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正義のあり方 俺たちの覚悟  作者: 松尾ヒロシ
自分の心を代償に復讐を果たせ
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プロローグ―義手その2

義手系男子は良いぞ

 アーロンが泣き終えて数時間経った頃、ガイたちは隣街のアスナシティに到着した。魔力もギリギリでガイは全身から汗を流していた。


「つ、疲れたぁ……魔力も切れそう」

「もう直ぐですから頑張って下さいね」


 リーンは何事も無かったかのようにそう言った。汗も全くかいていない。元々彼女は外からカレンシティにやって来たのだから、ここまで移動するくらい簡単なのだろう。


「頼むゥ、待ってくれェ」


 ガイが息を切らせながら頼むと、彼女は「仕方ないですね」と呟き彼のもとに近寄る。そして彼をお姫様抱っこした。


「しっかり抱きついてください、危ないですから」

「えっ? ああ、うん」


 彼は現状が理解出来ていないようだ。彼だってお姫様抱っこが一つの介護のテクニックだと知っているから、こうなるのに違和感などは無い。ただ何故今なのか、何故自分にするのかが理解出来なかった。


(何故に今なのか……)



 結局なし崩しで目的の店の前までお姫様抱っこだった。


(誰にも見られなくて良かった。これで見られてたら恥ずかしくて死にそうだ)


 彼は顔を赤くして、リーンから顔を背ける。とても恥ずかしかった。ちなみにここで彼は気づいていないが、実際は彼女も恥ずかしがって顔を火のように赤くしていた。


「じゃあ中に入りましょう」

「ああ、そうだな」


 義手もやってますと達筆な字が書かれている扉を開き、彼らは中に入る。中には様々な商品が置いてあり、家具から食べ物まで売っている。客もかなり多く、繁盛しているだろう。大半が女性客で、部外者であるように感じたガイは何だか恥ずかしくなった。まず街中でお姫様抱っこされている時点で恥ずかしがるべきだが。


(衛生法とかに引っかからないのか? いや、ここはカレンみたいに無法地帯であると聞いたことは無いし、問題ないのか)


 そうして店の奥へと進んで行くと、店主らしき男性が机の上で人の腕らしき何かをいじくっていた。


「ん、こんにちは。『ライ・ラメイルムの何でも屋』へようこそ。本日は義手の受け取りだよね?」


 彼はライ・ラメイルム、この店の店長だ。生まれつき白髪の男性でイケメンだ。服装もおしゃれで彼目当てにこの街に来る人もいるらしい。大半の女性客は彼が目当てでこの店にやってきている。ちなみにこの店で窃盗をするとライ自身が犯人を追いかけて物品を取り返すため、ごくまれに彼の熱狂的なファンが盗むらしい。


「はい、機能の再確認良いですか?」

「もちろん。日常生活を問題なく送れるだけの肘からの義手にオプションで360度回転する手首でしたよね。今なら追加オプションも間に合いますけど、要ります?」


 ライは彼の手元にあった義手に電気信号を与えて実例を見せる。


「ガイさん、どうします?」

「俺は要らないかな」


 ならば、とライは机の中から書類とペンを取り出す。


「では改めてこの書類にサインをお願いします。」

「分かりました。ガ、イ、カディック、と」


 ガイが記名した書類を眺め、間違いがない事を確認した彼は机の上の義手を差し出した。


「これがお客さんの義手です。初めての義手とのことで、こちらのアタッチメントを欠損部分に押し当ててください。魔力を流すと自動で義手がくっつきますよ」


 ライは再び机の中から金属製の棒を取り出す。ガイがそれを垂直に欠損部分に押し当てると、それは体内に侵入を始めた。凄まじい痛み。本来なら立っているのもやっとだろう。だがガイは冷や汗をかくだけだった。

 彼は不敵に笑う。


「痛くないね!この程度、左腕を失くした時に比べたら痛くもなんとも無いね!」


 嘘である。アドレナリンが出ていたあの状況より痛くないなんてあり得ない。


(クソ痛ェ!なんだこの痛み!?人生で初めて味わう痛みだァ……)


 彼は義手を右腕に抱えて出口の方に歩き出す。右足を踏み出せば右に傾き、左足を踏み出せば左に傾く。カッコつけて帰ろうとしたのが仇になって余計にカッコ悪くなっている。


「もう、やせ我慢しないでください。その痛みは私も知ってますから」


 顔を膨らませて彼女はガイに回復魔術をかける。彼は物凄くばつが悪そうに頭をかいた。恥ずかしいのか、目をそらして「ごめん」とだけ呟いた。




「ご来店ありがとうございましたー今後ともご贔屓にー」


 ライからそんな言葉を送られて、彼らは店を出た。


「さて、これから帰りたいですが、どうします?」

「一旦休憩させて。今帰ったら途中で墜落する」

「フフッ、了解です」


 結局、彼らがカレンシティに着くのは日付が変わってからだった。

もっとガイが苦しむところ書きたかったなぁ

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