空腹満たしに異世界転生
「ふぃー」
いつの間にかかいていた汗を拭いて
また、いつもの席についた
「クソッ、柄にもないことするんじゃねぇ」
「ちょっとまだなのかよ‼︎」
「さっさとしろ、女神ィ〜」
見ると俺のデスクの前に勇者の長蛇の列が
できていた、
「あわあわあわ、はっはいただいま」
必死に勇者の転生の雑務をとりおこなう
俺が勇者の列をさばき終わると
時刻は午後になっていた、
「遅くなったけど…メシ食うかぁ〜、
勇者もメシ時には、転生しねぇんだよな〜」
あっでもメシ作るのだりぃ〜な、
まっ、カップ麺だけど……
そういって仕方なくデスクを立ち、
デスクの後ろにある給水機にお湯を沸かし
ていると
「あ、あのー転生…してもらいたいんです
けど…」
後ろで、そんな声がしたので、
仕方なく振り向く、チッ
軽く舌打ちして営業モード〜
「はい!こちら女神ですぅ‼︎履歴書とか
ありますか?」
相手は白髪の少女で左腰に剣を鞘におさめ
ている、髪は短い
「あっはい!」
そう言って履歴書を差し出す
それを受け取り一見する
真部ユウカ
22歳 女
LV82 超絶料理人
HP25/25
MP42/42
≪特技≫
料理
≪魔法≫
愛情:料理が美味しくなる
≪称号≫
料理っていつ覚えるの?
装備
ただの服
ただの剣
うん、まずまずだ、レベルもまぁまぁ、
まだ神様に見捨てられて
ないほうだろう
「ヘェ〜料理人なんですね」
「はい!子供頃から料理は得意で
家族に振舞ったりしてました」
「じゃあそこらへんも考慮して
転生先決めますね」
「ぜひ、お願いします」
少女の目が輝く、少女は目の前に出された
お茶をすすっている、俺はデスクの上に
ある異世界電話に手をかけて受話器をとり
ダイヤルをまわす、
「あっはいじゃあそこで…今から行くんで
お願いいたします…ブチ」
「どうですか?」
「あっ魔王の部下とアポ取れて、ちょっと
歪みが生じてるっぽいんで来てくれって
言われたんで、同行してもいいですか?
戦闘なら手伝いますよ」
「ぜひお願いしますッ!私戦闘好きじゃな
いんですよ〜ありがとうございます」
「じゃあ、料理でも俺に振舞ってください」
「はい喜んで」
そうやって笑顔で礼をする、どこかの
バカ勇者と違い礼儀正しい良い子だ
「レッツ転生〜」
「おー‼︎」
二人で拳を空高く振り上げる
そういうことで二度目の転生をすることに
なった……
……………………………………………………
気がつくと俺らは村の前に立っていた、
「じゃあこの村のイベント終わらせて
さっさと魔王の根城突入しましょうか
異世界の点検しないとだし……」
「そうですね」
村は魔王に搾取され、 村ビトが死にかかっ
ているということもなく、普通に平和だっ
た、ただみんな痩せ細っている
「魔王はこの村の向こうに住んでいる」
「普通の村ですね〜」
「そのようですね」
一応配給される銅の剣を持ってきている
ちなみに盾は持たない主義だ‼︎
「ねぇねぇおねぇーちゃん、お腹すいた」
みると虚弱そうな少年が女勇者に話しかけ
ていた、
「どうしたの?」
「お腹すいた、うぅーん」
少年が唸る
「勇者急ごう、彼らを救うためにも‼︎」
柄にもなく、勇ましい声でカッコつけて
いった、アホでも声がよければ説得力は増
すからな、
「少年1人救えないで何が勇者ですかッ!」
女勇者が激怒する、だりぃ〜よ、
後から救えるじゃん〜
「私は、目の前の人を救える勇者に
なりたい‼︎」
「そうか勝手にしろ」
俺は彼女らに背を向け歩き出す、
だから勇者は嫌いなんだ、村ビトに
媚び売りやがって〜、
背後から、老人の感謝の声が聞こえる
どうやら勇者には料理をするのも
仕事らしい
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昼が食えなくなってイラついている
「クソッ勇者ってのは、どいつもこいつも
いつも振り回されるパーティの気持ちにも
なってみやがれッ!」
そうこうしているうちに魔王の根城に
ついた、
「お待ちしておりました、女神様」
八つ当たりで魔王の城ごと
吹き飛ばしてやろうと思い立っていたが、
すんでのところで思いとどまった、
黒く禍々しい鎧に身を包んだ男が佇んで
いた、
「魔王さまは城内でお待ちしております」
「電話の声の主はお前か?」
「そのとおりでございます、遅れました
わたくし、魔王の執事のひとり
松井でございます、以後お見知り置きを…」
「挨拶はほどほどにして、俺は歪みを
直しに来ただけだ、さっさとそこに案内
しろ」
「そうでございました、まぁ一旦魔王さま
に会われてみてください。
その歪みが生じているのも
魔王さまの寝室ですし」
そして再び歩き始めた、俺はただ
彼についていく、ダンジョン内部は
ダンジョンレベル75くらいなので
特に何もない縦長の赤い絨毯がひかれ、
石造りの壁に等間隔にかけられた燭台には
火が灯っている、所々に部屋があり
下品な笑い声が聞こえてくる、
「ここでございます」
大きな扉が目の前にある、
「魔王さまッ!例の者を連れてきました‼︎」
このことから察するにどうやら知性がある
タイプらしい、もっと面倒だ
脳みそスカスカの奴はぶった斬ってりゃ
なんとかなるのに……
ギィイ
誰も触れずに、扉が勝手に音をたてて開いた
そこに魔王はいた、厳しい眼つきと巨体
どうやら魔王の相場は巨体と決まっている
らしい……
俺たちはとりあえず魔王の間で跪く
「よく来た、勇者よ」
「は?」
「残念だがもう遅い、ここから生きて返す
訳にはいかない」
「いや、俺勇者じゃねぇーし」
そう言い返す、
「おい!さっきといってたことが
違うじゃねぇーか‼︎」
松井の方をみる
「・・・」
松井がいない……その代わり大量のゴブリ
ンに囲まれていた、
「フッ、そういうことか、どうやら俺は
罠にハマっちまったらしい…」
「どうやら話し合いでは解決できねぇ
みたいだ、ウェルカムだぜ、
暴力には賛成だ‼︎」
その掛け声で一斉にゴブリンが
襲いかかる
下級魔族のゴブリンは棍棒を装備し振り回す
当然銅の剣を背中から抜き、
ぶった斬る‼︎だいたい180体くらいは
殺した
あたりは血だらけだが、魔族の血液は
すぐに蒸発する
「フハハハハハハ、面白い」
ついに魔王が動き出す
「お待たせ、悪りぃな、次はてめえが
地獄にいく番だ‼︎」
魔王の両手が怪しく光る
「ふんぬっ!」
魔王のパンチが地面を貫く、
それをすれすれでかわす
崩れた体勢を整えながら、問う
「歪みの話も嘘か?」
その間にも高速のパンチが俺をかすめる
当たったらいくら俺でもただでは済まない
「それは、本当だァ!」
地震のような轟音をあげながら
今度は横の攻撃で壁を突き破り、腕が壁に
埋もれる、その隙に高く飛び上がり、腕から這い上がって、
魔王の額に銅の剣を突き刺す
「ヴァァァァァ!」
終わったな、今回もあっけなかった
巨体が倒れ地響きが起こる
その残響も消えぬうちに、
「ありがとうございます、
あなたのおかげで邪魔者を排除できました」
いなくなっていた松井が呟く、松井の
後ろには例の歪みがあった
「うるせぇ、めんどくせぇことしやがって
テメェも責任とってくたばれッ!」
俺は銅の剣を振り上げ松井めがけて
斬りかかる、
もっと俺を楽しませろ‼︎
オレの銅の剣が血に飢えてんだよッ!
松井はなす術なく両断され、蒸発した
「松井〜!」
そこにはどこから来たのか女がいた
女の乳は大きく、禍々しい鎧から
透けるような肌を覗かせていた
本来女の乳というものは重力に逆らうこと
ができないはずなのだけれど
“それら”はあまりに自己主張しすぎていて
そして何よりも魔王的過ぎた…
お腹も空いていたし、吸いたいと思った…
なんとか理性を保つ
くっ、来い‼︎オレの魔乳スカウター‼︎
ピピピピピピ…75、150、350、700、
1200、5000、15000、20000、ボンッ
魔乳スカウターが壊れる
戦闘力20000だとっ‼︎
だめだ、理性を保てないッ!
「よくも松井を私の可愛い松井を〜、
勇者、許さないわ」
そう言って女は漆黒の翼を広げ、
歪みへと消えていった、なんなんだ…
ともあれ歪みも消えたことだし、
今回も一件落着だ
村へ帰ると女勇者が炊き出しをやっていた
俺もその列に並んで豚汁をすする
空腹とともになんだか心も満たされたみた
いだった
こんな勇者が1人くらいいてもいいのかも
しれない