数学だけで学園のトップに立てるようですよ。②
気が付くと目の前には広大な自然が広がっていた。
半ば強制的に異世界転生を果たした俺は、これから途方に暮れるのだろうという絶望感と異世界という未知なる世界への期待に心躍らせながら
「あのくそ女神!いつか必ず復讐してやる!!!」
自称大女神への怒りを爆発させていた。
「とりあえず歩くか……」
目の前に集落のようなものがポツンとあったのでとりあえずそこを目指してみる。
数十分という長くも短くもない時間を歩いたところで、また新たな問題に直面する。
「水も、食料も、ショルダーバックもねぇじゃん……」
そう、今までいた世界からの品といえば身に着けていた服と腕時計くらいだ。
「どうすっかなー」
考えてみたらこの状態に陥ったのもすべてあの自称大女神のせいだと極論的にまとまってしまう。
いや、考えてはいけない。冷静さが失われる。
そうこうしてるうちに集落まであと数百メートルというところまで来ていた。
ゴツン!
ボーっとしていたところに誰かがうしろから体当たりのごとく抱き着いてきた。
「えっ、なに?誰??」
気が動転している俺がかろうじて振り返ると、そこには俺の数十倍気が動転してそうな女の子がいた。
「あの、その……」
今にも消え入りそうな声でそうつぶやいた。
ひとまず体勢を整え、しゃがみながら女の子と向き合うような形となった。
「どうしたの?落ち着いて説明してごらん」
「たすけて、、、下さい……」
上目使い、反泣き顔、紅潮したほお。
見てくれはすごくかわいい女の子 (ヤバい……かわいい……)
いやいや、何を考えているんだ睦月慎也!俺はロリコンじゃないし助けをこう者に変な感情を抱く変態でもない……!
……よし落ち着いた。
その時、後ろから野太い声が聞こえた。
「おまえ、この辺でガキを見なかったか?」
振り返るとそこにはザ・山賊って感じの男が立っていた。
「って、お前の後ろにいんじゃねーかよ」
またまた振り返ると女の子は震えている。
どうやらこの山賊はいまおれの後ろに隠れている女の子が目的なのだろう。
お決まりのイベントだな。よし、ここはバシっと言ってやろう。
「ようするに山賊さん(仮)は、この女の子を追いかけまわしていると。そういうことですか?」
「だったらどうする?」
挑発的な目だ。おそらく俺が突っ込んでいったらひとたまりもないだろう。
そこへまた新な声が聞こえる。
「おーい、兄者!こっちにはいねかったっす!」
ただでさえ絶望的なところにやってきた山賊(仮)の弟分にあたるような、背の高くやせ形の男が走ってきた。
「おお、兄弟!こっちにいたぞ!ガキがもう一匹セットでな!」
仁王立ちでこちらをにらんでくる山賊Aと山賊B。
どうしよう、、、逃げたい。
学校の成績表は体育と美術以外ほぼ5だった俺(自慢じゃない)は、体育と美術だけはまるっきしダメだった。(見せもんじゃない)
そういえば異世界に転生したってのに、チート能力のひとつもまだもらえてないな。
仕方がない、ここは俺の素晴らしい対話術で!
「お兄さんがた、ひとまず話し合いましょう?」
「あぁ???」
俺自慢の対話術、敗れる。
「その女を渡す気がねえってんなら……痛い目見るぜ!!」
どうしようどうしようやばいやばい!どれくらいヤバいかっていうと残り時間5分でテストの裏面の存在が明らかになったくらい。
なんか山賊二人が手を前にかざして魔法みたいなの打ってこようとしてるし!!
これから人生初の魔法が体験できるってか!?身をもってか!?そりゃありがてはなしだn
「行くぜ!!」
「ちょっと待てーーー!!」
おれの叫びむなしく魔法は発動し始める。
なぜだろう?元の世界では勇気など皆無だったはずの俺が今身を挺して見知らぬ少女を助けている。
感覚にして数時間前、 死 という恐怖を体験した。
そんな人生に一度きりの感覚をまたしても体験しようとしているなんて……。
弱気になっちゃだめだ!
今この子を助けられるのは俺しかいない!
俺はだめでも、せめてこの女の子だけ……。
「行くぜ兄弟!!」
「あいよ!!」
《 いんいちがいち!!! 》
「えっ……」
魔法を発動する前に放たれた一言。
それは元いた世界でなじみ深いかけ算だった!!
そんな驚きとはうらはらに、白い光に身がつつまれる。
あぁ、さようなら。おれの輝かしい異世界ライフ。
いんいちがいち を平仮名にしたのはあえてです。
またそちらについても話の中で説明されるのでぜひご期待ください!
また、かなり手直しをしました。少しでも読みやすくなれば幸いです。