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正義のあり方 俺たちの覚悟  作者: 松尾ヒロシ
自分の幸せを代価に周りの平穏を守れ
18/58

序幕の用意―原型

 武通戦後に倒れたガイは、家のベッドでうなされていた。それは記憶から抹消したと思っていた記憶の回想であった。彼がカレンシティへやって来る前の物語である。

 彼は以前は自分のやって欲しい事を一度だけ言い、それで無理なら諦めるという妙に分別のついた子供だった。彼の両親は子供にしては大人びていると彼を誉めていた。それが彼にはとても嬉しかった。

 だがやはり子供だ。感情を抑えきれない時もある。そしてそんな時に起こした事件によって、彼と彼の両親は引っ越しを余儀なくされたのだ。


「ねぇ、ガイ」


 金髪の女の子が話しかけてきた。当時、ガイは両親が仕事中の時は自宅のあるガニメデタウンの託児所に預けられていたのだ。それで一番仲が良かった女の子がこの子だ。もう十年以上前だからか、名前は思い出せない。


「なぁに?」

「私のぬいぐるみ知らない? ご飯食べてままごとしてたら無くなってたの」

「ごめん、知らないや」


 それを聞いて彼女はありがとうと言って悲しそうに背中を向ける。


「一緒に探すの手伝うよ」


 思わず口に出ていた。彼女が悲しんでいるのに、何もしないというのがとても嫌だった。


 それからガイは託児所を片っ端から探し始めた。先生たちにも事情を説明して手伝ってもらった。だが結局夕方になっても見つからなかった。ちょうど同じ時間帯に二人の両親が迎えに来たため、彼らは帰宅することにした。とても不甲斐なかった。彼はトイレで一人静かに泣いた。


 翌日、託児所までの道であの女の子とその両親に出会った。彼女の手には毛並みが乱れているぬいぐるみがあった。彼女が持っているのはあの一個だけのはずと思ったガイは「そのぬいぐるみは?」と尋ねた。彼女は下を向いて首を振る。それで何かを察した彼は、これ以上何も聞かなかった。だがお節介な彼女の母親が勝手に説明し始めた。


「昨日一緒に探してくれたそうねガイ君」

「はい」

「ありがとう。×◯△も喜んでたわ。実はこのぬいぐるみ、朝起きたら玄関先に置いてあったのよ。泥も被っててね。朝に直ぐ洗濯して乾かしたの」


 それを聞いたガイは怒るしかできなかった。×◯△が嫌がっているのに勝手に言った彼女の母親にも、実行犯にも、自分にも。

 そしてそのまま託児所に預けられた彼は犯人探しを始めた。実行犯の心当たり自体はあったから、直ぐに犯人を見つけた。本来ならここで先生に頼んで叱ってもらうのが最善だろう。だが彼は喧嘩をふっかけた。全力を以て犯人を叩きのめした。もちろん最後には回復魔術をかけた。

 だがやはり回復させたとは言え、魔術戦闘なんて行えば先生にバレないはずがない。彼らはまずガイを厳しく叱りつけ、ガイが叩きのめした奴を守った。なぜ奴が守られているのか理解はできたが、納得できなかった。

 落ち着いた後で1人の先生が事情を聞いてきて全てを説明した。数分後、怖かった先生の怒鳴り声と実行犯の泣き声が聞こえた。ガイは心底「ざまあ見ろ」と思った。スッキリとした。

 後日、ガイは引っ越す事になった。犯人とあの女の子、そしてガイの両親が話し合った結果らしい。犯人もガイにやられて託児所を変更するようだ。


 引っ越しの日、犯人と女の子の両親にしか引っ越しの日を伝えていなかった上に早朝だったため誰も見送る者が居なかった。ガイはとても悲しかったが、大人たちが決めたことが今更変えられるとも思えず、何も言えなかった。

 カレンシティの新居に向かっている途中でも彼は悲しい顔をしていた。だからなのか、彼の父はこんな事を言ったのだ。


「ガイ、何もお前が全部悪いわけじゃない。叩きのめしたのは悪い事でも、原因を作ったのはその子なんだろう? 俺のじいちゃんの母国にこんな熟語がある。『自業自得』ってね。自分が良い事をしたら自分に良い事が、悪い事をしたら悪い事が起きるって言葉らしい。今回ガイが反省するべきなのは、すぐに先生に相談しなかった事だ。そうだ、新しい家に着いたら罰として的に5回当てるまでご飯抜きにしよう」


 ガイは少しだけ笑って「それはいやだな」と口に出す。彼は先ほどまでかなりの罪悪感を感じていた。子供が背負うべきではないような物だ。だが父との会話で自分のやった事は全てが間違いであったわけではないいと確信したのだ。




(……なんて酷い日だ)


 そんな事を頭に浮かべながら自室のベッドの上で彼は目が覚めた。時刻はだいたい午前2時。とりあえず体を起こしてみると額から濡れタオルが落ちてきた。横を見てみると何故だかリーンがいた。こういう時って基本保護者がいたりするものではないのか、と思っていると直ぐにガイの祖母が入ってきた。


「あっ、ガイ起きたの?」

「うん、ちょうど今さっき起きたところ。で、この状況は?」


 ガイが説明を求めると、彼女は直ぐに話し始める。


「あんたの事看病したいらしいよ。やめたらって言っても聞かなくてね。なんか昔好きだった男の子に似てるんだって。十中八九他人の空似だと思うけど」


 彼は運命を感じずにはいられなかった。なぜなら、先ほどの夢に出てきた少女と彼女はどことなく似ていたからだ。そう思うと、以前は消したかった記憶も消したくなくなってくるものだ。なんだか顔が熱くなった気がした。


「祖母ちゃん、俺また寝るわ」

「うん、おやすみ」


 そうして彼は再び眠りにつくのだった……

この「序幕の用意」は「原型」「歪曲」「変化」の三篇構成で、プロローグの前の時系列の話です

「なんかガイに感情移入しにくいなぁ、若干うざいし……せや!過去話作ってここまでになった過程見せたろ!」という作者の突発的な発想で作られた過去話なので「歪曲」の一部の話以外考えてもいない話でした。矛盾は無いはずですが、あったら報告をお願いします。

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