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第18話

契約は奴隷の肌に押し付けた石の上に、ご主人様の血を垂らした契約書を押し付け、でかい判子みたいな物をその上に押し付けて、変な詠唱をして終了だ。


二人の美女は晴れて俺の奴隷となった。


契約書は、契約が済むと消えてしまった。石に封印されるっていうことらしい。


判子は何かってきくと


「魔道具だよ。すっげえ高いんだから触るなよ。」


付与魔法で奴隷化できる道具らしい。


それがあれば寝ている娘を奴隷にし放題じゃん。


付与魔法覚えようかな。(鬼畜)


「そんなうまくはいかないよ。

 少なくとも同意がなければ契約はできない。」


最後の良心だな。


「噂では拷問でボロボロにして、正気をなくしてから無理やり契約された王女様もいるらしいけどな。」


さらっと怖いことを言ってくれる。


「あと、冒険者ギルドで手続きしとけよ。忘れると脱税罪で牢屋行きだぞ。」


いろいろご心配をおかけいたします。貴重な情報は無駄にはしません。


二人には買ったコスチュームの一つに着替えてもらって商館をあとにする。


バイク乗りの憧れのピタピタ皮ツナギといえば良いのか、三代目の怪盗の恋人的な峰さんといえば良いのか、とりあえずすごくセクシーなあの格好だ。


商館からの帰り道。


といっても家も無ければ今夜の宿もまだ決まっていないのだが、宿屋の集まっている方へ向かって三人で歩いている。


俺が先頭、二人が後ろを付いてくる。


奴隷の市が立っている通りだ。


二人はあまり、あちこちを見ないようにしている。


自分の境遇と重ねあわせでもしているのだろうか。


朝、商館に行く前にチェックしていた露天商の前で立ち止まる。


勝手に足が止まって勝手に視線はそちらへ向く。


プラチナブロンドの髪の娘。


魔眼で灰色エルフだとか訳の分からない種族だと確認された娘。


朝はうずくまっていたが、今はもう倒れているといったほうが正しい。


地面に身体を横たえている。


このままじゃ、今生きていても今日の帰り道で確実に死ぬんじゃだろうか。


魔眼で確認する。


状態が「余命数時間」に変わってる。時間が無い。


「この娘をください。急いで。」



◆◆◆



俺の後ろでは、急に立ち止まって瀕死の少女奴隷を見つめる俺を見守っていた二人が、眼を見開き、ドン引きという顔で後ずさった。


それはそうだろう、傷だらけで、明らかに瀕死の少女の奴隷を買おうというのだ。


二人も奴隷娘を買ったその日のその足で。


その二人も、五体満足ではない。


明らかに異常性格者か異常性愛者に思われただろう。


二人の奴隷にも、露天商にも、周りで聞いていた人にも。


でも今はそんなことはどうでも良かった。


俺がここで買わなかったら、もうすぐ死ぬだろう娘。


朝、あの場で買って魔法で治療しておけばここで瀕死で倒れていたりはしなかっただろう娘を見ていると、なんだかたまらなくなってしまったのだ。


大銀貨を露天商に渡し、契約を急がせる。契約書も流し読みだ。


黄色いビー玉を露天商に渡す。場所は額を指定する。


露天商も死ぬ前に売ってしまえと思っているのか手続きはすばやい。


ものの五分ほどで三人目の奴隷を手に入れた。


「じゃあ、貰っていきます。」


露天商に声をかけ、少女を抱きかかえ(いわゆるお姫様抱っこだ)歩き出す。


いい見世物だ。


歩きながら光魔法の[初級回復]をかけると、少女の顔にほんの少し血の気が戻り、同時にドン引きしていた二人の奴隷もあわてて後をついて歩き出した。


一番近くの宿に値段も見ずに入る。


「四人部屋はある?」


そこそこ高級な宿だったらしい。


四人で朝食付き一晩三千ゴル。


高いが今は時間が惜しい。


もう慣れ始めたドン引きの顔に金を放り投げ、部屋に入る。


[リフレッシュ]を少女と少女の服にかけ、ベッドに寝かせる。二人は部屋に入ってこない。


何を勘違いしているんだ。


それは今じゃない。


「はやく、部屋に入って。」


恐る恐るといった足取りで部屋に入る二人。


二人が部屋に入るとドアに閂をする。


顔を青くする二人。


違うんだ。


だけど今は一刻を争っているのだ。


説明している暇は無い。


「あのぉ」


何事かを口にしようとするイリエラを尻目に、俺はベッドに横たわる少女に光魔法の[解毒]、光魔法の[状態異常解除]を続けざまにかける。


[回復]をかけても、原因を除去しなければすぐに体力は失われていくだろうことは想像が付く。


効かないことすら考えられる。


少女の身体は昼間でも確認できる光で包まれる。


朝の容態からは悪化しているだろう。


破傷風にもなっているかもしれない。


少女の顔と無くなっている右腕に掌をあて、光魔法の[治癒]もかける。


最後は光魔法の[中級回復]だ。ベ○イミではない。


欠損すらも治すまばゆい光が部屋中を包む。


光が消えると、そこには落ち着いた顔で眠る五体満足の少女がいた。


無かった耳は、エルフ特有の長いものよりは少し短い耳が、同じく無かった右腕は、少し色が薄い気はするがあるべき場所にあった。


逆にあったはずの傷は無くなり、つぶれていた目は閉じられてはいるが、問題は無さそうに見える。


連続で光魔法をかける俺を、さっきのドン引きとはまた違った、目の見開き方で二人は俺を見ている。


誤解は解けたのだろうか。


「さて、緊急の要件は間に合った。次はと。」


俺は、次にどっちを治療しようかと二人を見る。


「どっちからがいい?」


希望を聞いてみた。


二人は顔を見合わせる。サミュエルはフルフルと小さく首を横に振ったように見えた。


「分かりました。では私が。」


イリエラが前にでる。


早く治療してもらいたいのだろう。


「うん。じゃあベッドに横になって。」


俺はそういうと[リフレッシュ]をかける。


イリエラは、一瞬ビクッと身体を震わせるが、黙ってベッドに向かって歩いていく。


服を脱ぎ始める。


なんかおかしい。


「おいおい」


「初めてが、人の見ている前というのは恥ずかしいですが。

 やさしくお願いします。」


うん。しっかり誤解されているね。


[リフレッシュ]がいけなかったのかな。


今日寝るベッドなんで汚したらいけないと思って。


あっ初めてなんだね。


「いや、違うんだ。違わないけど違うんだ。」


「なにがでしょうか」


イリエラはなおも服を脱ぎ続ける。


上半身はもう隠す布は無い。


「いや、二人も治療したいんだけど。」


「「!」」


二人は今日何度目かの驚愕の表情を浮かべた。


人相変わっちゃうんじゃないだろうか。


ちょっと心配よ、俺は。


「これから・・・」


「うん。治療をするからベッドに横になってね。」


「お慈悲をいただけるのではないのですか。」


両腕で隠している聖山がこぼれそうになっている。


お慈悲を与えたくなっちゃうから強調しちゃいけません。


「お慈悲がなにかってことは、置いておいて。

 いや、ある意味お慈悲でいいのか?」


「やはり」


「いやいや。純粋な治療よ?」


イリエラとなんか会話がかみ合わない。


そんなに襲われたいのだろうか。


チョッと待っててね。


そのうちすぐに希望に沿えるようにするから。


サミュエルは最初の驚愕からまだ立ち直っていない。


両手を口にあてて、固まったままだ。


頭の固い娘だ。


「コレカラ?」


イリエラが急に片言になったぞ?


「ベッドニネテ」


うんうん。


「スル?」


治療をね。


なにか難しいことを言ったのだろうか。


なぜ理解されぬ。


むぐぐぐぐ。


「ご主人様は、まだ魔法がお使いになれるのですか?」


サミュエルが後ろから恐る恐るといった感じで聞いてくる。


「まだ余裕あるよ。二人を治すくらいなら大丈夫。」


「「!」」


驚愕はもういいから。


どうやら光魔法の連続発動ってのは、ありえないくらい珍しいらしい。


治療士すら珍しいのに、そのうえ超が付くハイスペック。


そりゃ驚愕するわな。


ようやく二人にも治療をすることができ、[リフレッシュ]もかけ、みんな五体満足のキレイキレイになった。


しかし、なんかLP消費量以上にどっと疲れたよ。


二人は、うれしそうにはしゃいでいるから、俺もまあ満足なんだけど。


こんなときは温泉にでも入ってゆっくりと休みたいなぁ。日本での最高の癒しを思い出す。


そうだ、公衆浴場の割引券をコマガから貰ってたんだ。


エルフ少女が目覚めたらみんなで行こうな。ぐふふふふ。


でも、エルフ少女は確か栄養失調だったはず。お湯に入って平気だろうか。


軽くなにか食べてからのほうがいいか。あと日本から持ってきた栄養剤を大量に飲ませよう。


そうだ。エルフ少女の服がない。


二人は着替えがあるが、エルフ少女だけは俺が抱きかかえてきたときの服しか無いんだった。


この際、俺は看護に残るって名目で、買い物全部任せちゃおうかな。


二人とも契約で逃げれないはずだし。おつりのチョロマカシ位は大目に見よう。


下着売り場に行く拷問に比べれば、多少のお金などものの数ではないわ。


お金。あんま無いけど。


「ちょっといいかな。」


二人を呼ぶ。


「俺は、まだこの子についていなきゃいけないから、二人には必要なものの買出しをお願いしたいんだけど。」


「「はい。」」


「まずは、この子の着替え、食べ物をチョッと多めに、君達三人分の靴や服や下着を数着。

 あとはなにか必要なものあるかな。」


「今すぐには特にないかと。」


俺への対応はイリエラの担当になったのだろうか。


回答はすべてイリエラがしてくる。


サミュエルの声ってあんまり聞いてない気がする。


「じゃあ着替えは、商館にいって二人と同じ服をこの子のサイズで買ってきて。後は任せるから。」


手元に大銀貨三枚を残し、残りの硬貨を二人に全て渡す。一万数千ゴルはあるはずだ。


服がやっぱり一万ゴルとして、残り数千ゴル。数万円分あれば食料と安い靴や下着くらいは多分買えるだろう。


おぉ手元に大銀貨三枚しかなくなったぞ。


三万ゴルか。


装備整えるのには到底足りないな。


生活費も必要だし。


ここが一泊三千ゴルだったから、明日にはもっと安いとこに移るとしても、早く元気になってもらって稼がなきゃ。


「自己紹介なんかもこの子が目覚めてからまとめてするから、早めに戻ってきてね。」


チラリと少女に目を走らせると


「かしこまりました。」


の言葉と共に二人は部屋を出て行った。


やっぱりサミュエルは話してくれない。






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