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第21話

とりあえず、飯は食った。


「ご飯にするお風呂にするそれとも私?」をしたい。


ご飯はした。


公衆浴場の割引券もある。


「じゃあ買い物と、風呂にいくか。着替えを持ってね。」


「あっ、ヒルダはとりあえず二人と同じ格好に着替えてからね。」


言うだけ言って部屋を出る。


読者サービス? 深夜アニメの見すぎだろう。


着替えが済むまでにストレージからタオルを人数分と、石鹸を二つ取り出しておく。


[リフレッシュ]は清潔にはなるのだろうけど、風呂上りのほのかな石鹸の香り。


みたいなオプションは無い。


何度か行ったことのある公衆風呂に皆を連れて行く。


「じゃあ俺は、大風呂にいるから、これでしっかり身体洗ってね。」


石鹸とタオルを渡す。


三人は貸切風呂に入ってもらう。


三人に親しくなって欲しいからだ。


三人の裸を同性とはいえ、知らん奴らに見せたくないってのもある。


それに同じ釜の飯を食う仲間になるのだ。


ギスギスしてたら、俺が気を使う。


俺がいてはできない話もたくさんあるだろう。


一緒に入りたい欲求もあるが、後々のお楽しみに取っておこうと思う。


「一時間位したらロビーにいるから。上がったら装備買って帰ろうね。」


装備より先に晩飯にしたら、金欠で素手でダンジョン攻略に挑む羽目になりかねない。


まずは装備を整えてからだ。


大風呂に浸かりながら、皆の装備について考える。



イリエラには、槍と弓とマチェットを使ってもらおう。


長柄と弓と短剣のスキルを持ってるし。


青銅の槍と長弓は俺の使っている物のお下がりだが、悪くなるものじゃないし。


マチェットは日本から持ち込んだ、刃渡り五十センチ位の真っ黒なカーボンスチールの「米軍御用達」が売り文句の逸品だ。


俺には魔法と投げナイフがあるから、長距離での攻撃に幅が出るだろう。


弓での後衛や、槍での中衛をお願いしよう。


防具に革の胸当てにあの「巨」なサイズのがあるのかな?


今頃風呂に浸かっているであろう、ナイスバディを想像してしまう。


篭手もトラウマ防止に必要かもしれん。


革の胸当てが五千。青銅の篭手が八千だったか。


合計一万三千。



サミュエルにはマチェットと、俺の使ってる青銅の小盾か。


剣と盾のスキルがあるから順当だろう。


マチェットは持ってきた中で一番長い刃渡り七十センチはある、オレンジ色のチタンボンドステンレス製だ。十分剣スキルに対応してくれるだろう。


防具は同じく革の胸当てと、トラウマ防止には脛当てが必要か。


革で二千、青銅で五千だったか。


武器とスキルからすれば前衛向きだろう。


合計が七千から一万。



ヒルダは、ちょっと困る。


スキルからすれば前衛だ。


三人の中でも一番レベルが高い。


でもあの小ささで前衛か?


一撃でも貰ったらアウトな気がする。


魔法を覚えてもらうのが一番なんだけど、種族的に魔法を使えないのはなんか理由があるからじゃないかと睨んでいる。


とりあえず防具は胸当ては必須として、篭手や脛当てでガチガチに固めたい。


でもぜんぶ揃えると手持ちをオーバーする。


顔や耳にも傷を受けていたからヘルメットもか。


武器は、斧スキルに対応する日本から持ってきた薪割り用の片手斧でいいとして。


防具は、もうキャッチャーセットで良いんじゃないだろうか。


篭手だけ買えばあとは上から下までフルガードだ。


多少目立ってしまうかもしれないのが難点だが、背に腹はかえられない。


青銅の篭手で八千。


三人で二万八千から三万一千ゴル。


下値で無一文だ。全部は無理だな。


ポイントの使用は、ちょっと待ったほうがいいだろう。


何回か魔物と戦ってみて、適正をみたり、戦闘パターンを決めてからにしよう。


希望も一応きいてみるか。


となるとステータスも見て判断したい。


魔眼を一つ上げて壽眼ってやつにするか。


でも俺ポイント残ってないしなぁ。


慎重に俺のレベルが上がるのを待つか、今の安全を考えて振り分けてしまうか悩みどころだ。


大きな浴槽に浸かって考え事をしていると時間なんてあっという間に過ぎていく。


ロビーに行くと、風呂上りの美(少)女がベンチに座って俺を待っている。


上気した頬がセクシーだ。俺んだ、貴様ら見るんじゃない。


近くの川で冷やしている、というのが売りの果実酒とビールが売られている。


金は無いが風呂上りに飲み物が無いなんて拷問は勘弁してほしい。


仕方なく四人分で二百ゴル払う。


俺はビール、他は果実酒だ。


川で冷やした程度の冷たさだが、火照った身体には染み込む冷たさが最高だ。


旨い。飲酒の癖が戻ってきそうだ。


みんなも旨そうで幸せそうだ。


それを見てると俺も幸せな気分になる。


将来、風呂付の家を買って皆で住もう。


魔法で冷蔵庫とか作って飲み物冷やしておいて、飲み物もシャンパンやビールの炭酸系のお酒で湯上りの火照りを冷ますんだ。


温泉地で源泉かけ流しの露天でもいい。


山のほうに行って、土魔法でボーリング掘削すれば、多分出てくるだろう。土魔法は押さえとかないといけない。


でも付与魔法も捨てがたい。


ポイントがモットモット欲しいよう。


贅沢だとは思うんだけどね。


魔法使えない人がほとんどなんだから。


公衆浴場を後にして、宿屋の方へ向かう。


確か途中に武器屋と防具屋があったはずだ。


雑貨屋と弁当屋もあった。明日からの準備は全部済む。


「ごめん。武器はとりあえず手持ちのものを使ってもらうことになるんだ。

 防具も満足できるレベルでは無いと思う。

 甲斐性無しと笑ってくれ。」


防具屋に入りながら謝っておく。


「ここでイリエラとサミュエルは、革の胸当てを買うから、合うのを選んで。

 ヒルダはごめん。今ある手持ちのやつを使ってもらう。」


「「かしこまりました。」」


「大丈夫です。お兄ちゃんが守ってくれますから。」


泣かせるぜ。


全幅の信頼。


ヒルダがいれば俺、やっていけると思うの。


浸る俺を無視して、二人は革の胸当てを選んでいる。


やはりイリエラに合うサイズのはそんなに数がないらしい。


「色が」とか「これきつい」とがブツブツ言っている。


サミュエルは、防具にこだわりは無いのか、即効でごく普通の黒い革の物に決めたようだ。


イリエラも数少ない候補の中から同じく黒い革の胸当てに決めた。


なんか胸元を強調したデザインで、革といえば茶色や焦げ茶色を想像するが、イリエラサイズは黒しかなかった。


なにか色の流行や、決まりとかあるんだろうか?


革製品は黒、焦げ茶、茶、ベージュ、赤茶が普通の色のようだ。


二人とも黒の革の胸当て、三人とも黒い皮のツナギ、キャッチャーセットも濃い紺色、俺も黒い革の胸当てに脛当てにヘルメット。


全員黒ずくめだ。


なんとなくまともな集団じゃないように見られていないか心配になる。


そのうち、キャラクターに応じた色に変えてあげよう。


漆黒のとか深紅のとか蒼穹のとか紺碧のとか二つ名が付くような感じで。


なんて素敵な厨二病。


二人は革の胸当てを身につけて店をでる。


もう所持金の残りは二万ゴルを切っている。


あの食欲だと三日持たない。


本当にギリギリだ。


エンゲル係数がハンパない。


弁当屋で、今夜の分の弁当を十個、明日の分を三十個、保存食を四食とワインを一袋買ってから宿に入る。


一泊三千ゴルの高級宿だ。


防音はしっかりしている。


だろう。


だといいな。


部屋に入るなり後ろ手に閂をかける。


大丈夫。

もうみんな引いたりはしなかった。


イリエラはニヤっと笑い、サミュエルはビクっと身体を強張らせたが。


ヒルダは?


ベッドにダイブして遊んでますよ。


「とりあえず、明日からこの四人でパーティを組んで外で狩りをする。

 何日かやってみて、今度はダンジョンに入ってみる。

 どっちがウチ達に向いてるか、適正を見極めたうえで、今後の活動方針を決める。」


近々の活動方針をメンバーに知らせる。


日本で培ったスキルだ。


働きに直結する。


「とりあえずは、この町を拠点に稼ぎ、ある程度の貯金ができたら、見たこと無いものを見るために旅に出る。

 もちろん皆一緒だ。

 全部見終わったら、一番気に入った土地に屋敷を建てて、温泉を掘って、春は花見、夏は海水浴、秋は紅葉狩り、冬は雪遊びって生活をする。」


長期的な活動方針と展望をメンバーに知らせる。


これも日本で培ったスキルだ。


モチベーションの維持と自己練磨につなげてもらう意図がある。


「そのためには稼がないといけないし、何より死んだらいけない。

 君達を失うなんて俺には耐えられない。」


歯が浮いてきたが、モチベーション維持のためには必要だ。


恥や羞恥心は今だけ忘れて、無い対人スキルを発動だ。


「そこで、今から装備の試着をして、万全の状態で明日に望みたい。」


ストレージから色々取り出してそれぞれに渡していく。


「サミュエルには、これを使って欲しい。どうだ?」


青銅の小盾とマチェットを渡す。


「はい。胸当てと盾と、ちょっと変わってるけど良い刀ですね。

 私の得意とするところです。

 十分戦えると思います。」


うん、スキルで判断してるからね。


目が怪しく光っているのは見なかったことにしよう。


「イリエラには、これを」


青銅の短槍とマチェット、長弓と矢筒を渡す。


「ありがとうございます。

どれも使いやすそうです。

特に長弓はご主人様を射抜くのにぴったりです。」


その軽口いいねぇ。


サミュエルにも教えてあげて。


って、軽口だよね?


冗談だよね?


「それと、私のことはイルとお呼びください。

 マイスイートダーリン。」


「うん、その呼び方は止めようか。」


俺の身体に手を巻きつけ、抱きつこうとするイル。


からかわれているのか?


まあそうだろう。


近くからアウアウという声にならない声が聞こえてくる。


「イル。ヒルダが目を回すからそういうのは後でな。」


「かしこまりました。」


満面の笑みである。


一方引き合いに出されたヒルダは、白い肌を赤くしている。


特に耳なんて真っ赤だ。


「お、おにいいいいいちゃんななななんだから、もててててあたりまえですやん。」


動揺が言語中枢に作用したのだろうか、残念な子みたいになってる。


「大丈夫。心配ないよヒルダ。」


頭をなでなでしながら話しかける。


なにが大丈夫で何が心配ないのかは分からない。


安心感を与えるのに具体性や整合性は必要ない。


自信たっぷりに慰める。これでいい。


「ヒルダはこれを使えるかな。」


ヒルダのだけわけの分からんものになるが仕方ない。


キャッチャーセットをヒルダに装着する。


ヘルメット、キャッチャーマスク、プロテクター、レガースを手際よくつけていく。


片手斧に大鉈も手渡す。


「打撃や斬撃には多少の耐性があるが、刺突を防ぐは無理な防具だ。それで大丈夫か?」


「痩せてるので、受け止めるのはどうせ無理です。

 この軽さは逃げ回るのに都合いいです。」


どうやら満足いただけたらしい。


「それらは俺が使ったことが無いから、使い心地とかが分からない。

 何かあったらすぐに教えてくれ。」


「はい。この斧と鉈も・・・いい感じです」


あっなんかヤバイ気配がした。


斧と鉈をもって微笑む美少女。ヤンデレ系のかほりがする。


冷えてきた空気を換えよう。


「今後のことについても話したい。」


とりあえずはこの四人でパーティを組むが、稼ぎ先とか、メンバーの補充とか、理想の武器とかいろいろ話さないといけないだろう。


「長弓で遠距離から、中距離は槍、近づいたらこのマチェットという刀。攻撃に幅が出そうです。

 それに、ダーリンの風魔法と光魔法がありますし、どんなプレイも可能です。

 私は後衛か中衛ってとこでしょうけど。」


イリエラさんや。プレイってなんだプレイって。


ダーリンは止めようね?


電撃をくらうフラグにしか思えないから。


「E級の冒険者パーティであれば普通か、良いくらいの装備だと思います。

 特にこのマチェットという武器。良いですね。

 打ち合いには向かなさそうですが、切れ味がよさそうです。」


笑顔が怖いよサミーさん。


切り裂きジャックか。


もうジャックって呼んじゃうよ。


「軽い装甲と鋭い武器。私の理想の装備に近いです。」


近いって、あとは何が必要なのヒルダさん?


「逆に不安な面は無いの?」


あまりに前向きすぎる発言しかないので、それが不安だ。


「「「攻撃魔法の援護があれば」」」


そうだね。なんとなくこのパーティだと、脳筋と回復役しかいない感じだもんね。


「一応俺がそこそこの風魔法が使える。

 イルの弓と俺の風魔法で先制攻撃、あとは混乱したところに肉弾戦で制圧。

 最後に俺が光魔法で回復して終了。

 って流れになると思うんだけど。」


大筋ではベストではなくてもベターだ。


とのお答えをいただけた。


「風魔法以外に、他にこんなのがあれば良いな。

 って魔法はあるの?

 魔法使いの新メンバーの導入も考えるよ。」


「「「いりません」」」


なんで?







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