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第八話

今日G級の依頼をクリアすればF級になれるはず。


一回の成功でF級にはなれる。


そうすれば討伐隊には参加できるかもしれない。


冒険者ギルドの壁に貼られた依頼票を見る。


級別に貼られる場所が違うので、自分が受けられる依頼を間違えることは無い。


やはりG級の場所には、ろくな依頼が無い。


居なくなったペットの捜索、防壁の修繕、浮気調査。


冒険者に何を求めているんだろう。


報酬も大銅貨三枚から五枚。


三百から五百ゴルだ。


一日の生活費で無くなる。


無差別依頼の依頼が貼られている場所を見てみる。


冒険者の級とは無関係に、常時依頼されているようなものが貼られている。


  ゴブリン、コボルト 一体 三百ゴル

  オーク 一体 四百ゴル

  大牙ラビット 一体 百五十ゴル

  ラージもぐら 一体 百ゴル

  二日ねずみ 一体 十ゴル

  毒トカゲ 一体 百ゴル


害獣駆除のようだ。


ゴブリンは普通十体位の群れを作るんじゃなかったか?


討伐依頼と依頼がかぶらないんだろうか。


この依頼を受けて成功すれば、F級に上がれるし、たまたま同じ方向に行っただけといういいわけもできる。


よし、この依頼を受けよう。


カウンターに行って、登録の時にいた受付嬢に聞いてみる。


討伐対象の死体か、証明部位を持ってくればいいらしい。


ゴブリンやコボルト、オークは右耳。ラビット系、ねずみ系は牙が証明部位だ。


他にはトカゲは食用になるとか、ラビットは毛皮が売れるとか、他にも収入につながるものはあるらしい。


とりあえず狩ったらストレージに放り込めばいいだろう。


探索隊が出るのは明日の朝だ。


それまでに何匹か狩って昇級して、それでもだめなら勝手に偵察隊を尾行しよう。


森は町の東側なはずだから、東門で張っていればジェドを見つけられるだろう。


よし、狩りにいくぞ。


出掛けに門のところに居る兵士にギルド証を見せて仮身分証を返す。


返金は、もちろん無い。


門番の小遣い稼ぎなのかアレは。


ギルドで聞いた話では、町の周辺は兵士が巡回して魔物を狩っているため、あまり遭遇することは無いそうだ。


町から離れたり、森に入ったりすると遭遇するらしい。


しかし、偵察ですら何人かでパーティを組んで行くのだ。


一人で何ができる?


はぐれたヤツとか斥候役を狩るか。


光魔法で回復はできる。


戦闘系のスキルもある。


気配察知はレベル3だ。


スキルだけなら隊商の護衛達の誰よりも上だ。


やれる。


とりあえず、森の浅いところまで行って様子を見よう。


気配察知を全力で起動する。


半径五百メートル以内に魔物や人は居ない。


ときおり小さく白い点が見えるのは鳥か小動物だろう。


短槍を左脇に構えて森の奥に進む。


投げナイフも右手に握ったままだ。


思ったより木が密集して生えている。


槍は振り回せそうにない。


突くか投げるかしかないだろう。


バットとナイフが主力になりそうだ。



気配察知に反応だ。


右前方に弱い赤い点が複数、左前方にやや強い赤い点が一つ見えた。


強い方の点が、弱い方の点の集団を追っているように見える。


右側にさらに弱い赤い点が複数見えてきた。


やはり強い点から逃げるように動いている。



森から出てきたゴブリンも、この強い赤い点の魔物に追われて出てきたんじゃないだろうか。


一人じゃやばい気がする。


一旦退却だな。


やばい、強い赤い点に気を取られてる隙に、俺の周りに赤い弱い点が集まって来ている。


森から抜けるには、少なくとも数匹とは戦う必要があるだろう。


森を抜けても追いかけてくるに違いない。


槍は森を抜けてからの方が使えるだろう。


投げナイフは撤退戦で使ったら回収できないかもしれない。


今はストレージにしまって、バットとマチェットに装備を変更だ。


風魔法で遠くから一撃して、バットとマチェットで接近戦で行こう。


とりあえず森を抜けないと、魔物は増える一方だろう。


あの強いやつも気になるし。


あと少しで森を抜けるってところでついに魔物と遭遇した。



身長は百四十センチ位か。


やけに大きな頭をした醜い子鬼って感じの魔物。


ゴブリンだ。


隊商の時は暗かったからあまりよく見えなかったが、今はまだ午前中だ。


よく見える。


見えなきゃ良かった。はっきり言って醜い。


三匹とも五十センチくらいの棍棒を持っている。


三対一だ。


なりふりかまっていられない。


先手必勝。


魔法で一匹殺ってビビッたところに突撃だ。


「風矢」


詠唱省略は便利だ。


見えない矢が一番後ろのゴブリンの腹に命中し、悲鳴をあげさせる。


仲間の悲鳴に気を取られたのか、ゴブリンが後ろを振り向く。


チャンスだ。


バットを振りかざし、後ろを向いた二匹のゴブリンに襲い掛かる。


作戦は成功し、無傷で三匹のゴブリンをしとめた。


手前じゃなくて奥のヤツを狙った作戦が的中したんだ。


運が良かった。


戦いの最中に気をそらすことができた。


それが無ければ、さすがに無傷とは行かなかっただろう。


しかし、勝利の余韻に浸りつつ討伐部位を削いでいる時間は無い。


後ろから魔物が近づいてくるのが、気配察知でわかる。


あわてて屍骸をストレージに収納する。


森を出たら武器を短槍に変更だ。


ストレージから短槍を出し、代わりにバットをしまう。


後ろから俺を追ってゴブリンが二匹森から出てきた。


その後ろにも何匹か寄ってきてるのが気配察知でわかる。


さっきのヤツと同じ群れなのだろうか。


しかし接近するのがわかるのはありがたいが、このまま次々に攻めてこられたのでは、いずれ疲れて遅れを取ってしまうだろう。


逃げながら戦う撤退戦か。


一番難しいやつやん。


撤退戦がうまい武将は二つ名が付いたりしてたよな。


「高坂弾正逃げ弾正」

「木綿藤吉郎、米五郎左、掛かれ柴田に退き佐久間」だっけか。


いかん、戦いの最中にいらんこと考えてしまった。


集中しなくちゃ。


ちょっと違うことを考えたせいか、少しリラックスできた。


おかげですっかり忘れてたことを思い出した。


相手を魔眼でチェックしなきゃ。


知識になるし、スキル持ってるやつがいたら[コピー]や[強奪]で奪って強くならねば。


森から出てきたゴブリン二匹を魔眼で確認する。


 ゴブリン・♂・レベル1

 スキル 無し

 装備 棍棒


チッ、使えねぇ。


スキルが無い敵は戦うなら弱くていいのだろうが、いざスキルを盗ろうとすると無いのは残念だ。


即効で倒して、後ろから来る団体に備えるか。


さっきと同じように無詠唱で[風矢]を後ろのヤツに打ち込む。


悲鳴を聞いて前のヤツが後ろを振り返った隙に短槍を突き刺す。


またまた成功だ。この戦法が定番になりそうだ。


しかし、[風矢]は単体攻撃だ。


相手の数が増えたらいずれ対処しきれなくなるだろう。


[風矢]を複数出すことはできないのだろうか。


次の団体で試してみるか。


いきなりMP使用量増えたりしないよな?


MPが0になったらどうなるかわからんし、町に向かって撤退しながらの戦いだ。


実験よりも生還が優先だが、いずれ必要になる実験だ。


幸い、次に遭遇するであろう四匹の団体を倒せば、あとは大分離れたところにいる。


倒した後で町に向かって走れば振り切れるだろう。


強そうな魔物がうろついていそうだっていう情報も入手した。


戦闘経験も積めた。


今日のところはもう十分だろう。


倒した二匹をストレージにしまい、次の遭遇に備える。


大木の陰に隠れ、[風矢]を二つ放とうとする。


できそうだ。


三つはどうだろう。


おっとこれもできそうだ、MPはまだ半分以上ある。


やってみよう。


ゴブリンの姿が見えた。


[魔眼]でゴブリンを確認する。


二番目のヤツが短剣1のスキルを持っている。


隠れたまま、スキルを持っていないヤツ目掛けて[風矢]を三発放つ。


やべ、一発はずした。


二発は先頭と最後のゴブリンに当たったが、一発は近くの木に当たったらしく、幹が爆ぜた。


どうやら[風矢]は追跡型では無いらしい。


勉強になった。


矢だもんな。そりゃそうか。


上のレベルでは追跡型の魔法もあるのだろうか。


それとも開発できたりするのだろうか。


そのうちあのオタクに聞いてみよう。


いきなりの、しかも見えないところからの見えない攻撃に戸惑っている、無傷のスキル無しのゴブリンに短槍を投げつけ、マチェットを抜いて突撃する。


短槍は狙ったとおり、ゴブリンの胸に突き刺さる。


もう一匹の無傷のスキル持ちのゴブリンは、パニック状態だ。


マチェットをパニクっているゴブリンの胸に突き刺す。


痛みで暴れるゴブリンの首を、左手で押さえつけてユニーク魔法の「コピー」を発動する。


短剣スキルを寄越しやがれ。


失敗だ。


まぁレベル1の成功率十パーセントでは仕方ない。


続けて「強奪1」を発動する。


こちらもレベル1では成功率は十パーセントだが、成功した。


スキルはゲットしたし、あとは用無しだ。


[風矢]を受けて倒れているゴブリンにも止めを指す。


最後のゴブリンに止めを指した瞬間、頭の中に音楽が響く。


某有名RPGでレベルアップしたときの音楽とほとんど同じだったため、何の脈絡も無くレベルアップしたのだと理解できた。


あとはゴブリンをストレージにぶち込んで撤退あるのみだ。


もちろんゴブリンの血にまみれた短槍とマチェットは、ゴブリンの粗末な衣服でぬぐってある。


アロンの町に向かって一目散に走りだす。


早く戻って飯が食いたい。




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