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正義のあり方 俺たちの覚悟  作者: 松尾ヒロシ
自分の幸せを代価に周りの平穏を守れ
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第7話—否定その5

 リーンはエレンをガイから突き放した後、彼に近寄って追撃を始めた。それに応じて彼も凶弾の嵐を発動してガイを殺そうとするが、リーンは防御魔術と自身の肉壁で彼を守る。


「あなた、何やってるのか分かってるんですか! 今やっている行為は依頼人の依頼に反する事ですよ!」

「そんなの分かってます! でも今やらなきゃ、私はきっと後悔する! 一生引きずり続けて生きるに決まってる! そうなるのが分かってるのに、何もしないのは駄目だと思ったんです!」


 それを聞いて彼は彼女が再び味方になる事は無いと確信する。


「そうですか、なら全力です。この手に挟(アブソルゥテリィ)めぬ物なし(・インターポーズ)!」


 彼の『この手に挟めぬ物なし』は指の力と防御力を上げる。だがパンチのダメージが増えるわけでもないため、近接戦闘では基本防御をする技だ。颯竜刀を壊せたのもガイの心が弱くなっていたからだ。それほど使いにくくても凶弾の嵐での遠距離攻撃が攻撃の主体となる彼には、それがちょうど良かった。

 エレンの手はリーンのミ・ファミリアを掴み、彼女をガイから引きはなそうとする。だが、彼女はガイを抱きかかえて離れようとしない。ガイにはとても理解できなかった。命を懸けてまで自身を生かそうとする彼女のその姿勢が。そうして、彼は泣きながら尋ね始めた。


「なんで俺なんかに、生きていてくれって言うんだ、身をはって助けてくれるんだ……俺の人生は無駄だったのに、価値なんて無かったのに……」


 その言葉にため息をつきつつも、彼女は優しい声で話す。


「価値はありますよ」


 背後に凶弾の嵐によるダメージを受けながらも、彼女は言葉を止めない。


「なぜなら、私はヘレナ・ターナーですから」


 驚きのあまり彼は息を止めた。あの日、死んだと思っていた人がなぜ生きているのか理解できなかった。


「あの後、奇跡的に雷が近くに落ちたらしく、私も生き返りました」


 奇跡とは簡単に起きないから奇跡だという言葉を聞いたことがあるだろうか。ガイは知っているし、その通りだと思っている。だから都合の良い時に奇跡は簡単に起きないとも知っている。


「あなたがあの時、私の体を治してくれたから、今生きています」


 それでも彼女は、その存在は、その言葉を否定していた。


「あなたがあの日、いじめっ子を懲らしめてくれたから、今生きています。あの時のあなたが、とてもカッコ良かったから、今生きています」


 自分のやって来たことは無駄ではなかった。消したかった出来事さえも、全て自分が今生きているのに役立っている。


「皆誰かに助けられているんですよ。なぜなら皆違うから。1人1人にできることは限られています。その限界を越えるには命を懸けないといけません。そうなるときっとお祖父さん達が悲しみます……私も悲しみます。だからガイさんも一人で抱え込まないで、まずは目の前の私を頼ってください。どんな事でも、私は手伝います」


 今目の前に起きているのは奇跡では無いのだろう。あくまで彼の積み重ねだ。

 でも、それでも彼は涙を流していた。心の底から嬉しかった。自分は義務で戦っていた。自分が戦う理由なんて無かった。全て両親の名誉を守るため、人々の期待に応えるためだった。だから時が経つにつれて、彼は逃げ道を探した。それでも自力では見つける事は出来なかった。そうして塞ぎこんで、今に至る。そんな中に突然現れた1つの希望の光。救われても良いのだと、理想であり続けなくとも良いのだと肯定する光。その光を目にした時、心が久しぶりに動き出したのだ。


「……武通に言われた言葉の意味が、今分かったよ……俺に足りなかったのは、自分を大切にする心だったんだ……たとえ俺が命を懸けて人を救っても、俺が生きてなきゃ悲しむ人だっているんだ……俺は、なんでそんな大事な事を忘れてたんだ……!」


 大きな涙を流して彼は醜く泣いた。これ程泣いたのは生まれてから数えても、両親が死んだと理解した日とリーンが死んだと思った時しかなかった。彼は無意識に彼女の背中を回復させていく。


「ごめん……ごめん……でも、ありがとう……」

「ふふっ。色々と吹っ切れたでしょう。さぁ、立ち上がりましょう」

「……うん!」


 ガイは再び立ち上がる。それも目には不屈の闘志が宿っていた。


(まさか、簡単に絶望したから、簡単に立ち直れるとでも? 子供ですかあいつは!)


 エレンは銃弾の密度を更に上げた。リーンはガイの左側に立って、二人は四方からやってくる凶弾の嵐に防御魔術を使用する。それらの銃弾を防御魔術で跳弾させながらある一点に集中させた。


「あなた達、何をやっているんですか!」

「何って、お前のためにならない事をだよ!」


 何か嫌な予感がしたエレンは彼らに貫通性能のある弾丸を発射する。


最強の(ストロンゲスト・)貫通(ピアシング)(・バレット)!」


 そうしてエレンはストロンゲスト・ピアシング・バレットの威力と現在の状況を再確認する。


(このストロンゲスト・ピアシング・バレットは並みの防御魔術では何百枚重ねたところで意味はない。相手は片腕が無かったり最上級を使って魔力が少なくなっている2人だ、守りきれるはずがない!)


 彼の思考には何も間違いは無かった。実際彼の弾丸にはそれほどの威力があった。


「ヘレナ、で良いのか?」

「リーンでお願いします」

「じゃあリーン、何かあれの勢いを弱めれる魔術あるなら使ってくれ。魔力が足りないのならバッグから魔力回復ドリンクを飲んでくれ。」


 リーンは何か策があるのだろうと察した。あれを止めるだけの魔力が無かった彼女はガイの腰掛けカバンから回復ドリンクを飲み、土の魔術に強い風の盾を生成する。ガイはそれを見届けて彼女に感謝を伝えた。


「さぁ、一人では使えない俺の最強の切り札だ。聞いて、見て、驚け! 3分の1だけの(ドリッテル)偽物(・ファルシュ)!」


 次の瞬間、現れたのはリーンの盾の精巧な偽物。何度みてもリーンが作った盾との違いは無かった。大きさ、見た目、全てが同じ。ただ()()リーンの盾と比べて小さかった。これこそがドリッテル・ファルシュの効果だ。


「ドリッテル・ファルシュは、仲間の魔術と完全に同じものを生成し、そして元にした魔術の大きさや硬度、威力を全て3倍にする! お前の貫通弾なんて簡単に弾くさ!」


 最強の貫通弾はガイの魔術で強化された盾を貫く事はできず、跳ね返された。そうしてそれは先ほどからガイ達が攻撃を集中している一ヶ所に着弾、その衝撃で周辺のMUはコアを破損して合体を解く。


「後は俺が!」


 リーンにそう伝えた彼は両腕、正確には右腕と肘から上の左腕を動かして風を操り始めた。その風は分離したMUの残骸を回転させる。


「さぁリーン! あそこから逃げるぞ!」

「はい!」


 ガイはリーンと手を繋ぎながら直ぐに飛び出した。そこでエレンがとても焦っているかのように叫ぶ。


「馬鹿なんですか! 今MUに近づいたら電撃が走りますよ!」

「バーカ、ならなんで凶弾の嵐の時からその音が聞こえないんだ?」


 彼には確信があった。今は電撃が流れないようになっていると。おそらく電撃は最初の印象だけで役割を終えている。もしこの球体に出口を作っても出られないようにする役割だ。常に電撃を流すようにするより、途中で電撃を流さないようにした方がMUTUによる合体が長くもつ。彼はガイが絶望するまで戦うつもりだろうから、より長期戦ができてより行動の制限が可能な方を選ぶだろう。そちらの方が戦いやすいからだ。

 そして実際は流れなかった。


「炸裂しろ! 俺の貫通弾!」


 彼が叫ぶと、今まで回転していたMUの残骸が球体の方に射出される。その射線上に神降ろしを発動して空気抵抗を無くしているため、回転のエネルギーは衰える事なくその球体を貫いた。


「そんな馬鹿な……リーンがただ手伝っただけでそんな……!」


 直後、球体は爆発を始めた。

いやぁもうこれ共依存しちゃうよね、共依存カップル最高だね。


2021/0721 必殺技とも言えるエインドリッテル・ファルシュ、長いのでドリッテル・ファルシュにします。

まぁそもそも発音がエインじゃなくアインだしという問題もありましたしね。一応弁明しとくとGoogle翻訳で発音聞いたらそう聞こえたんです。


2022/0208 冗長な文の削減

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