第6話―奇怪その5
「へぇ、喋られるMUが存在するんだ」
真っ赤なMUはガイの目の前で堂々と座った。
「ああ、俺はマクレーン家の技術力を全て集めて作られた物だからな。ちなみに、ウォーレン殿からは武者の武に通路の通で武通と呼ばれてる。武者の通り道って意味らしい。」
かなりお喋りだな、とガイは心で呟いた。正直本心では第3段階を早めに終わらせたかったが、この武通についてもっと知りたくもなった。
「……話すことが好きなのか?」
「ああ!」
「なるほどね」
「そうそう、聞いたぜ、次の日曜日にアーロンと戦うんだって? なら俺を倒せば少なくとも奴に負けることは無いだろうな」
「なんでだ?」
「あいつは俺に一度も勝ったことが無いからだ」
アーロンと言う男は弱いわけでは無い。むしろ現在この街では最強の名を欲しいままにしている。そんな彼に負けたことがないと言い張るMUが目の前にいる、興味が湧かないはずも無かった。
「へぇ、そいつは興味深い」
「はぁ……なんで楽しくお喋りやってるんですか! 早く戦ってください!」
ウォーレンがガラスの向こうから叫んだ。それを聞いた武通は彼の方へ立ち上がり頭を下げた。
「ウォーレン殿すまぬ、楽しくてな。では戦う準備をさせてもらおう」
武通は右の手のひらを天井に掲げた。するとそこから一直線に緑のビーコンが出て、その光を浴びたシャットダウン中のMUたちは、無理やりOSを起動され武通の下に近寄ってきた。
「合体!」
彼がそう叫ぶと周りにいたMUたちは形を変え、彼と合体していく。合体した姿は武通であった頃のとげとげしさを残し、色あいは全体的に白く、所々にアクセントとして赤が配色されている。頭部の造形も異なっており、体のとげとげしさとは逆に丸みを帯びていて、日本の笠を被っているようであった。
その光景に心が揺らさぶられたガイは思わず感銘を受け、目を丸くさせた。
「見たことの無い魔術だな。オリジナルか?」
ガイは無邪気な声で尋ねた。それに武通は近所のおじさんのように柔らかな声で答える。
「ああ、正確には俺の製作者が創り出したものだが。魔術と言えば、聞いているぞ。お前魔術画を持っているのにオリジナルの名前を使ってないそうだな」
「誰から聞いたんだ?」
「そりゃウォーレン殿からだ」
「確かに使ってないが」
「威力上がるんだから作れよ! 何か即興で良いから!」
オリジナルの名前を作れば威力が上がる。それはこの世界の常識である。まず自身の感情によって威力が上下する魔術画と言うものが存在するのに、威力が上がらない道理が無い。それでもガイがオリジナルの名前をつけなかった理由は一つ、ただ恥ずかしいから。その理由につきる。実際恥ずかしくてつけていない人は多い上に、全人類の割合でみても名付けていない人の方が多いのだ。
ガイが「恥ずかしいから嫌なんだよ」と武通に伝えると、彼は声を張り上げてこう言い放った。
「お前それでも勝ちたいのか? この俺に。そんななめた態度じゃ一瞬で捻り潰したくなるぞ」
なんだこいつ、と彼は思った。これほど低レベルな煽り、むしろ呆れからの怒りが湧いてくる。だが、そこまで言われて何もしないというのも腹にきたガイはやけくそ気味に叫んだ。
「出ろ、颯竜刀!」
それは先ほどの風の刀とは全く異なるものであった。装飾、手触り、威力。全てにおいて上位互換のものが生み出されたのだ。そんなことが突然目の前で起きて、ガイは「見た目が変わった!?」と叫ぶ。更に彼が驚いたのはそれが自身の好みとぴったい同じだったことだ。武通の話によると、これは上級以上の魔術限定のもので、名前を呼んだ当人が無意識のうちに大好きな見た目になるらしい。
風の刀改め颯竜刀を見つめながら、ガイは一つ違和感を抱いた。なぜ両親がこんな重要なことを教えてくれなかったのか、それが理解できなかった。
「なんでこんな重要なこと父さんたちは……」
「世界最強も使わなかったそうだが、息子に教えてなかったのか。お前の両親が使わなかったのは手加減の意図があるらしいが、子供に教えないのは理解できないな。」
二人が腕を組んで悩んでいるとウォーレンがしびれを切らしたのか、大きな声で「長い!」と注意してきた。その声に二人は驚き、つい体を飛び上がらせた。
「すまぬ! では行くぞ!」
「ああ! 戦いの後でまた喋ろうぜ!」




