第5話「フードを被った男」
俺は明日の選定戦までまだ時間があるので、この世界のことや、他の種族についての知識を身に着けるべく、この国で1番大きな図書館に立ち寄っていた。
まだこの国の女王の名前すら知らない俺は、最初にこの国——人類種について、調べた。
しばらく読み漁っていると、興味深い題名の本を見つけた。――『人類種と精霊種』
俺はその本を手に取り、適当に座り、読み始めた。
――人類種と精霊種——
約100年前・・・、当時の人類種の国王『アストレア王』、精霊種の守り神『エミリア』が、あるゲームを行った。
それは・・・、単純なゲーム、トランプのジジ取り、賭けた者はお互い一緒・・・『全権利』、だった。
勝敗はやる前から分かっているようなものだった、魔法が使えないどころか使われていることに気付くこともできない、魔法能力0の人類種、一方、幻惑系の魔法を大の得意とした種族、精霊種。
しかし、誰も予想しなかった・・・ことが起きたのである。
人類種がゲームに勝ってしまったのだ、もちろん、全権利を賭けた勝負で精霊種が手を抜く――つまり、人類種に妥協し、魔法を使わなかったわけではない。
精霊種は、自分の手札を都合の良いものに替えるという、シンプルな魔法を使い、自分が有利になる魔法をばんばん使い、それでも負けた。
そして・・・精霊種の全権利を手に入れたのである。
人類種は、いつ魔法を、それがどんな魔法なのかも、感知できなかったのにも関わらず、勝ったのだ。
しかし、その方法は未だ不明・・・時間が経つにつれ、信憑性の低い噂が後を絶たなかった。
神人種と結託して、精霊種をどん底に落とし入れた・・・とか、アストレア王自体が神人種だったのではないか・・・など。
しかし、アストレア王の死後直後、待ってましたと言わんばかりに精霊種は人類種に勝負を挑み、勝ち、全権利を取り戻したのである・・・。
と、概ねこんな感じの内容だった。
俺はその本を僅か10分程度で読み終わり、その後、半日ほど人類種についての本を読み漁った。
そして気付けば外は月の光に照らされていた、俺は1つ、大事なことを忘れていた・・・。
寝るとこなくね?――昨日の今日で、人類種を攻略しにここまできたのはいい・・・だが、食事や寝床など、それ以外のことを全く考えていなかった、というかお金がない以上、何もできない。
さて、どうするか・・・と考える。
考えた挙句、何も思いつかず、とりあえず図書館を出て商店街をうろうろすることにした。
商店街は、昼ときよりも少し人通りが多くなった・・・という感じがした。
その中に1人、品格のある服装をした女性を発見した。
俺はすぐさま近付き、その女性に、自分は人権を、女性は持ち金全てを。賭けさせ、勝負を申し込み、余裕で勝利――女性曰く、これくらいあれば軽く1か月は過ごせるだろう、だとのこと。――しかしリクにとって今日をしのげればそれで良かったが。
それから俺は適当に宿を見つけ、夜を明かした。
そして翌朝、というか昼に近かったが・・・。
俺は宿で腹を満たし、急いで図書館へと向かった。宿へ着くやら精霊種についての本を読み漁った。
昨日読んだ『人類種と精霊種』という本。
その本を読んで、精霊種がいったいどんな魔法を使うのか、どんな特徴があるのか、などを『調べなくてはならなく』なり、徹底的に調べていた。
そして図書館にある精霊種についての本を1通り読み終わったとほぼ同時に、1時間ごとに音が鳴る時計の音が鳴った――11時を示す合図だ。
図書館に着いたのが10時頃、リアス王国で1番の図書館の本を、それも10種族ある内の1種族についての本を・・・たったの1時間で1通り読み終わったのだ。――そしてもちろんその内容全てを覚え、理解している・・・驚異的なのは言うまでもない。
そして少し急ぎ足で商店街へと行き、衣服を売っている店でフード付きの服を1着買い、急いで王城へと向かった。
王城に着くとやはりと言った感じか、昨日とは雰囲気が全然違っていた。
王城前には『次期国王選定戦』と書かれた看板が建っており、周りはほとんどが、昨日の女性のように美しく着飾っていた。
俺もその群衆に混ざって王城へと入った――中は期待していた・・・というか予想通り? な感じで広くて美しくとにかく圧倒された。
序列最下位の国っつっても王城は普通か・・・図書館も結構立派だったし、まさに知識の塊って感じなのに、なんで最下位なんだ・・・とリクは思う。
そして見学者、出場者全員が集会所へと案内された。
集会所の真ん中には丸い机が1つ、周りには白いテーブルクロスがひかれた、大きさは真ん中のテーブルと同じの物がいくつも置いてあった。
そして俺は、さっき商店街で買った、フード付きの服を着用した。
『もちろんフードも被って』
しばらく、椅子に座り待っていると・・・前のステージの幕から男性が出てきた。
そしてステージの真ん中まで来ると、そこで止まり、話し始めた。
「えー、これより第5回、次期国王選定戦を行います。出場者の皆さんは、今回のゲームであるジジ取りの特別ルールを説明しますので、1度ステージの方へ来てください。」
男性が言い終わると、国王願望のある出場者達が立ち上がり、ステージのもとへと向かった。
そして全員集まるのを確認し、男性は特別ルールの説明をし始めた。
「では、特別ルールの説明をしたいと思います。まず皆さん、普通のジジ取りのルールはご存知ですね? 簡単に説明しますと、ジョーカーを抜いた52枚のカードからさらに1枚抜き、51枚でゲームを行います、そして抜いた1枚が何かを推理していき、先に手札を出し切った方の勝ちというゲームでございます。 今回のジジ取りでの勝利条件は、先に手札を出し切る、またはその抜かれたカードが何かを当てる。でございます。
そしてさらに特別ルール、もし相手の手札を取りたくない場合『スキップ』を行えます。
ただし、連続して行うのは禁止、連続でなければ何回していただいても構いません。
以上が特別ルールの説明になります、何か質問はありますでしょうか?」
誰も何も言わなかった・・・。
「質問がないようですので、早速ゲームの方へと移りたいと思います。」
そう言うと、ステージの奥にあった扉が開いた。
「ゲームはあの扉の奥で行われます、入れるのは1ゲーム1人だけです、誰から挑んでもらっても構いません、では――幸運を祈ります。」
そう言われたが、直後は誰も動こうとしなかった、緊張していたのか、あるいはただ単に誰かが入るのを待っていたのか・・・しかし、その状況に痺れをきらした者がさっそうと扉の中へと入って行った。
ゲーム中の様子を見ることができない以上、挑む順番に有利不利はない、強いて言えば、ゲーム時間くらいか? と、リクは考えていた。
何分くらいたっただろうか・・・10分? 15分? 集会所の中には時計が無かったので、正確な時間は分からなかったが、多分それくらいだろう。――1人目の挑戦者が落ち込んだ様子で扉から出てきたのは。
ゲームに負けた。というのがその風体から読み取れた――そしてゲームに負けた男はステージから降りようと歩いているときに1言・・・なんで俺は負けたんだ・・・。
確か現女王の盟約承諾書には、ゲームに負けた場合、その者のゲーム中の記憶を消去する。と記述してあった。
つまり、ゲームで負けてしまえば、その方法が例え正攻法じゃなかったとしても・・・不正を訴えることができないのだ、どんなイカサマを使われたかが分からないから・・・。
出場者達は続々とゲームを挑んでいき、全敗・・・残りはリクを合わせて3人となった。
1人が挑みに行き、およそ20分後、今までの奴らと同じ顔をして扉から出てきた。
「にしても相手の人すげーなー、これで21連続勝利だぞ?」と、俺は1人、とぼけた声で言った。
そしてずっと俺の隣にいた俺と同じくフードを被った男性が立ち上がり、視線で先に行くか? と訴えられ、俺はNoと視線で返事をした。
そして俺の返事を受け取り、理解した様子の男性は扉の中へと入って行った。
また20分くらい経っただろうか・・・待たされすぎて少し眠くなってきた、とのんきな事を思っていると・・・扉が開き、男性が出てきた。
俺が思うに、こいつは結構やり手。――少なくとも、そこらのイカサマ師が考えそうなイカサマは通用しないだろう、さっきの視線での会話も、並の人じゃ伝わらない・・・でも俺は分かる、こいつもゲームに負けたのだと。
そして、そいつの1言で全ての歯車が噛み合った・・・と微笑する。
「これはカードゲームだ・・・。」と、いう言葉で・・・。
どうも、筆者のあっくんです!
最近、というか思い付きで小説を書き始めた者なので、小説についての知識は皆無に近いです(笑)
好きな小説とかを読んで参考とかにはしてるんですが、それでもまだ表現工夫が下手だったり、ストーリーが伝わりづらかったりと、色々問題な点がありますが、頑張って書いていこうと思いますので、ブックマークして頂けたら幸いでございます・・・。