第40話
[フィールド移動]で街の外に出る。
「サミー。その刀でちょっと俺の手と足を切り取って。」
驚愕の目を向けるサミー。
当然だ。
「大丈夫。俺は死なないから。」
躊躇いつつ刀で俺の手や足を切りつけてくる。
[中級回復]で切るそばから回復する。
切り離される前に接合される。
見た目は、刀が身体をすり抜けている感じだ。
「なっ?俺がいる限り俺のパーティメンバーは死なせない。
手や足なんて幾らでも生やしてやる。」
腰を抜かしたように座り込むサミーにサムズアップで微笑みかける。
治っても痛みはあるのだがそれは我慢する。
腕や足を失ったトラウマは取り除けたろうか。
サミーをつれて、コマガのいる奴隷商館に行く。
料金を払い奴隷契約を解約する。
「本当にいいのか?」
解放しようといったらコマガに止められた。
「いきなり切りかかられることもあるぞ?」
いろいろ主人と奴隷の間にはあるらしい。
でもそんなことはもうどうでも良かった。
「でも死ぬより辛い目にあってる俺を殺してくれ。
って命令も受けれないじゃないですか。」
無理やりごまかした。
しぶしぶコマガは奴隷契約を解約してくれた。
切りかかられたりはしなかった。
「これで俺達は、奴隷と主人じゃなくて仲間だ。
サミーの失ったもの。
身体と自由と仲間は、新しく俺が全て与えることができたろ?」
奴隷に堕ちたトラウマと、仲間を失ったトラウマは取り除けたろうか。
あとは、陸人族嫌いと十一階層か。
手っ取り早いのはやった奴らを殺ることか。
まずは、十一階層をどうするか。
十一階層だけを避ければいいような気もするが、さて。
ダンジョンの十一階層に[ダンジョン移動]で入る。
「ここは十一階層だ。
サミーは何もしなくていい。
ただ付いて来て。」
群がる魔物を切り伏せ、叩き潰し、火達磨にし、そして最短距離を通り無傷で十二階層にたどり着いた。
「ダンジョンの十一階層程度で俺は止められない。
だからサミーも傷つかない。」
[ダンジョン移動]で地上に戻る。
「サミーを悩ませている原因は、サミーを傷つけた陸人族の奴以外は、全部解決した。
問題ない。
そいつも会ったら教えてくれ。
生きていることを後悔させることを約束する。」
サミーはさっきからずっと無言だ。
「失ったものは取り戻した。
かなえられていない案件は一つ。
そして、前に無かったものを一つあげたい。」
サミーを抱きしめる。
「俺を恋人にして欲しい。」