第4話―「「なんですかカストルさん?」」
そういえばウォーレンが最強の立場にあるのにガイが知らなかった理由がまだですね。
本来最強とは他国に対する威嚇として有名にすべきなんですが、彼は錬金術混乱時代のせいで発表式もお流れ、国としてもバレル家に異常な力を持たせないように今まで知られることは無かったということです。
あと彼の魔力量はもし次魔力切れになって増えたら1穣ぐらいいきます。こんだけ魔力あっても彼は人類最強にはなれないある弱点がありますが、それはまた今度に。
「皆さん! 月の裏側に魔物が居ます!」
全員の目の色が変わった。
「「ねぇねぇウォーレンさん、それって本当?」」
「ええ、本当です。私は先ほどのガウス陛下の言葉に従い、月の裏側を一面炎で焼いていました。皆様も知っての通り、炎を生み出すだけの魔術は酸素を使わずに燃えて、何かに燃え移ると酸素を使って燃えます。そして月の裏側のちょうど中心、そこに大きな燃えない点がありました。魔術の炎で燃えないということは何かに燃え移って酸素を使うようになったということ。石ころや大きな岩ではありません! 大きさ、形からして100体はいます!」
その言葉を聞き終える前に全員が動いていた。双子は全力を出すため右隣の赤い扉に入った。ウォーレンは月面全体を炎で覆い、敵の動きを調べている。
そして他の3人の足下に魔法陣、いや魔術陣が現れていた。最強に近い実力者はその使用する魔術の強さのため地面に流れた余剰魔力が陣を形成するのだ。
「顕現せよ、貫内硬外!」
インは月面基地を全て覆う盾を精製。内部からの攻撃は外に通り、外部からの攻撃は通さない完璧な防御だ。
「落雷」
白雷の凛太郎はその地点へ雷を落とす。彼が持つ視覚外に対する遠距離への攻撃手段はこれしかないが、これをまともに食らえばこの場の全員が死ぬ威力はある。
「音で惑え! 震えて死ね!」
カストルは廊下を叩き、その衝撃を転移させる。転移した衝撃は月面を揺らし、その音を拾って混乱した魔獣は凛太郎の落雷を受けてしまった。
イン以外の者は魔術の余波も鎮まり陣も無くなっている。
「「あれ? もう終わっちゃった?」」
双子は頭部にVRゲーム機のような物をかぶって残念そうにする。しかしこんな簡単に終わるほど敵が間抜けなはずもない。ウォーレンの違和感は未だ健在だ。
「まだです! 数体死んだようですが、ほとんど健在です! 1匹がこの月面基地へ向かって直進中! 10秒後には到達します!」
「わーお、凄い速さ。でも速いだけならインじいちゃんだけで良いよね、アリーシャ」
「うん。問題はなんで速いのかだよフィオナ。それによってはかなりの強敵だと思うよ」
そうだ、もしこれが身体能力が高い故の速さならば敵が保有している魔術は別にある。
衝突の衝撃が彼らを襲うがカストルのシェイク・アンド・ダイによって衝撃が転移して無効化される。
「おそらく身体能力によるものです! 元になっているのがチーターだと簡単に分かるほどシルエットが同じです! それに奴らにだって参謀はいるはず! ただ魔術で速くなっているモノを使うはずがない!」
「そうだナァ。なんにせよジジイの盾はなかなか崩れネェが、衝撃は中にも通るから行ってくるワァ。ウォーレン、他にも来てるんじゃネェのか?」
「はい。先ほどのチーターが10体、比較的足の遅いタイプが3体来ています」
それを聞いた途端、カストルは走りだした。
「国王ヨォ! 宇宙服寄越セェ!」
彼の国の長はサイコロのような小さな正六面体を投げ渡した。それを受け取り、強く握ると手から液体が流れ出していく。床に落ちた液体は猛スピードで体を登って宇宙服を形成した。
それを確認した後、彼は全速力で月面基地を出た。そこにはインが作り出した貫内硬外がある。貫内硬外は内部からは簡単に出られるため、彼は足を止めずにその外側へ出る。
約100メートル先には鬼のような巨大な生物がいた。魔獣は生物が改造されて作られている。その元となった生物が分かりやすいほど身体能力が高く魔術も戦闘の補助の要素が強いモノとなり、逆に分かりにくいほど切り札となる魔術を複数持っている。つまり眼前の鬼はこの場において切り札となる魔術、例えばタングステンさえも融解するような炎のようなものを持っている。
しかしカストルは魔獣に対する知識はほとんど伝えられていなかったため、そんな事は考えていない。もし伝えられていたとしても関係なかった。
最強とは、一芸に秀でた結果なるものが多い。しかし彼は一芸だけではないのだ。
鬼が先に動く。いや正確には素早さに秀でた魔獣が動いた。11体の素早い魔獣は強靭な脚力を用いて上空に跳び、月面基地の真上で衝突しあった。そしてその衝突地点を始まりとし、月面基地を覆う巨大な炎のドームが生成された。月面の半分は覆うほどの大きさだ。
「なるほドォ、集団で生成するタイプの魔術カァ……ちょっと気になるネェ」
彼は上級魔術である水の剣を生成し、ドームに投擲する。するとドームの内側の表面から猫の前足が飛び出してそれを打ち消した。上級魔術程度に対処できるなら、弱点を突いて壊すという手段をとることは出来ない。最強の中で最も水の魔術が得意なのがカストルなのだから。もし最上級魔術を使えば壊せるかもしれない。しかしその魔力をシェイクアンドダイに使えば確実に倍以上の威力が出るため、使うだけ損だ。
(弱めの水程度ジャあ打ち消される……数だけ星人のウォーレンには対処不可能だナァ、双子はウォーレンに次ぐ数だけ星人で最大火力はここぞという時にしか打てねぇ。ネロも全力は出せねぇし。インのジジイと凛太郎なら確実に壊せるガァ、多分俺らも死ぬ……俺がやるしかネェか)
地面が揺れた感覚がした。ふと見ると鬼の腕が異常なほどに伸びていた。それだけじゃない、腕が8本に増えている。
それを見てカストルは頬に触れて月面基地へと電話をした。
「「なんですかカストルさん?」」
「ウォーレンと双子ォ! 遅い奴は腕を増やせるから他の2体頼んダァ!」
彼らの応答を待たずに電話を切り、鬼の方向へ向いて大口のようで嘘偽りが無い言葉をいいのけた。
「ハッハァ! 『人類最強』の俺が相手してやるゼェ!」
ネロ君のこと完璧に忘れてたので追記。
20220916 改めて見返すと双子ちゃんが弱すぎる扱いだったので色々修正
20221013 ドームの大きさに関する描写が全くなかったため追記




