第2話― 散歩/その5「ありがとうねぇ。今日は一緒に寝てくれるかい?」
あとちょっとで戦闘導入回書き終わります。
戦闘導入回の後はウォーレンたちの視点の話が始まります。そっちは説明回が1話、戦闘回1話でかなり短いはずです。
感想とか何も届かないんで見てる人居るのか分かんないですけど楽しみにしてください。
朝昼を外で食べさせるようになってから3日経ち、皆がその行為に慣れてきた頃。彼らはカームたちを連れて河原にやって来た。ちょっとした息抜きと情報交換だ。
河原に横並びで座っている彼らは特に意味もなく、空色に染まった水の流れを見ていた。
「この街、最近は平和だなぁ……なんか報告することあるゥ?」
「私は無いですよ。アーロンさんは?」
「俺も……魔獣についての文献は見つかったけど、大昔に戦って倒した個体の情報しか無かった。一応聞くか?」
2人が頷くと、彼は説明を始めた。
「まず大昔の奴はたいがい図体がでかくてな、ほとんどが10を越える魔術を持ってたんだ。で、特にヤバかったのは頭が3つある『ゴウライ』ってやつだ。」
炎で犬のような形を作り、彼は説明を続ける。
「カームみたいに頭の数だけ分離できて、溜めが必要だが雷を好きなだけ落とせるし電磁砲みたいに口から発射もできる、土の中にも潜れる、幻覚見せれる、特殊な粘液で拘束できる、目潰ししても心の目で周りを見れる、小さめの武器を作れる、比較的傷が治りやすい、人を狂わせる遠吠え、おまけに卵を吐き出して自分と同じ能力を持った生物を産みだせる。こんなヤベー能力なのに自重を支えるために体が硬い。出産に耐えるため痛みが感じにくい。怯まない殺人動物の代表格だな。
倒し方は位置が分かる魔術を使い、土から出て来たタイミングで貫通力の高い技を複数発動して体に穴を開ける。そしてそこを重点的に攻撃する。他にも真っ向から殴りあって倒した例もあるそうだが、これは俺たちには出来ないから気にしなくて良い」
彼の説明を聞き終えたガイはある人を思い出した。
(真っ向から殴りあう……硬さにもよるがもしかしたら……)
「どうしたガイ? まさかお前の知り合いに最後のが出来る奴でもいるのか?」
ガイは頷き、それに言葉を続けた。
「多分だけどな。これ以上言うと俺も命が狙われるかもしれんから言えないけど」
「そこまでとなると、裏社会で名の知れた人間ですか? それなら私も心当たりがありますが……ガイさんの知り合いだとは夢にも思いませんでした」
彼は笑って彼女の言葉を肯定した。
自分も初めて知った時は驚いた。仮にも信頼していた人が人殺しをやっていたなんて。理想を求めがちな幼少期だったから当時は侮蔑もしたし嫌いだった。その感情は時間が解決してくれたが、アーロンに負けたことが無かったらきっと今でも理想を求めて嫌いであっただろう。
一瞬過去の事を思い出したが、彼は立ち上がってそれをかき消す。そしてごまかすように笑って2人に提案した。「なぁ、水切りでもやらないか?」と。2人は喜んで了承した。
カレンシティ周辺の洞窟内。そこには以前バレル邸の庭にいた小鳥がいた。水も少なく生命の維持には向いていない場所になぜいるのか。それは彼らの母親とも言えるものがいるためだ。
辺りが暗くて見えにくいが、目を凝らして見ると木炭のような黒い鳥が羽を休めていた。ただ大きさは小鳥たちと比べても100倍ほどであった。
子供たちは親の前に横一列に並んでアーロンたちやカームの動向を伝えた。彼らの趣味という些細なことから比較的得意とする魔術まで細かく。
それを聞いた親は子供たちを羽で包み込んだ。
「ありがとうねぇ。今日は一緒に寝てくれるかい?」
彼らが鳴き声で返事をすると、再び感謝を伝えてその日は寝た。
翌日。洞窟に入ってきた光に目覚めさせられた親は、子供たちを起こさないようにそうっと立ち上がり、出口へと向かった。
「気持ちの良い朝だねぇ……そういえば姫様はそろそろ来るんだっけか」
彼女は自身の羽毛から旧世代のアンテナ式携帯電話を取り出し、新規のメールが届いているか確認する。すると1件だけ「姫様」という宛先からの物があった。
器用にボタン操作を行い、その内容を確認した彼女は月を見つめる。
「なるほど、嬉しいやら憎たらしいやら……まぁとりあえず。姫様、お疲れ様だねぇ」




