数学だけで学園のトップに立てますねこれは。⑥
手と手を取り合い見詰め合う俺とアリシア(不可抗力)をすでに眠ったと思われていたアリシアに発見されてしまってから、三十分程度が立った。
あの後テリアリ姉妹のお母さんまでもが、俺とアリシアの必死の弁解を聞きつけてやってきてしまったが何とか穏便に済まされたので良しとしよう。
だが今は今とて問題がある。
それはアリシアと俺の距離感だ。
確かに初めて会ったにしてはなれなれしかったかも知れないが……。
とにかくテリシアを寝かせて再びリビングへやってきた二人はこの静寂をなかなか打ち破れずにいた。
ここは男である俺がどうにかするしかないか……。
「な、なあ、アリシア?」
「え、えっと、、何……?」
「えっと……」
はい、失敗した。
そもそも前の世界でもコミュ力なんて一切なかった俺がこの状態なんて切り抜けないか。
どうせなら話術のステータスにチート級のポイントがほしかった。
っと待てよ、そういえばさっきはあんなことがあってつい聞き逃してしまったが、まだ魔法の説明の途中だった。
話しかけてしまったし、それについて聞いてみよう。
「さっきの、魔法についての説明の続きが気になっちゃって」
「あ、そういえば。どこまで話したっけ?」
どうやらアリシアも忘れていたようだ。
「えっと、じゃあかけ算が理解できないってところからで」
「わかったわ、さっきも言ったとおりだけど、かけ算ってホント高度で至高の存在でこの世を形作る上ではなくてはならないものなの」
なるほど、わからん。
そう考えているうちにアリシアが続ける。
「これもさっき言ったけど、かけ算には魔力が必要ってやつ。これは半分正解で半分不正解なの」
「どういうこと?」
「それはかけ算と密接なかかわりがあるの。もしかけ算を理解することができれば、魔力とか、この世の摂理とか全部無視して魔法をいくらでも使えるのよ。逆に私たちみたいにかけ算が理解できない人は限りある魔力を使って色々ややこしいことがあったうえでしか魔法が使えないの。それに……」
「それに?」
「一つ一つの段と節を精一杯努力してでも、ちょっとずつしか使えるようになっていかないの……」「え!?」
それしか声が出なかった。
つまるところ俺、最強じゃね?
まだアリシアは続ける。
「驚いているようね、むりもないわ。」
「ちなみに魔力で使う魔法と、かけ算を理解した上で使う魔法ってどう違うんだ?」
恐る恐る聞いてみる。
「何もかもよ。威力、使用限度、範囲、応用性。数えたらきりがないわ。それに……」
ためらうようにして言った。
ってかまだあるのか。
「かけ算を理解している人には、魔力で使う魔法は一切意味をなさないわ。つまるところ、かけ算を理解していれば、文字通り最強ってわけ。もっともかけ算を理解した人間なんて神獣とかそんな感じの何かヤバいものとして見られるけどね。」
すべてがつながった。盗賊から攻撃を受けたとき無傷だったことも。
無傷の俺を見た盗賊が恐れおののく姿になっていたのも。
理解していたからこそ無効化できた。
無効化できたからこそ、あの山賊が俺を理解している人だと認識することができた。
「ちなみに何人くらいいるんだ、、かけ算を理解しているやつって?」
「古いおとぎ話や伝承で五人くらい、今生きている中ではたった一人。もろもろ折り合わせてもせいぜい十人ってところね。」
「悪い、十一人だ。」
「え……?」
「俺を含めて十一人だ」
勢い余って言ってしまった……。
「さすがに笑えないわよ……シンヤ……」
きっぱり言われてしまった。
だが、とうとう発見した。
俺のチート能力!
少々最強すぎるようにも思えるがこれから楽しくなりそうだ。
この時の慎也はまだ知らなかった。強大すぎる力はとに自分の身も滅ぼしかねないことを。
一か月も投稿サボってしまい申し訳ありません。これからもマイペースでやっていきますので、どうかご愛嬌を。
ところであとがきの二万字以内って多すぎませんか!?本編よりも長くできるってことですよね?