまねっこしてみたら、お姉ちゃんは泣いて抱きしめてくれた。なんで、ありがとうって言ってるんだろう。
それから、リーンお姉ちゃんは時々遊びに来てくれた。おいしいご飯とか、おもちゃとか持ってきてくれて、みんなで楽しんだんだ。
そんな日が何日も続いた後、しばらくしてお姉ちゃんは来なくなってた。お父さんに聞いたら、お仕事でしばらく来れないって。寂しいなぁ。
かれこれ半年経った。ガニメデも、前より四角い建物が増えた。僕らもそこに住んでる。冷たい風が無い嬉しさも知れた。リーンお姉ちゃんにも教えてあげたいな。
そう思ってたら、お姉ちゃんから手紙が来た。仕事が終わってもうすぐ遊びに来れるって。
手紙には来る日も書いてあった。この日って確か、僕の好物のきのこスープがもらえる日だ。嬉しいことがたくさんだと、眠れられなくなるね。お姉ちゃんが来る日まで、中々眠れなくて目の下が少し黒くなっちゃった。恥ずかしいけど、お姉ちゃんは笑わないから、気にしない。
さぁ当日、お姉ちゃんが来るから準備しないと。
いつもより早く起きた僕はお父さんを起こした。きのこスープをたくさん貰わないと。
お父さんと手を繋いで、きのこスープの匂いの方に歩いて行く。
今日は後ろからの風が強い。なんだか変な音も聞こえる。いつもより走ってる人も多い。
何かがおかしい。そう思ったときには、もう父さんに抱きかかえられてた。
父さんの心臓の音、だんだん音が大きくなる。
変な音は近づいて、父さんの音も大きく……。
「エリー、振り返らず前へ走れ。ご飯をくれる人が守ってくれる」
父さんどういうことなの? 教えてよ。振り返っても、父さんはいなかった。
父さん、家に帰ったのかな。でもお姉ちゃんのスープを余分にもらわないと。
どうしたらいいんだろう……。
僕は……。
本当は寂しかった。いつも父さんと一緒に貰ってるから、どう貰えばいいのか分からなかった。だから、代わりに母さんを呼ぼうと思って家に帰ったんだ。
そしたら、家が崩れてて、化け物がいた。
父さんを握って、母さんを踏んでる。やめろって言っても止めようとしない。
「エリー、なんでここに」
こんなことになるなら、戻らなきゃ良かった。
「逃げて、エリー」
2人の声が聞こえた。その次には、はじけ飛んでた。風船みたいに、人が。
怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖イこわいこわいこわぃこわいこワイこわいぃ
怖かった。母さんたちが殺された。でも逃げなきゃ。2人の願いだから。
逃げなきゃいけない。でも、足が動かない。怖すぎて魔術も使えない。
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ。
もう化け物に捕まった。腕で締め付けられてる。怖い。逃げなきゃ。
逃げなきゃ
体が熱い。変な絵が見える。魔術を使ってるみたいだ。化け物の腕がボロボロに融けていく。いや、僕の方に肉が吸われてるんだ。
腕に隙間ができた。これなら、逃げられるかも。
一目散に僕は逃げた。一瞬振り返ると、化け物の腕も届かないぐらい遠くになってた。やった!
そう思ってたのに。
急に僕の体が重くなった。世界が赤くなる。口から血の味がする、鼻からはとろりとした感覚がある。全身から血が出てるんだ。そのせいか、息が苦しい。這って進もうとしても、腕を動かす力が出ない。
呆気なく、捕まってしまった。僕はここまでしか逃げられなかったのか。
風を切る音が聞こえた。振り返ると、6歳くらいの、化け物と同じ顔の女の子が見えた。……。
そこから、僕の世界は暗闇に包まれた。体もあり得ないくらい潰された感覚があって、それから1時間経った頃には痛みにも慣れた。もう落ち着いてものを考えられる。
「父さん、母さん、逃げられなかったよ……」
死ぬのは初めてだけど、こんなに意識が続くんだ。音も聞こえる。幽霊になるにしても、目が見えるものだと思ってたのに。風が吹く感覚もある。なんだかおかしい。
冷静に考えたら、匂いもする。口の中は味がないけど、舌を動かせる。なんで見えないんだ?
僕は意を決して動こうとしてみた。どんな動き方でもいいから、前に進もう。体はここにあるって、色んなことが教えてくれる。前に進めるはずだ。少しずつ、足を動かして。
やっぱり、なんで? あらゆる感覚が、ここに体があると言ってる。腕もある。血が流れる感覚もある。
僕は、生きてる?
唯一の疑問を解決すべく、僕は目を触ることにした。目に触る寸前、僕の視界は復活した。
僕は生きてたんだ。
ならやることは1つだ。このまま、誰にもバレずに逃げないと……! 父さん達の、最期の願いなんだから……。
最期まで残る感覚は聴覚だという引っ掛けのつもりだったのですが、気づいていただけたのでしょうか。
今回の番外編ではもっとミンチにして痛い痛いと言わせるつもりだったのですが、流石に助長だなと思ってできませんでした。やっぱ精神リョナより肉体リョナの方が好きですが、それを表現するのは難しいですね




