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第20話

昼の食事が一段落したけだるい午後。


アレだけあればさすがにある程度の補給どころか、某仙人の豆なみの栄養補給になっただろう。


多分。


なっていてくれ。


「足りた?」


なんて怖くて聞けない。


足りないなんていわれたらどうすれば良いんだろう。


毎日バッファロー狩りでもしないといけないんだろうか。


「この薬も飲んで」


日本から持ち込んだ、マルチビタミンやら亜鉛やらを皆に飲ませる。


量だけでは含まれていない栄養素があるかもしれないもんね。


お肌も潤うはずだし。


いよいよ俺は、なんだかんだいって先延ばしにしてきた作業にうつる。


「いまさらだけど、俺は今日君達を買った。」


奴隷宣言だ。今更ながら奴隷制ってナンなんだよと、自分の行動を棚のはるか上空に放り投げて思う。


弱冠緊張した面持ちで、三人は俺を見る。


なるべく刺激を与えないように平静を装って続ける。


「いろいろ思うところはあるかもしれないけど、これから一緒に暮らすことになるからよろしくね。

 あと、生計は冒険者とか探索者として立てる予定。

 一緒に行動してもらいたい。

 それと。」


一度言葉を切り、勇気を出して言う


「俺と君達三人しかいないから。

 恋人くらいを要求したいけど、無理ならせめて再婚した親の再婚相手が連れてきた義兄ちゃん。

 くらいな感じで接してね。」


どんな反応が返ってくるのかビクビクものである。


すんげぇ怖ぇぇぇぇ。


普通治らない傷を治してるんだからまったくの拒絶はないだろう。


とは思う。


だけど対人スキルが欠損してる身としては、怖いものは怖いのだ。


化け物を見る目で見られても、おかしくはないだろう。


ん十万ゴルの施術以上のことをしたのだ。


「はい。よろしくお可愛がりください。伽はまず私に。」


「かしこまりました。」


「私のおにいちゃんに間違いがあるはずはありません。よろしくお願いします。」


うん。やっぱり評価が分かれたね。キャラクターもね。


  豹人娘:色気でからかって遊ぶ。積極的。

  狼人娘:ツンツンツン(デレは?)。無愛想。無口。

  エルフ娘:全面的信頼。おにいちゃん名目のお母さん認定?


って感じに落ち着いた。


いや落ち着いちゃいけないんだけど、この半日で悟った。


もう現状を覆すのは無理だ。


濁流には抗えない。


いずれ治水工事で納めるにしても、治水には時間が掛かるのが常識だ。


返事する順番もなんとなく決まっている。


積極的な豹娘、引いてる狼娘、幼い灰色エルフ娘の順だ。


「これも今更だけど自己紹介とかしてみようか。」


三人の間にまだ、序列や優劣はない。俺から自己紹介して、あとは誰もが納得する感じで話を回そう。


MCスキル・・・は無いか。


交渉スキルがそれかな。


取得を真剣に検討しよう。


「まずは、俺ね。ジン・サカキ・クルーズ・ブレイド。

 呼び方は、あとで決めようか。

 光魔法と風魔法を少し。あとは鎚が使えるかな。」


いろいろ端折って自己紹介をする。


「好きなものはかわいい女の子と、きれいな女性に旨いもの。

 巨乳に美乳に貧乳に美尻。

 嫌いなものは人の形をしたクズに人付き合い。

 貴族によくいる自分に実力がないのに七光りで威張る虫。

 あと俺はどうやら、陸人族ってやつらしい。」


続けろとばかり俺の左側にいるイリエラを見る。


批判や文句はあとでまとめて受けよう。


ほぼ初対面の緊張感だけ無くなれば何とかなる。


俺の詐術スキル(入手予定)で全員を騙くらかしてやるんだ。


「イリエラ・ツェラーと申します。イルとお呼びください。

 黒豹の獣人でございます。

 得意なものは槍と短剣と弓。もっと得意なことは誘惑と篭絡。

 苦手なものは貧乏暮らし、好きなものは夜までお待ちください。お見せいたします。

 嫌いなものは浮気をする殿方です。」


キャラクター出すぎだろう。


貧乏については冗談だと思いたい。


浮気については、言及を避けたい。


まずは定義からとか長くなる。


会話、接触、手をつなぐ、のみにいく、二人きりになる。


日本では浮気の定義が幅広すぎるのよ。


あとで個別面談ということでお願いしたい。


日本には浮体うわからだとか○フレとか名状しがたい、いろいろな関係があるのよ。


その辺後で聞くから。


聞くから今だけは、そっとしておいて。


というか俺が自己紹介したジャンルについて話すことになったのね。


なんとなく時計回りに発言する感じになっているので、サミュエルを見る。


「サミュエル・ウォルブズと申します。白狼の獣人です。

 剣と盾が少々使えます。

 好きなものは、血の滴るレアに焼かれた骨付き肉と・・・甘いもの。

 嫌いなものは、陸族人のナリをした大多数のウジ虫ども。

 それにすこしばかり殿方が苦手でございます。」


言葉に執念のような凄みがあるよ。


怖い。


「付け加えるならば、一刻ばかりの間に三人も女奴隷を買う殿方は想像の範疇外です。

 光魔法の実力も見せていただきましたが、はっきり言って化け物です。

 手を縛られて一人きりで百匹のオークに囲まれるくらいの恐怖です。」


相変わらずだ。


いろんな望みはかなわなそうだ。


つけたしのあれもなんだかアレだ。


嫌われているんだろうなぁ。


落ち込む。


ギャートルズ肉とパイはコイツの趣味か。


ならあのサラダはなんだろう。


足して平均、じゃなくて肉食+女子+○○って感じで、ぜんぶ足しただけだったんだろう。


「じゃあ次は、ヒルダ。」


あっ勝手に略しちゃった。


名前もまだ聞いてないのに。


契約書見たでごまかせるかな。


「ヒッ、ヒルデガルド・フォン・シルフィです。

 ご主人、お兄ちゃんには命も、それ以外も全部助けていただきました。

 お兄ちゃんは私の全てです。

 斧が使えるだけで、エルフなのに、ろくにっ」


言葉に詰まる、目には涙が今にもこぼれるくらい溜まっている。


「ろくに魔法も仕えませんが、心も身体も全部お兄ちゃんのものです。

 す、捨てないでください。」


全依存ありがとう。


でもそうじゃないんだよ。


ヒルダの元々の状態を知っている二人は何も言わなかった。


冒険者経験があれば、あれは、死人と同義の状態だったことが分かるのだろう。




◆◆◆




「一応、うちらの関係を整理しておこうか。俺は君達を買った。

 君達は俺の奴隷だ。そこまでは良い?」


「「「はい。」」」


コクコク。


みんな頷く。


よしよし。


「でも俺は、奴隷制に賛成ではない。

 奴隷を買った俺が言えた立場じゃないのは分かってる。

 でも、」

 

見回すと黙って聞いている。


「この世界から奴隷制をなくす。

 なんて大それたことは俺にはできないだろう。

 けど、俺の守備範囲内に関しては、神も悪魔も王も誰だろうが、意見は許すが好きにはさせない。

 だから、自分を奴隷だと思わずに俺と接して欲しい。」


崇め奉られて、疎外感を味わうなんて嫌だ。


「さっきも言ったけど理想は恋人関係ね。

 それと安定とはかけ離れた生活になる。

 それも良い?」


「「「はい」」」


コクコク。


またもみんな頷く。


みんなこんなに素直だったろうか。


理解力が悲しい娘はいないようだ。


たぶん。


皆が笑顔なのが救いだ。


「俺の敵に回ったら、盗賊団だろうが貴族だろうが王国だろうが、こっちにちょっかいかけてくるなら、全部追い払う。殲滅する。

 生きていることを後悔するくらいの仕返しをする。

 命令で仕方なく従ってた一兵士でもそれはかわらない。

 右の頬をぶたれたら左の頬を差し出す、んてことはしない。

 やられたら、もう二度とやりたいと思わないくらいに叩きのめす。

 むしろやられないために武装することもやぶさかでない。

 ってのが俺の主義。

 それも良い?」


コクコク「「「はい」」」


引かない君達に俺は弱冠引いてるけど、俺の行動方針を知らないと、俺の思うとおりに動いてもらえないかもしれない。


たとえば見せられない○○をするためにちょっと席をはずせとか。


「で、おれは、君達を大勢の中から選んだ。

 大事なことなんで二回言います。

 君達は俺が選んだ大切な人たちです。

 なにがあっても守ります。

 君達以外は今のところ考えられないです。」


コクコク「「「はいっ!」」」


弱冠涙目な娘もいるけど、それは成功なんだと思う。


「それに、俺は、ぶっちゃけ他の人とのやり取りが苦手です。

 君達以外の誰とも話さないですむならそうしたい。

 引きこもりの賢者って仕事があれば、即効で応募する。位に。」


「「「はい。」」」


弱冠熱量が減った気がする。


「俺を知ってもらわないと、信頼とかを求めるのは間違ってるだろう。

 情報もなしに信じろなんて世迷言はおれは嫌いだ。

 それに俺がどう思おうと、奴隷と主人の間で誰も不満の無い関係なんてありえないだろう。

 契約書で縛られてるんだし。」


あえて投げやりな感じで言う。


「俺は、常識も知らないし従う気も無い。だから好きなように生きる。

 神だろうが悪魔だろうが誰の言うことにも従わない。

 勘案はするけどな。

 それが嫌なら言ってくれ。

 確実に解放するとは言え無いけど、善処する。」


「「「はい」」」


熱量は三者三様だった。


まだ午後が始まったばかりだし、みんな十代前半だ。


お互いに理解していく時間はあるだろう。




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