数学だけで学園のトップに立てる証明⑦
自分が最強であることを知ってしまった。
なんでも、かけ算さえわかっていれば魔法が使いたい放題使えてしまうというもの。
あまりに都合がよすぎるが、それは慎也だけに限ったことであり、他の人たちはかけ算を理解することはできないらしい。
よって今の状況が作り出されてしまっている。
「アリシア!本当に俺はかけ算がわかるんだって!」
「きっとここに来るまでに、何か悪いものでも食べたのね……」
信じてもらえないのである。
どれだけ力説しようとも
「分からない」「どういう意味?」「気持ちは十分に分かったから、、ね?」
という反応でいっぱいだ。
どうしようもなくなった俺は、
「かけ算なんて簡単じゃないか!初歩中の初歩!!」
と、つい言ってしまった。
そしてその言葉は温厚を形にしたようなアリシアを怒らせる結果となってしまった。
もっとも、アリシアもかけ算を必死で理解しようと頑張っていた。
その努力は類を見ないものだったが、そんなところにいきなり自分と同年代の、それも今日初めて会った男が今まで自分が頑張ってきたものを「簡単」の一言で言いくるめようとしてきても信じられるわけがない。
そんなアリシアは頰を膨らませ顔を紅潮させて、
「か、り、に!シンヤが理解しているとして!!証拠を見せて頂戴!!!」
そう前傾姿勢になって可愛く怒ってきた。
「あ、ああ。なんか済まない。証拠なら望むものを見せるぞ……」
さすがの慎也もたじろぐ。
そのもっともな理由は、アリシアとの距離感にあるのだが。
そして慎也の表情を見たアリシアは、言い過ぎたかな、と言いたげな様子で一旦落ち着いて続けた。
「わたしも……ついかっとなった……でも!証拠は見せてもらいます!! そうねぇ……」
数秒間考えてからこういった。
「私の服を九の段第九の節である最強の破壊魔法で消してみなさい!」
ふーん、九の段って破壊魔法なんだ……じゃなくてなんだって……?怒ったと思ったら服を消せって?
そんな感情は思わず口から出てしまう。
「痴女なのか……?」
「ちッ!違うわよ!!!」
自ら服を脱がせと言ってくる女のどこが痴女ではないのかと考える慎也だったが、次の言葉で納得した。
「だって、シンヤが持っているものなら細工はできちゃうし、その上私が肌身離さずつけているものであれば物理的な干渉があった時すぐわかるからよ!」
数秒間迷った結果、アリシアの言う通りにすることにした。(決して俺の欲は混ざっていない)
「なるほど。じゃあ行きますか……」
「の、望むところよ!」
とは言ったものの、まだ一回も魔法なんて使ったことなかった……。
で、でもたぶん何とかなるだろう。
それにもし失敗したとしても、アリシアが裸になるよりはましだ。
俺は念じながら手をアリシアのほうに出す。(アリシアの服を消せアリシアの服を消せアリシアの服を消せ・・・)
「ゴクッ、、、。」
《9×9=81!!!!》
刹那、まばゆい光がアリシアの体を襲う。
あまりのまぶしさゆえに慎也はこらえきれずに目をつむる。
魔法発動から数秒後、光が収まったかのように思い目を開けてみるとそこには先ほどの光を軽く超越する光景が広がっていた。
一糸まとわぬ姿のアリシア(巨乳)(可愛い)(恥じらい)が体の重要な部分を隠すように立っていた。
一瞬だった、しかし慎也は自分の目の前にエデンが広がっているのを確認した。
「キャむぐッ!!」
アリシアが悲鳴を上げようとしたとき、俺はほぼ無意識でアリシアの口を押えてしまった。
「さすがにこの状況を見られるのはまずい!!!」
「ふむッ、むぐぐ!ふぐぐぐ!!」
あわてる俺とアリシア。
そしてはたから見たら完全に全裸の美少女と見慣れないかっこうをした男がいかがわしい行為をしているように見える現状況。
このとき慎也は、魔法が使えたことに対する感動と巨大すぎる力は時に自分の身をも滅ぼしかねないという相違な二つの感情に加え、生まれて初めて見た同年代の女子の裸に思いをはぜていた。
お読み頂きありがとうございます!
慎也くんうらやましいですね、、、。
さて、山賊が使ったときは《いんいちがいち》でした。
しかし慎也くんが使ったときは《9×9=81》となっています。
察しの言い方ならもうわかったかも知れませんが、平仮名で書かれているかけ算は理解していない人。
しっかりとした数字で書かれているのが理解している人です。
これから重要になってくるかも……。