第82話
深夜、俺の気配察知に反応がある。
仇敵の反応だ。
他にも数人、合わせて10人が500m程先でうろついている。
あちらからはこっちの不寝番の焚火が見えているだろう。
皆に伝える。
「多分今日の深夜に襲撃がある。サミーの仇敵だ。
今日は皆寝ないで待機だ。」
作戦を立てる。
「奴らが50mまで近づいたら光魔法のライトで奴らの辺りを照らす。
基本的には先制攻撃を奴らにさせよう。
でないと、こっちが罪に問われる可能性がある。
そうしたら、弓や魔法で攻撃する。
それ以外は射ち漏らして近づいてくるヤツラを叩く。」
もし逃げようとした時のことも考えておく。
「俺はライトを出したら魔法で奴らの後ろに回り込む。
絶対に逃がさないように、サミーも一緒に来てくれ。」
皆真剣にうなずいている。
「いきなりで慌ててもまずい。
200mまで近づいたら25mづつカウントダウンしてみんなに状況を知らせる。
イル。弓でどの位までなら的に当てられる?」
「昼間で動かない的なら100m。
夜中に隠れ動く的なら25mといったところでしょうか。」
「じゃあ50mで明かりで変更は無しでいいな。」
話を続ける。
「もしかしたら今夜は様子見で、明日の夜になるかもしれない。
だから、今夜何もなかったら明日の昼間は馬車の中で寝てていい。」
「ライトは30分は消えないようにしておくから暗くなる心配しなくていい。」
「やつらの何人かのレベルはわかっている。LV10近辺だ。
皆は4~5人で相手一人を取り囲むようにして戦うんだ。」
矢継ぎ早に気づいたことを皆に話していく。
「あとは何か質問や気づいたことはあるか?」
奴隷達は先輩組を除いてあっけにとられたような顔をしている。
どうやら奴隷に意見を聞くような主人はいないようだ。
「正確な人数を」
イルが冷静に聞いてくる。
「今確認できているのは10人。
少なくとも数人の陸人族の男。
おそらくは全員がそうだろう。
もう少し近づけばさらに詳細がわかる。」
「皆殺しで良いの?」
ヒルダがとぼけた口調で聞いてくる。
口調と内容が一致していませんよ?
「そうだな、どうするサミー?」
サミーの仇敵なのだサミーの意見を聞くべきだろう。
「死よりもつらい結果でも構いません。
具体的には四肢切断のうえ眼と耳を潰し、鼻を削いで舌を抜いて。
ついでに宮刑ならOKです。
あっ、四肢切断は一回に大きく斬ってはだめです。
指から1cm位のスライスで何回も何回も何回も何回も。
舌は最後にしましょう。どんな戯言をさえずるのか。
それとも歯を抜いて自害できないようにするとか。
そのまま放置して魔物の餌とか、性獣オークの巣に投げ込むとか。」
サミー怖いからその辺にしておいて。
夢に出てきそうだよその顔・・・
「今のうちに罠を仕掛けておいてはいかがでしょうか?」
ルドが建設的な提案をする。
「そうだな。土魔法で落とし穴を掘っておこう。
白い布でバミっておくから注意して。」
「『バミって』ってなんですか?」
ルドがきょとんとした顔で聞いてくる。
くそ、その美少年顔をかわいいと思ってしまった。
俺を神の領域へと誘惑する堕天使め。
「あぁ、なにか目印をつけることを俺の田舎では『バミる』って言うんだ。」
失敗した。日本のテレビ用語が出てしまった。
さみしい夜をテレビを友として過ごしていた日々の癖がこんなところで出るとは。
落とし穴は後で中を土魔法で硬化して、周りに土壁を土魔法で作って、水魔法で水を出して、火魔法で沸かして・・・・風呂にでもしよう。
こんなところで貧乏性がでる。
何か作ったらそれ以外のことにも使えないか考えてしまう。
戦ったら汗もかくし、返り血も浴びるだろう。
移民団も落ち着かないだろうし、やっぱり風呂で心を落ち着かせる必要があるだろう。
うんうん。
仕方ないから男湯・女湯・雇い主の湯・俺たちの湯くらいには区別するか。
もう襲撃してくるであろう仇敵は排除されることが前提だ。




