第7話「女王様」
今まで結構驚いた顔を見せてくれたが、この顔は特に最高だな。と、リクはユウナの顔を見て思った。
最初は落ち着いた雰囲気で魅力のある女性だと思っていたが、ゲームと会話を通して、彼女の性格、特徴が少し分かってきたリクは少し親近感を覚える――まるで、ギャルゲーに出てくるツンデレキャラのようだと。
今日一番の驚嘆顔を見せたが、すぐに冷静をとり繕い、不自然な真顔でリクに応える。
「な、何を言ってるの? わ、私が女王? 冗談もいい加減にしてくれるかしら?」
あまりにもらしくないカタコトな喋り様とその同様ぶりに、「いや冗談を言ってんのはあんたの方だろ」と、少し低めな声でツッコミを入れ、続ける。
「別に隠すことないだろ~遅かれ早かれバラすつもりだったんだろ? じゃなきゃ話が進まないからな」
リクのいう通り、なにも隠すことはなかった。と自覚しつつも、心よりも先に口が出てしまい、一度冷静になろうと深呼吸をしてから、リクに応える。
「いつから私が女王だと?」
「うーん、ゲームを始める前かな」
と、虚空を見ながらリクが答える。
「なぜ私が女王だと?」
「まずおかしい・・・というか、矛盾してると思ったのは、あの盟約承諾書とかいうやつの四個目、『優勝した者であっても、次期国王にふさわしくないと前期女王がみなした場合、無効とすることとする』てやつと、『四によって次期国王が決まらなかった場合、前期女王が引き継ぎ、国王になることとする』考えてみろ、明らかにおかしいだろ」
冷静を保った女王様の表情を伺いながらリクはさらに続ける。
「極めつけは現女王様が退位することになった理由だ。女王様の命は後一週間だってのに、もしこの国王選定戦で国王が決まらなかったらどうすんだよ、この国はほんとに終わりだぞ。つまり・・・その可能性はない。そして、監視兵の人は嘘をついていた。すげえバレバレだったぜ? 嘘なんか声のトーンで分かる。――つまり、女王様の命が後一週間ってのは嘘だ、次に、なんでそんな嘘を付くか・・・『精霊種を罠にかけるため』・・・だろ?」
リクの発言はつまり、この国王選定戦自体が罠で、女王様の命は後一週間・・・その状況で国王を決めないということは国の終わりを告げるのと同じ・・・と見込んだ精霊種が人類種の国を取りに来る・・・そしてそれを『絶対に勝てないゲーム』でハメて返り討ち。
そして・・・と続けるリクにユウナは生唾を飲んで聞き入れる。
「このゲームで精霊種に勝つことが出来るということを証明したかった・・・それはなぜか・・・そりゃあ~、精霊種のリーダーとゲームをして領土全て貰う以外にないだろ・・・しかも、もし精霊種が優勝したとしても、余命一週間なんて嘘なんだから盟約通り、国王に選定しなければいいだけの話だしな」
リクは言い切った。――ここまでを顔色一つ変えず聞いていたユウナがやっと口を開く。
「へえ~。そこまで分かってたのね・・・でも、なぜ数ある種族の中で精霊種だと断定出来たの? そこだけが分からないわね」
リクにとってはもはや愚問だった、それはさっき自分で答えているようなものだったじゃないか・・・と、しかし親切に応じる。
「じゃあ・・・あんたはなんでさっき・・・俺がフードを被っていただけで精霊種だと疑った?」
何かに気付くようにユウナは声を上げていた。
「それは・・・精霊種を意識してないと疑えないはずだぜ?」
そんな簡単なことだったとは・・・自分で答えを出していたのね・・・。と、ようやくユウナは愚問だったことに気付く。
と、ユウナの目を見て思考を読み取ったリクは――さて・・・と、区切り。
「まっそういうわけで俺は勝負に勝ったわけだが・・・賞賛の一言もないのかな?」
今までの真剣な様子とは打って変わった口調でリクが言う。
「まさかこんなにも利口な人類種が『まだ』いたとはね、素直にすごいと思うわよ」
リクはその『まだ』というのが誰のことを刺しているかが分かっていたが、あえて口にはせず、自分の望みについてを口にする。
「俺さ、この世界を攻略、もとい、征服したいと思うんだけど・・・協力してくれないか?」
そのあまりにも横暴で馬鹿げた発言を真顔で言っていることが可笑しかったのか・・・ユウナは思わず笑みをこぼしながら言う。
「あなた、何言ってるの、そんなの無理に決まってるじゃない・・・」
その心からの笑いにリクも釣られるように表情を緩め、答える。
「無理じゃないさ、この世に最初から無理なことなんてないんだ・・・やってみなきゃ分からないだろ?」
まだ笑いがおさまらない様子のユウナが言う。
「そ、そうね、あなた・・・なかなか面白いじゃない、それ・・・乗ったわ」
「てゆーことで、これからよろしくな、ユウナ女王様」
「そんな堅い言い方辞めてよ、ユウナでいいわよ」
と、彼女が見せた満面の笑みに十八歳童貞―リク―は、惚れそうになった・・・とは言えない。
―王城内―
リクが王城に住みだしてからちょうど一週間が経つ。
あのゲームでユウナ女王と結託した後、王城の空き部屋の鍵を渡され、彼女曰く、好きに使っていいわよ。とのことらしい・・・、リクは国王になる気など最初からなく、全ては王城に住んでいるという優越感、そして・・・何よりこの広々とした部屋に三食豪華な飯・・・というのが狙いだったらしい。
こんな男と結託してしまった彼女が気の毒である。
―第1章― 完
第1章終わりです!
2章の内容これから決めるので投稿遅くなるかもです