表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/125

第42話

◆◆◆サミュエル目線◆◆◆



ふつう獣人の♀の奴隷を買う陸人族は、性の捌け口か、後添えか、性奴隷として働かせる。


そういうものらしい。


ほとんど百パーセントが男の主人である。


陸人族の男と獣人族の♀の間では、普通子供ができないため跡継ぎ問題なんかがない。


そうで無ければ、冒険者や探索者の前衛として使われる。使い潰されることも多い。


そういうものらしい。


商館に買われてから教育された。それが常識だと。


この国では、獣人は少し差別されている。


少し? 少しじゃないかもしれない。


たまに物を売ってくれない店があったり、泊めてくれない宿もあった。


奴隷も、獣人族が陸人族の奴隷は持てない。法律で決められているらしい。


でも、このご主人様はなんか違う。


全然手を出してこないから使い潰すんだと思ってた。


いずれ死ぬ奴隷に肩入れしない。それも常識だと習った。


でも態度からはそんな感じはしなかった。


かといって、手を出してこない。


一年以上一緒に居てもキスだけだ。


陸人族は年中盛っていると聞いたことがある。


自分には魅力がなかったのだろうか?


でも、獣人族の村で暮らしていたときは、何人かに好意の告白をされたりしたこともある。


陸人族と獣人族ではなにか違うのだろうか。


純粋に戦力として買ったのだろうか。


でも戦力としてなら、商館に一緒に居た羆の獣人やイリエラのほうがよっぽど上だった。


なんで私だけじゃないんだろう?


戦力であれば当然か。


なんでもう一人がイリエラなの?


イリエラはすごく良い子だ。


私が持ってないものを沢山持っている。


戦う術も、足も、明るさも。


イリエラは二人いないから仕方なく私もなのか。


なんでその後もう一人買うの?


何で♀ばっかり三人?


戦力だとしたら♂の方が普通は強い。


なんで弱い、手も出さない♀の異種族だけ?


男嫌いで、対象は陸人族の女だけなんだろうか?


なら陸人族の女奴隷を買えば良い。


お金が無いわけじゃない。


むしろ歳からすれば金持ちだろう。


衣食住の全てにおいて、奴隷どころか友達や家族のような待遇で。


まるで、幼馴染のように、一緒に食事をして、一緒に酒を飲んで、一緒に・・・


奴隷を床で寝かせる主人も普通にいると商館で聞いた。奴隷だけ野営とかも。


ベッドどころか女部屋を貰っている。


食事は粗末な物を一日に一度と言うこともあると商館で聞いた。


日に三度、好きなものを好きなだけ店で頼める。


なんでやさしくするの?


どうせ奴隷で逃げられないのだから、恩を売っておく必要も無い。


なんで、奴隷になる前より生活の質が上がってるの?


なんでなんでなんでなんで。




十一階層ということで、すくんでしまった私は捨てられることを覚悟した。


手を出されない上に、戦えないとなったら私の存在価値はない。




なんで自分を切れなんて言うの?


傷はつかなかったというか、つくそばから無くなっていた。


私が奴隷に堕ちた原因のダンジョンの十一階層も一人で突破した。


何もするなってどういうこと?


その後、奴隷から解放された。


奴隷商が押しとどめるのを振り切る主人。


聞いたこと無い。


その上。


恋人になれと。


なんだこいつ?


何言ってんだ?


素直じゃない私は・・・




◆◆◆◆




「ごめんなさい。」


心底情けない顔をしてしまっただろう。


まさか断られるとは。


「うっ、うん。いいんだ。そうだよね。うんうん。ごめんね。まさかね。うん。だって。」


もはや会話ではない。


なんとかこの気恥ずかしさといたたまれない雰囲気を何とかしないと死んでしまう。


『俺は下の上。』


この座右の銘を忘れて突っ走ってしまった俺が悪いのだ。


少しでも好かれてるなんて妄想した俺の罪だ。


俺ごときが「俺を恋人にしてほしい」だなんて、何様だ。


あぁ、穴があったら入ったまま十年ほど引きこもりたい。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ