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第30話

奴隷市の中を四人で見て歩く、


「料理と経営のできる女の人を探すんですよね?」


いつもと変わらない感じでイルが聞いてくる。


反省しやがれ。


「そうだね。俺には他人のスキルがわかるからさ。」


「若い必要は無いんですよね?」


いつもと変わらない感じでサミーが確認してくる。


反省しやがれ。


「うん。俺には君達がいるのに、これ以上若い子が必要なわけないじゃないか。」



何もできてないのに増員禁止ってひどくない?


「もう男の娘でもいいんじゃない?」


オマエがダメージディーラーだヒルダよ。


覚えておけ。


「それは無理。」


それだけは答えておく。




市をざっと見て回る。


やはりスキル持ちは少ない。ごく稀にいるくらいだ。


おっ料理スキルレベル2が居たぞ?


ん? どっかで見た記憶が・・・ジェドさんの奥さんやん!


「あの、なんでこんなところにいるんですか。」


「あっ、ごめんなさい。せっかく助けていただいたのに。」


ジェドのオッサンは一攫千金を夢見て、強すぎる魔物の討伐依頼を受けて帰って来なかったらしい。


堅実に稼いでいたはずなのに。


もしかして俺のせいなのか?


大黒柱を失った一家はすぐに行き詰った。


アロンくらいの町では、料理のスキルを生かすこともできなかったらしい。


教えたプリンのレシピも騙されて人の手に渡り、プリンは大分あちこちに広がったが、二人は身売りをするしかなくなったらしい。


「ジェシカちゃんは?」


「アクトック商会ってところに買われていきました。」


俺がイルとサミーを買ったところだ。


「幾らですか。」


露天商に奥さんの値段を聞く。


奥さんとジェシカなら俺の味方で居てくれるだろう。


居酒屋バラエティの住み込み修行に出す。


俺の奴隷でいる限り今より悪くなることは無いはずだ。


料理レベルも1と2なはずだ。


すぐに物になるだろう。


「ジェシカちゃんも今から連れ戻しますから。」


三万ゴルで奥さんを連れ出す。


後ろで三人は何も言わずに居てくれた。


ちゃんとふざけちゃいけないところはわきまえているようだ。


それとも三十代半ばの奥さんや子供のジェシカちゃんは敵ではないということか?


ジェシカちゃんが売れてしまう前に取り戻さなきゃ。


いつ誰に売られてしまうかわからない。


売られてしまっていたら取り戻せるかわからない。


けれども、間に合うかもしれない。


「コマガさん。」


あの店員がいつものように商館の外にたたずんでいる。


「ジェシカって陸人族の娘、まだここに居ますか?」


「どうしたんだ?名指しなんて、知り合いか?」


「そうなんです。」


「なんか増えてる気がするんだが、全部オマエのか?」


イル、サミーは知っているとして、ヒルダと奥さんか。


「そうです。で、いるんですか?」


「あぁ。いる。けど、

 おまえ五人目か?

 その歳で。」


「事情があるんです。中に入っても?」


コマガを押すようにして商館に入る。


「コマガさん指名です。」


皆に聞こえるように叫ぶ。


商館には一度入って状況は分かっている。


コマガなら多少の融通は利かせてくれるだろう。


「ジェシカって陸人族の娘で、多分十二か十三歳です。

 居るっていいましたよね。」


「ああ。いるが、いいのか?

 高いぞ?」


え?


「料理の名人でな。

 オマエが買った二人よりも大分高い。

 アロン名物のプリンプリンを編み出したそうだからな。」


俺の馬鹿!商売のイロハも一緒に教えておくべきだった。


「で?幾らなんですか?」


「四十万ゴルだ。」


おい。なんぼなんでもボッタクリすぎじゃないか?


料理が少しできるだけの小娘だぞ。


「プリンプリンはもう、王都にまで届くほど有名になっているからな。

 その発明者ともなれば、たとえ小娘でもその位は先行投資として買うヤツはいるだろう。」


「それでいいです。

 本人かどうか確認したら、すぐ買います。

 服だけ何着かおまけしてください。」


値引きが効くことは知っている。


俺の買価減レベル1の五パーセントでは二万ゴル。


それが服の数着で住むのだから原価から考えたら断るはずがない。


ほぼ手持ちの金が全部なくなる。


が、仕方ない。


知り合いが不幸になるのを静観するほど達観してはいない。


「おにいちゃん。」


コマガに連れてこられたのは間違いなくジェシカちゃんだった。


ちょっとだけ大人っぽくなっていた。


「もう大丈夫。お母さんもね。」


ぎこちない俺の笑顔に、泣きながらの笑顔で答えてくれた。



「いいですか奥さん、ジェシカちゃん」


右耳に俺の奴隷の証であるビー玉を埋め込まれた二人に言い聞かせる。


「二人は、料理の才能はありますけど、商売の才能はありません。

 なので、ここで料理を修行してもらいます。

 そしていずれは、俺の経営する店を切り盛りしてもらいます。」


ここは、バラエティ居酒屋二号店バラティエ。俺達がいつも入り浸っている店ではない。


女三人をつれて入り浸る姿を見せるのは、いかがなものかと思うのだ。


「だからしばらくここで住み込みで料理を習っててください。

 衣食住は心配ありません。

 オーナーは知り合いなので安心してください。」


「ありがとうおにいちゃん。」


奥さんのほうは泣くばかりで言葉もない。


最近、昼間にも定食で営業を始めた居酒屋バラエティ二号店のドアを開け、中に入る。


「オーナー。この二人を住み込みでお願いします。

 プリンプリンの開発者ですから即戦力ですよ。」


大歓迎で迎えられた。


「それと新しい店舗のときのアイデアなんですがね。」


ダーツバーと、割引補助券、ポイントカードを教えておいた。


流行るかどうかは知らん。






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