第7話—否定その2
いやぁまさかの一周年、前日で気づくとは思わなかった。特別編はネタも思いつかないしもし投稿するなら来年で色々と作中の事件が終わったあとですかね、多分その頃は第二章の終盤やってるんで。
さて、第一章も終盤に差し掛かり、アーロン戦が終われば元凶を倒すのみです。一年たっても最初の町を出られていないのは申し訳ありませんが、多分「否定」の後の「独立」が終わるまでの十五話ほど後で街から出るイベントがありますのでそこまで待っていてください。
「さぁ、戦ってもらいますよ。ガイさん」
そう呟き、彼は仮面の頬の辺りに触れる。すると、無数のMUたちは彼らを覆い囲むように隊列を組み、土の小銃を生成した。
「これは一種のバトルフィールドです。これらの機体には一定距離に近づくと攻撃する事と一定の範囲の外に出ようとすると攻撃する事しかプログラムしていません。そのため何か不測の事態が起きても通常のMUとは違い処理落ちをすることはありません」
「何のためにそんな事をするんだ?」
彼は単純にディザスターの目的が知りたかった。
「目的ですか?まぁ端的に言えばあなたの殺害です」
「じゃあ依頼主はアーロンか」
「おや?よくお分かりですね。まぁそのためあなたを殺害するにしても絶望させないといけません。依頼ですから」
彼は淡々と答えた。人を殺すことに何も感情を抱いていないのだろうか。中性的な声からしても何かしらのロボットではないのか。ガイは色々と考えてみるが、どうも理解できなかった。
「まぁ俺が絶望する事なんて無いだろうがな」
瞬間、彼はディザスターの視界から消えた。いや正確には瞬時に急降下して死角から攻撃をしようとしていた。その程度予測できないディザスターではない。ガイが消えた瞬間に直ぐ下を見て彼の姿を確認、土の小銃を生成して高威力の土の弾丸を発射する。そこでガイはその一直線の弾丸を真っ二つに切り裂き、そのまま突進して彼を下から両断しようと試みた。だがしかし彼は颯竜刀の切っ先を人差し指と中指の間に挟んでそれを止める。
「攻撃が単調ですね。この程度で粋がるとは、『井の中の蛙大海を知らず』と言ったところでしょうか」
そうして切っ先を掴んだ指を少し揺らしてガイをMUの壁にたたきつけた。ガイを待っていたのは急所以外を狙う電撃。今まで生きてきて初めて出会った衝撃が、彼の体に流れた。彼が発した獣のような叫び声にディザスターは笑い声を隠せないでいるようだ。
「ああ面白い。腹立たしい人間が苦しんでる姿って、本当に最高です!」
電撃が止み、ボロボロになった体でガイは立ち上がる。そしてまた突進攻撃をする。先ほど攻撃が単調と言われたというのに、より単調な攻撃だ。雄たけびをあげているため先ほどよりかは威力が高めだろうが、たったそれだけだ。
「この程度カメラを隠しても掴めますね」
彼は仮面のメインカメラ部分を手で覆い、有言実行をした。だが先ほどと大きく違ったのは切っ先に乗る体重を感じなかったことだ。流石に違和感を覚えた彼はすぐさま覆った手を動かし、背後に肘打ちをする。
何の偶然か、それとも歴戦の勘か、そこにはちょうどガイの腹部があった。攻撃を受けたガイは口から体液が出ているが、それでも何とか仮面だけでも割ろうと剣を振り下ろした。
「おお偶然的中しました。いやぁ切っ先に力が入って無かったのでもしかしたらとは思ったのですが……あなたあんな修行をしたのに全然強くなってませんね」
それはただの戯言だ。確実にあの訓練の第三段階によってガイは実力をつけた。上級の魔術画も、颯竜刀も、山勘だってあの訓練で精度が上がった。戦闘技術は上がってないかもしれないが、まず戦闘技術を高めようにも師匠となれる人物が少ない。ウォーレンも技量の差がほぼないアーロンを想定してか、技術面の訓練はしなかった。それでも元々高めな方でもあったから、弱いというのは酷だろう。
「いやそれよりあなたの才能が無いのかな? 最強夫婦の息子とは思えません。あら? この警告表示、ダメージ過多? 仮面を外さないといけないのですか」
そんな事をガイに聞こえるほど大きな声で言い放った。ディザスターが後頭部に触れると何かが開くような機械音が聞こえて、仮面の中の素顔が露わになった。
「お前は……」
ガイは彼の顔が現れた時、理解できなかった。だってそこにいたのは、エレン・パーファシーであったからだ。
「……いやぁ、リーンさんからMUとの戦闘で強くなったと聞いてはいましたがここまでとは。強くなってはいたようですね」
引きつった笑顔でガイを見下した彼は語った。