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第17話

白狼の獣人の娘が部屋に入ってくる。


松葉杖のような杖を突いて、バランスを取りながら一人で歩いている。


ここで治療はしたくないので、宿まで歩いていけるのはありがたい。


ソファーに座りはしないようだ。


「ご主人様候補だ。陸人族の言葉で挨拶しろ。」


コマガが狼の娘に促す。


獣人語ってのがあるんだろうか。


あるなら、俺にわからない言葉で話さないように契約に盛り込んでもらう必要があるかもしれない。


「サミュエル・ウォルブズと申します。」


「俺はE級冒険者なんだけど、一緒に冒険者をやろうって言ったらどう?」


「はい。剣と盾は多少使うことができましたが、今はこの有様ですので、不可能ではないと思いますが、ご迷惑をおかけしてしまうと思います。」


冷静に分析している。


だが俺に買われたくなくて言ってたらどうしよう。


愛玩目的でも良いかってのは一番聞きたいが、俺には聞く度胸はない。


「ちなみにその怪我はどこでどうやって?」


状況を聞けば、多少なりと実力がわかるんじゃないかと思って聞いてみた。


「はい。故郷の友人と、この町の近くの迷宮を探索していましたところ、陸人族の探索者パーティに襲われました。

 後ろから魔法の攻撃を受け、私以外は全員殺されました。」


いきなり地雷踏んじゃったよ。どうとりつくろおうか。


「陸人族をどう思う?」


「全体的にはどちらかといえば嫌いです。

 もし私どもを襲った冒険者と次に出会うことがあれば、なるべく長く殺さずに苦しめます。

 生きていることを散々後悔させてから、男色奴隷として売り払います。」


うわぁ。なんか病んでる系か?


怖いなぁ。


でも俺でも同じ立場だったらそう思うかもな。


不意打ちじゃ、油断はあったかもしれないが、戦いの実力が無いってことではなさそうだな。


「俺に買われるとしたらどう思う?」


「はい。冒険者としてはご迷惑をおかけしますでしょうし、他に手に職もありません。

 愛玩用としては、可愛げが無いため、すぐにお嫌になられてしまうでしょう。

 それで捨てられるくらいなら、買わないでいただきたいです。」


冷静なのは良いが、ちょっとツンデレのツンがきついかな。


デレはどこに?


でも全然有りだ。


美人さんは正義だし。


「わかりました。ありがとうございます。」


狼人の娘が部屋を出ると、続いて豹人の娘が部屋に入ってくる。


やはりソファーには座らない。


「ご主人様候補だ。陸人族の言葉で挨拶しろ。」


さっきと同じようにコマガが促す。


「はい。イリエラ・ツェラーと申します。よろしくお願いします。」


さっきと同じように聞いてみる。


「俺はE級冒険者なんだけど、一緒に冒険者をやろうって言ったらどう?」


「はい。私は左手がありませんが短剣が得意です。黒豹の獣人ですので夜目も利きます。

 冒険者としては、お役に立てると思います。」


おっと、こっちは積極的だ。


「ちなみにその怪我は?」


「はい。一年ほど前、冒険者として活動していた時に、ゴブリンの群れに遭遇しました。

 ゴブリンと戦っている最中に、急に現れたファイヤーオーガーにやられました。

 防ごうと構えた盾ごとやられました。

 回避という選択をするべきだったと、自分の未熟を後悔しています。

 そのときに治療を受けるために自分を売りました。」


そこまで聞いてないよ。ためになる情報だけどさ。


合理的な娘なのかな。


それに、もしかしてそれって、あのファイヤーオーガーだったり、しないよね?


「俺に買われるとしたらどう思う?」


「はい。ご満足いただけると思います。」


いや俺がどう思うかじゃなくてさ。


しかし頭を下げたときの胸元は暴力だ。


たぶん計算だ。


しかし抗えない何かがある。


スタイルが良いのは正義だ。


もちろん世の中に正義はたくさんある。


「分かりました。ありがとうございます。」


豹人の娘は、最後に流し目をくれると部屋を出て行った。


「で、どっちにするか決まったのか?」


コマガが分かりきった質問をしてくる。


「はい。両方お願いします。」




◆◆◆



「初めての奴隷購入で二人。しかも傷物ばっかりって・・・上級者すぎるだろ。」


コマガは呆れたようにつぶやく。


うるさい。


俺の趣味に文句でもあんのか。


「できれば誕生日とE級昇級のお祝いに勉強していただけると助かるんですが。」


買値減少1のスキルもあるし、多少値引いてくれるよね。


路上生活はしたくないよ。


貧乏なの。


「二人で三五万か。

 傷物だし、五パーセント。いや、お祝いだ。

 二万引いた三三万でいいだろう?」


「助かります。

 それと彼女らの服とかって、どっかで買ってこないといけないんですよね。

 あの格好で連れまわすのはちょっと嫌なんですが。」


「なんでだ?減るもんじゃ無し、別にいいだろう。」


「減ります。」


即答である。


俺の女の太股を衆愚に晒すなど考えられん。


「商館じゃ売ってないんですか?」


期待せずに言うとコマガは、ニヤリと笑った。


「さすが上級者。まさか知ってるとはな。」


なんのことやらと思っていると、紐で閉じられた資料のようなものを持ってくる。


「ここに描いてある絵の服なら、この商館で売っているぞ。サイズも揃っている。」


最高の笑顔でサムズアップするコマガ。


この調子だとケツの毛までむしられそうだが、資料から眼を離せない十四の昼。


盗んだバイクで走り出したりはしないが。


バイク盗はライダーと認めない。


しかし誰か俺以外に日本から来て変な文化伝えてないか?


この資料をみ見るかぎりでは間違いない。


しばらく忘れてたけど、犯人はあのオタク女神じゃないか?


あの蔵書からすると、重要参考人どころかほぼ間違いなく犯人だろ。


まあ良い。


今夜神コールで「グッジョブ」と伝えよう。


一着五千ゴル。


かける二人。


かける二種類。


値引いてもらった分がそのままコスプレ、もとい、服で消えた。


後悔はしていない。


わが人生に悔い無しだ。


いや、まだ見てない。


してない。


悔いだらけだ。


一着約五万円なり。


女物の服って高いのか足元を見られているのか。


靴までセットなのはありがたいけど。


下着は一着サービスでつけてくれるとのこと。


ありがたや。ありがたや。


でも一着じゃ足りないよね。


連れて買いに行くのか・・・下着売り場。


行きたくねぇよぉ。アマゾンは無いのか。


「いつでも来い。新作は大体三十日ごとにカタログに載る。」


ありがとうございます。


贔屓にさせていただきます。


三五万ゴルを支払うと、コマガが羊皮紙を持ってきた。


契約書と注意事項と書いてある。


一般的な奴隷契約の雛形らしい。


自傷・自殺の禁止。ご主人様の言うことは絶対。逃避の禁止。ご主人様への敵対行為の禁止。


なんてことが契約書に書いてある。


契約に反するとどうなるかとか、主人の義務とかなんかが注意事項に書いてある。


読んでいると狼の娘と黒豹の娘が部屋に入ってくる。


それぞれの手には、藤みたいなので編んだ寅さんバッグを持っていた。


あの服が入っているのだろう。


「このたびは、私どものような傷物を引き取っていただき、ありがとうございます。

 誠心誠意お仕えいたしますので、末永くかわいがってくださいますようお願いいたします。」


そろっての堅苦しい挨拶だが、奴隷としてはマストな挨拶なんだろう。


大丈夫。すぐに治しますからね。


待っててください。


「それじゃあ、さくさく進めよう。

 契約書に書いてある以外になにか盛りたい特約はあるか。」


手馴れた様子のコマガがいう。


これから奴隷契約というものをするらしい。


「はい。移動範囲の規制は外してください。

 それから主人への敵対行為ですが、物理的魔法的に限定してください。

 具体的には反抗的な言葉くらいは言えるようにしてください。」


コマガも二人の奴隷少女も驚いた顔をしている。


必須の内容を変更したいなんて馬鹿は今までいなかったらしい。


「いいのか?確かに命の危険は無いから可能だが、たぶん扱いづらくなるぞ。」


心配してくれてありがとう。でも「ハイ」の肯定ばかりでは、安らげない。普通に会話がしたいのだ。


「かまいません。

 身体は縛れても心や思考は縛れないってのが信条ですんで。」


「ふん。なんか思い入れのある宝石や石はあるか?」


奴隷契約に必要になるらしい。


その石に契約書を転写して、奴隷の首より上のどこかにつけることで契約が有効になるらしい。


外れたらどうなるんだろう。


他には首輪や腕輪なんかでもいいらしいが、服などで隠してはいけないものらしい。


「顔とかにつけたら、顔を洗ったときに取れません?}


不安そうに聞いた俺に、コマガは、


「心配性だなぁ。ハゲるぞ。」


余計なお世話だ。


「基本的に外れないし、無理やり外しても契約は有効だ。

 ただ、基本以外の特約部分の縛りはゆるくなるけどな。

 条文の始めの方にあるほど強い縛りになる。

 無理やり外したからっていきなり襲い掛かられるようなことはないさ。

 多分。」


多分かい。


「じゃあイリエラさんには、この石を左目の下に、涙ぼくろって分かります?そんな感じで」


淡い緑色の小さなビー玉を渡す。


「サミュエルさんには、この石を右目の下にイリエラさんと同じ感じで」


淡い水色の小さなビー玉を渡す。


「瞳の色に合わせた宝玉なんて、乙女かスケコマシのどっちかだな上級者。」


コマガが冷やかしてくる。


「やめてくださいよコマガさん。それに上級者ってなんですか。」


「初体験でSMするようなやつをオトコって呼ぶ。

 初体験で乱交するようなやつを上級者って呼ぶ。

 結婚しても初体験しないようなやつを超級者って呼ぶ。

 初体験を同性を含めて乱交するようなヤツを神と呼ぶ。

 この辺りでずっと続く言い伝えだ。

 お前はこの商館ではこの先上級者って呼ばれるよ。」


いろんなところに失礼で迷惑な言い伝えだなぁ。


「もういいですよ上級者で済むなら。

 それ以上は勘弁してくださいね、絶対。」






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