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第13話

出来上がったのは「プリン的な何か」だったが、この世界には無かったであろうデザートにジェシカちゃんは大喜びだった。


動物のミルク+卵黄+砂糖。混ぜたものを器に入れて煮る。


簡単なレシピともいえないようなものをジェシカちゃんと奥さんに伝える。


「商売になるんじゃないですか?」


冗談で言った一言に、奥さんとジェシカちゃんの目が妖しく輝く。


「他にもあるでしょう?」


台所に三日も監禁されるとは思わなかった。


奥さんがレベル2、ジェシカちゃんもレベル1の料理人スキルがついていた。


日本から持ってきた「料理教本デザート編」という雑誌も没収されそうになったが、かろうじて守りきった。


イラスト付きの写本を作らされ、さらに三日監禁は伸びた。


福引のお絵かきセットが思わぬところで大活躍だ。


神に感謝すると、アノ残念なの達に届きそうなので、もっと違うなにかに感謝することにした。


アロン名物プリンプリンの噂が大陸中に広まったのは後日の話。


この行動のせいなのか俺のステータスに変化があった。


料理人、画家、伝道師のスキルが付く。


なんに使えるんだこのスキル。




◆◆◆




デスタの町までは、徒歩で三日ほど掛かるらしい。


ってことは、野宿が二泊ってことになる。


つくづく一人では何もできない。


信用できるツレが欲しい。


そのツレを奴隷という形で得ようとしての移動なのだが、それすらままならない。


人間一人では生きていけないんだな。と痛感する。


信用できる友人なんかを作れれば問題ないのだけれど、残念ながら人付き合いスキルは持っていない。




「奴隷を買えると聞いてきたんですけど、どこにいけば買えますか」


町の門番に第一声で聞いたらドン引きという顔をされた。


失敗した。


欲望が暴走してしまった。


二日も寝てないからテンションがおかしいのは自分でも分かる。


それに俺でもドン引きするだろう。


訪ねて来た十三歳の子供の第一声がこれじゃ。




奴隷商には店舗持ちと、市が立つときだけ露天商として商売するのと二種類あるらしい。


デスタの町に着いた翌日が、ちょうど市の立つ日らしい。


幸運度が低い割りにラッキーだ。


町の北側に商館があり、その手前の通路いっぱいに市が立つとのことだ。


雨が降ったらどうするんだろうね。


商館って店舗持ちの方が、高級な奴隷。


露天商の方が、廉価な奴隷を取り扱っているとのこと。


「値段や奴隷の質が大分違う」


と門番のオッサンはドン引きしつつも教えてくれた。


なんかモゴモゴしてて聞き取れなかった部分があるのは残念だ。


商館にいる高級な奴隷ってのは、能力が高かったり若い美女の、いわゆる需要が多く供給が少ない有能で高価な奴隷。


供給は多いが見た目や能力が残念な安さメインの奴隷なら露天商。


といった住み分けができているらしい。


店舗で売られている奴隷は、ある程度教育も施しているらしい。


付加価値をつける商法か。


露天の方は、普段は近くの農村で農業に従事させていていたり、町の防壁建築や水路増築などの仕事をさせているらしい。


門番でも知っているってことは、防壁建築とかで使われているのを見たのだろうか。


ただ養っているだけでは、維持費で赤字になるのだろうし、合理的だ。


経年劣化で価値の下がる奴隷もいるだろうし。


商館に入るのはチョッと難易度が高い。


なぜなら、建物の中が見えないから。


明日、市がたったら露天の人に色々聞いてみるかな。


と思っていたら、商館の外壁にはどんな奴隷が、幾らで買えるのかの大体の金額などの情報が分かる、掲示板みたいなのがあった。


金額欄は表示を変えられるように木の札でできている。


日本のガソリンスタンドを思い出す。


  戦闘用奴隷(陸人族・男) 二〇万ゴル~   (女)五〇万ゴル~

       (森人族・♂) 一〇〇万ゴル~  (♀)時価

       (地人族・♂) 五〇万ゴル~   (♀)二〇万ゴル~

       (獣人族・♂) 五〇万ゴル~   (♀)二〇万ゴル~

  魔法使奴隷(陸人族・男) 二〇〇万ゴル~  (女)三〇〇万ゴル~

       (森人族・♂) 四〇〇万ゴル~  (♀)時価

  愛玩奴隷 (陸人族・男) 一〇万ゴル~   (女)五〇万ゴル~

       (森人族・♂) 時価       (♀)時価

       (地人族・♂) 取り扱いなし   (♀)二〇万ゴル~

       (獣人族・♂) 取り扱いなし   (♀)二〇万ゴル~

  勤労奴隷 (陸人族・男) 一〇万ゴル~   (女)二〇万ゴル~

       (森人族・♂) 時価       (♀)時価

       (地人族・♂) 五〇万ゴル~   (♀)六〇万ゴル~

       (獣人族・♂) 一〇万ゴル~   (♀)二〇万ゴル~


翼人族の取り扱いは無いようだ。


エルフの♀ってやっぱり高いんだろう、軒並み「時価」だ。


日本の寿司屋のイメージが頭をよぎる。


トロやアワビ、ウニなんかの高級品。


一番安い卵焼きとかアジとは桁が違うお値段のイメージだ。


一度だけボーナスが出たときに「時価」のある寿司屋に行ってみたけど、アジ一貫一〇〇円。アワビ一貫一五〇〇円だった。


腰が抜けかけた。


いくつか商館があるが値段はどこもほとんど同じだ。


「~」にすごい意味がありそうな気がする。


だって上限が分からないんだよ。


怖ぇよ。


つか同じジャンルでも種族によって段違いだし、同じ種族でも目的によって段違いだな。


その差が二〇倍以上って・・・


「高っけぇ」


高い。高すぎる。


最低でも今の全財産の五倍以上する。


スキルや見た目の保障付きっていっても、一番安くても多分一〇万ゴル。


ジェドさん家なら家族三人で一五〇日暮らせる金額だ。


俺的日本円換算では、一〇〇万円~って感じ。


あれっ? 安いのか。


あんまり金持ってないので、安いって言葉は御幣があるが。


人の価値が一〇〇万円って、日本の感覚ではありえない。


それと、このジャンル分けって、スキルを確認してやっているのか、それとも自己申告や見た目なんだろうか?


奴隷商は鑑定スキルがあれば非常に有利だろう。


でも、そもそも鑑定スキルを俺以外の人は持っているのだろうか。


それとも他に確認する方法があるのか。


俺の希望で言えば、戦闘用奴隷か魔法使奴隷となる。


野営中に交代で不寝番とかしてもらうための奴隷だ。


戦力としてカウントしたいのだ。


店の留守番を任せるわけじゃないから、勤労奴隷じゃないだろう。


愛玩奴隷もすっごくすっごく惹かれるが、不寝番じゃなくて不寝で不審な何か別なことになるだろう。


襲撃への注意力なんて「<(自主規制)>」の集中力に比べるまでも無い。


たからこそ今じゃない。


もっと成功してからだ。


他にメンバーが何人かいれば、二人くらいそんなことしてても大丈夫になるだろう。


見ていろよ。俺はやるぞ。


魔法使奴隷は戦闘用奴隷の数倍から数十倍のお値段だ。


魔法を使える人の割合が少ないから希少価値があるのだろう。


奴隷まで堕ちてくる人ともなれば、もっと数が少なくなるんだろう。


確かに魔法が使えれば戦うのは楽になる。


とはいえ高くて手が出ない。


そのうえ俺が使える。


欲しいのは万能型か前衛型だ。



しかし、希少な技術を持っている高給取りが、なんで奴隷に堕ちてるんだろう。


俺が奴隷を商館で買うとしたら、安めの戦闘奴隷で獣人か地人の♀(二〇万ゴル~)だろう。


男の奴隷なんていらん。


それにしても手持ち金額ではとても足りない。


俺の全財産をはるかに上回る奴隷が、どの程度の能力を持っているのか是非見てみたいな。


あとは、露天商か。


掘り出し物があればいいけど、どうなんだろう。


魔眼で片っ端から見ていけば、掘り出し物見つけられるかもしれないな。


それより、奴隷を買うに当たっての法律とか、規制とか、義務権利とか知りたいことはすっごくいっぱいあるぞ。


そのために拠点変えてんだから、後には退けないぞ。


でも商館に入るのはやっぱりハードルが高い。


入口だって日本のコンビニみたいにガラス張りで中の様子が伺えたりはしない。



重々しいでかい両開きのドアだ。


うん。露天商の人から情報収集しよう。






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