数学だけで学園のトップに立てるっぽいですよ④
「本当にごめんなさい!!」
俺は今、数分前まで殺されかけていた黒いローブの女の子に今度は逆に謝られている。
今日は色々謝られる日なのかなぁ……。
というのも俺が救ったあの少女の姉がこの黒ローブだったらしい。
なぜこうなってしまったのか、事のいきさつを分かりやすくまとめよう。
①急にテリシア(俺が助けた少女)が何者かにさらわれる。
②村人あわてる。特に黒ローブ(テリシアの姉、そして今さっきまで俺の命を取ろうとしてた奴)があわてる。
③なぜかさらわれたはずのテリシアが俺と歩いてくる。
④俺、誤解される。
⑤とりあえず空間転移魔法でテリシアを俺から引き離し様子をうかがおうとする。
⑥黒ローブ暴走する
⑦転移先から俺のほうへもどってきてくれたテリシアによって誤解が解ける。
⑧正気を取り戻した黒ローブにめっちゃ謝られる。
そして今に至る
「私、焦っていたんです。急に妹、テリシアがいなくなって……それで見かけないあなたが妹をさらったんだと思ってしまって……」
「誤解が解けてなによりだよ(可愛い女の子にこんなに迫られたら大半の男子は秒で落ちるだろう)」
「ですが、妹の命の恩人に私は刃を向けてしまうなんて……」
「ほんと気にしてないっt」
「ですが!私の気が収まりません!私に出来ることなら何でも、この身をなげうってでも!!」
ヤバい、どうしよう完全に思いつめちゃってるよ。
よし、ここはクールにかっこよく男前にいこう。
「じゃ、じゃあ君の名前が知りたいな」
こういう時にありがちのセリフだが、この他に思いつかなかったしそれに、じゃあお前の体で払ってもらおうなんていう事いえるわけないし。
「そんなことでいいんですか?」
ヤバい、かわいい。
腰あたりまで伸ばした銀髪ストレートの髪と瑠璃色の瞳が現実離れしている。
それにスタイルもいい。
これが異世界クオリティーか。
よくやった、異世界!
「うん。もしよかったらほかにも君のこと教えてほしい」
そういうと、ふわりと近くに来て元気よく言った。
「アリシアです!助けて下さった妹のテリシアの姉で、年は15です!」
可愛すぎて意識が持っていかれそうになった……。
何とか立て直し答える。
「あっ、俺と同じだったんだ」
「そうなんですか!なんかうれしいです!」
その言葉と同時に更に迫ってきた。いいにおいがする……。
って俺は何を考えているんだ!
「どうかしましたか?」
「あ!いや、全然!なにも!」
更に更に距離がつめられる。
異世界の女の子はこんなにもグイグイ来るのだろうか、だとしたら異世界グッジョブの一言に限る。
「あの、こんにちは……」
俺の思考を断ち切ったのはその声だった。
テリシア、アリシアに同じく銀髪の美しい女性。
「お母さん!この人がテリシアを助けてくれたシンヤさんだよ!」
どうやら姉妹の母親らしい。
「このたびは本当に、ありがとうございました。なんとお礼を言えばよいのやら……」
「いや、そんな。僕はただ自分の勝手で行動したまでですから。」
「でも、何かお礼をさせてください。見たところ旅の方だと思うんですけれども、食事や宿はもう事足りていますか?」
「それが、この辺に来るのは初めてで。正直言葉以外は何もわからないような状態でして……」
「それはいけないわ、よかったらうちに寄って行ってください。お礼はその時にでも」
不足して困っていた生活必需品がここでそろうかもしれない。情けは人のためならずってやつだな。
「ありがとうございます!ちょうど困っていたところなんでとても助かります!」
っとまてよ、そういうことは年の近い女の子と一つ屋根の下ってことで……。
異世界、お前マジ最高だよ。
そのあと俺はアリシアの家にお邪魔することになった。
「ねえ、シンヤって呼んでもいい?」
家に案内されている途中にそう後ろから声をかけてきたのはアリシアだった。
というか耳元でそれは反則だろ。
「あ、うん、いいよ。じゃあ俺はアリシアって呼ぶね。あと敬語じゃなくて普通にしゃべろうよ、同い年なんだし」
そういうと、妖精のようにふわっと俺の前に立ってこういった。
「わかった!これからよろしく!シンヤ。」
その瞬間俺に戦慄が走った。
やっぱり異世界は、いいところだなー。
寒くなってきましたね。皆さんもお体にお気お付け下さい。