第6話―奇怪その8
武通の視線の先には煙がたっていた。おそらくガイが壁に衝突したせいで、壁に亀裂が入ったのだろう。武通がこの様子に死んだのではないか、と心配になったところで彼は立ち上がった。獣のような叫び声がこの白い空間の中に響く。
(クソッなんだかイラつく! これはあれか? 子供がおもちゃを母親に壊されたときに感じる怒りだ。落ち着かないと!)
頭を押さえながら彼は目の前に水の球を造り出し、それを全て飲み干した。
「なるほど、水を大量に摂取して怒りを発散したのか。だがそれでも怒りは収まらないはずだ」
武通の言う通りである。たとえ水を大量に摂取しても、ガイの怒りは完全には収まらない。このままでは怒りに任せて武通に攻撃を仕掛けてしまいそうで、そんな自分を止めるため彼は自身の顔を殴った。壁にぶつかった時よりも外傷が目立つ。実際、壁にぶつかった衝撃は風を発生させてほとんどゼロにしたため先ほどの行動の方がダメージは大きい。武通は内心彼を馬鹿だと罵って、炎の銃を生成してガイに向かって弾丸を発射した。着弾時、ガイの周囲には爆炎が広がった。だがこれは神降しを使った影響でガイの周囲に押し出された空気が燃え上がっただけである。
(どうする? 神降しを使って魔力はあと上級を1つ発生させて5分持つかどうかの分だけな上にアイツに満足にダメージを与えられない理由も分からない。ここは心当たりを片っ端から探るか!)
爆炎から脱出したガイは硬球ほどの硬さの水の球を発生させてそれを投げた。それは軌道を大きく逸れて武通から5メートル離れた地点に落ちた。だが風に大きな動きがあったなどでは無い。つまり投げた時点で狙いと大きく外れていたことになる。
(俺は別に投げるのが下手なわけでもない、つまりただの弱体化する魔術ではない。そうすると、あれかもな。)
思考の途中で武通はガイに風の刀を投げ、彼がそれを避けた隙にすぐさま近寄って右のメインアームで殴り掛かる。何とか紙一重でかわすも、拳がぶつかった床の破片が頬を掠めた。
「うーん、やっぱ面倒くさいな。全力を出すか」
(まだ全力じゃなかったのかよ!?)
武通は機械音を轟かせ、両手で立方体を模り、魔力をその中心一点に集中する。それはやがて白く光り輝き、正八面体を造り出した。
「発動、全であり無である」




