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第53話

夕方になり、商館へ向かうことにする。


「闇に葬られそうになったら、遠慮無しに蹂躙していいぞ。

 イルは魔法もオッケーだ。」


既にジェシカちゃん母娘には、明日の昼までに顔を出さなかったら領主へ届け出るように手紙も渡してある。


「ようこそお出でくださいました。」


ほぼ全従業員だろうって人数に最敬礼九十度で出迎えられた。


重々しいあのドアの前にズラッと。


すごく変な感じがするが、なんか問題を起こした中小企業が、吸収合併してくれる大手企業の重役を迎える感じといえば分かってもらえるだろうか。


周りの気配察知をしてみるが、今のところ、変な感じはしていない。


「この間のお部屋で、お話しをお願いいたします。」


オッサンが言ってくる。


どうやらオッサンは2番目か3番目位の地位なんだろう。


高級奴隷を扱うのはこのオッサンってコマガが言っていた訳だ。





部屋に入ると、デジャブが。


この間と同じように社長と、縛られたコマガがいた。


この間の社長は俺たちを立って出迎える。


コマガは縛られていて立てないからそのままだ。


ソファの数が少し増えている。


会談に加わる人数が前回より多くなるのだろう。


「どうぞ。おかけください。」


俺たちがソファーに腰掛けると共に人が入ってくる。


全部陸人族だ。


こちらは、俺、サミー、イル、ヒルダがそれぞれ一人がけのソファ。


向こうは、社長、オッサンA、知らないオッサンB、C、D、知らないオバハン1、土下座のコマガ。


社長とオバハン1が一人がけのソファ。


オッサンAとオッサンB、C、Dは三人掛けにそれぞれ二人で座る。


これで、力関係が分かった。


オッサンらは3位以下。


社長とオバハンがどっちが上か分からんが、上位。


紅茶とプリンが出てくる。


プリンがこんなところまで広がっていると見て単純に喜ぶべきか、こちらに媚を売っていると見るべきか。


なんか随分疑い深い狭量な人になってしまった気がするが、日本ではこんなん序の口だ。


社長が応対するようだ。


オバハンは黙ったままでこちらを品定めするように見ている。


「それで、いかがでしたでしょうか?ご検討いただいておりました件については。」


「そうですね。

 昨日お話したとおり、示談の方向で結構です。

 後は、そちらの示す条件次第といったところでしょうか。」


社長がほっとしたような顔を見せる。


「それよりも、聞きたいことがあるのですが。」


社長の顔を見据えて言うと同時に、視線だけオバハンの方に向ける。


「私の見たことの無い方が数名同席しているのですが、理由と立場をお聞きしてもいいですか?」


社長の顔が強張る。


オッサンらは引きつるような感じになっている。


オバハンは薄ら笑いだ。


「特にそこのオバハンの名前と立場を聞かないうちは、何にも進まんぞ。」


脅かすように言ってみる。


社長が絶えかねたように言う。


「ここにいるのは、当商館の副社長で販売担当のワルサーと。」


オッサンAがあわてて頭を下げる。


「同じく副社長で、仕入れ担当のダイカンと、経理担当のヒドインと、渉外担当のクズラッタです。」


オッサンBとCとDが頭を下げる。


社長は、オバハンの顔色を伺っている。


オバハンが頷くと、


「この町、デスタ領主のオズボルン・ド・デスタ伯爵夫人でございます。」


そんなことだと思ったよ。


「で、その女領主様が何故こんな場所に?」


あえてオバハンを無視して、社長を問い詰める。


「えぇと、当商館は領主様の御用商館でもありまして、その関係で・・・・」


モゴモゴと説明する。


「ということは、たとえこちらが正当な申し出をしてもこの街、領土内に限っては、握りつぶされる可能性があるということでよろしいですか?」


笑いながら社長に言ってみる。


あらかじめ分かっていましたよ。というハッタリだ。


でもなければ、俺たちが闇に葬られてから、訴え出たジェシカ母娘が順番に消されるだけだ。


もちろん簡単に闇に葬られるつもりは無いが、相手は権力者だ。


単純にすごい戦力を抱えているだろうし、ズルもできる権力がある。


警戒度はMAXだ。みんなにもハンドサインで最上級警戒を支持する。


今のところ気配察知には異常な反応は無いが、領主お抱えの影働きをする奴らが俺の気配察知に引っかかるとは限らない。


社長に向かって言っているのは、あくまで俺たちの交渉相手は商館であって、領主の伯爵夫人とやらではないというアピールだ。


もちろん、害を加えられるようであれば、全力で殲滅する覚悟はある。


社長はオバハンを見るばかりで反応は思わしくない。


「腹芸はあまり得意では無いので、腹を割って話しをしたいのですが、誰と話せばいいんでしょうねぇ?」


あくまで暢気な口調で言う。


底を見せてはいけない。


こちらが余裕でいる限りは、向こうもこちらの準備を怪しんで強硬手段には出にくいはずだ。


「こちらが誠実に求められた示談交渉に臨んでいるのに、そちらがそんなんでは、交渉になりませんねぇ。」


立つそぶりを見せる。


「お待ちください。こちらも誠実に望みたいと思っております。」


社長がわが身を心配してか、口を出してくる。


でも、こちらは社長を見ているだけで、実際の交渉相手はオバハンだ。


オバハンとて王都にまで話しがいくと自分の権力で同行できなくなるはずなので、デスタの町の中でカタをつけたいはずだ。


「こちらは、アクトック商会との示談に来ていますので、領主様うんぬんは、そちらサイドの問題でしょう?

 そんなメンドクサイのは、勝手にそっちでやってくれませんかね?

 無理なら決裂ですが。」


顔は社長に向かって眼だけ女領主に向けて言う。


広めるつもりがないことがようやく女領主様に伝わったらしく、


「わかった。明日報告を待っている。」


と社長に言い残してオバハンは退室した。


ちょっと前から感じていた、気配察知の嫌な感じは急に失せていった。


急に社長は堂々としだした。


というか、これは、領主に罰せられなくなったと判断できたから開き直った。


だろう。


いくら損害賠償や慰謝料が発生しても、死刑は無いし、御用達の地位が保証されたってことなんだろう。

全部解ってるぞって感じで社長に言ってみる。


「向こうがそう思っててもこっちがそうとは限りませんよ。」


と言ってみる。


急に顔が青くなったのは当然だろう。





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