表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/125

第一章

これで投稿できたのか?

「ハァハァ、くっ」


呼吸が苦しい。


二十年前であればこのくらい走ったところで息が上がることなんかなかったのに。


と無駄なことを思う。


それに古傷の左膝がそろそろ限界、というくらい痛む。


あの角を曲がれば目的地の神社はすぐだ。


あと少し、あと少し持ってくれよ俺の膝。




夕方の街中を走る。


しかもドでかい買い物袋を二つも提げて全速力で走る三十代半ばの男なんてそりゃまあ目立つ。


ちょいちょい後ろを振り返り様子もまるで何かから逃げているようだ。


万引きではなく、どちらかといえばレジから強奪的な何かのようだ。


実際男は逃げていたので周りの奇異の目を気にしている余裕はなかった。



逃げる男は境木神司さかきしんじ三十五歳。


両手に下げる大荷物はさっき福引で当たった景品の山だ。


本当に久しぶりのニ連休の初日、金の無い俺はかねてから興味のあったとある分野について知識を高めるため・・・


正直に言うと暇つぶしをするために図書館で最大貸出しの十冊の本を借りてきた。


せめて払った税金分は公共福祉施設は使わないとな。


図書館で本を借りた帰り道で、とあることにびっくりして立ちゴケしたバイクを修理に出したら、なじみのバイク屋の親父さんから福引券を八枚もらった。


「不幸なお前さんじゃどうせハズレのティッシュだろうが・・・必要だろ(笑)。

 それとももういらなくなったか?」


というなんともふざけた台詞も一緒だったがまあいい。


そういえば確かに俺は不幸だ。


俺の前の人で売り切れ、ドラマを録画したら緊急ニュースで第一話が録画できない。


卵を買えばパックの半分が割れてる。


今朝、靴紐も切れた。


犬のウンTを踏むなんていつものことだ。


小学校のフォークダンスは人数が合わず男と。


誕生日やクリスマス、バレンタインデーは風邪やインフルで必ず休んでた。


俺にだけ鳥糞攻撃。


全員分あるはずのものが俺にだけ無い。


みんなで食べた牡蠣に俺だけアタル。


休んだ隙に学級委員長。


疲れて寝落ちした翌日は抜き打ちテスト。


財布には穴。


シャーペンの芯はボキボキ。


六人で行ったファミレスでは俺だけ水が来ない。


それが日常だ。


だからなんだ? 


不幸には慣れている。


慣れればそれが日常だ。


特に不幸とは思わなくなる。


それに俺は貧乏だから貰えるものなら何でも貰う。


街で配っている広告入りティッシュはその最たるものだから何をかいわんやである(俺だけ渡されないこともよくあるが)。


彼女もいない貧乏な三十五歳(花粉症)。


必要不可欠ですがなにか?




 バイクを店に預けて三軒隣にある福引会場にティッシュを貰いに、じゃない、福を引きに行った。


自慢じゃないがクジなんて当たったことが無い。


宝くじ、ビンゴゲーム、プレゼント交換、もちろん福引もだ。


良くて末等、普通でハズレ。


宝くじで当たった末等三百円の一枚だけを無くした事もある。


それどころじゃない不幸も。


なにか?



  特賞  東南アジア大人のマル秘旅(十五万円相当)

  一等  テレビゲームセット(五万円相当)

  二等  野球セット(二万円相当)

  三等  ソーラー式電子辞書(一万円相当)

  四等  国産マツタケとアワビの美食セット(八千円相当)

  五等  防災セット(六千円相当)

  六等  第四のビール一箱(四千円相当)

  七等  お絵かきセット(三千円相当)

  八等  大人のおもちゃ(二千円相当)

  九等  電子計算機(千円相当)

  ハズレ ティッシュ一箱(八十円相当)

  特別賞 明るい○族計画(プライスレス笑)


ハズレの値段は言わなくてもよくね?


あと何だあの特等と八等は。



アレか?

中年男性をひきつけるめくるめく非合法ワールドツアーなのか? 


微妙に四等と特別賞も気になるが。


なんか微妙に組合長のセクハラ親父が気まました感が漂ってくる。子供も引くだろうに。


いや、一緒に来た母親も別な意味で引くだろうが。




何の期待もせずにクジを引いた。


カラカラカラカラ


何という名称なのかは多分日本人の九割九分九厘知らないであろう、よくあるくじ引きのハンドルを回すと小さな球が出てくるアレである。


お盆と正月と誕生日とバレンタイン等々が一緒に来た。


誕生日とクリスマスの方がふさわしい比喩かも知れない。


いや俺の場合は不幸しかなかったわけだが。


出てきた球は全部違う色だった。


目がチカチカする。


係の人の顔が強張るのが分かる。


二等、三等、五等、七等、八等、九等、ハズレに・・・特別賞。


そりゃそうだろう。


一人にこれだけ一気に持っていかれたらたまったもんじゃない。


大体[当たり]が入っていることを今まで俺は疑っていた。


当たったこと無いからね。


しかし何を幸運の無駄遣いしてるんだか。


   野球セット

   ソーラー式電子辞書

   防災セット

   お絵かきセット

   大人のおもちゃ

   ソーラー電子計算機

   ティッシュ一箱

   明るい○族計画


微妙に使わないものばっかりな気がする。


      野球セット


野球は高校一年生の時に左膝の故障でできなくなった。


本気で甲子園、そしてプロを夢見ていただけにしばらく立ち直れなかった苦い想い出だ。


しかも中身がキャッチャー用って・・・ヘルメット、マスク、レガース、ミット、硬球、バット。


ピッチャーだったのに、キャッチャーセット貰ってもなぁ。


しかも膝の故障で本格的な野球はできない体だ。


野球に限らず走る系のスポーツは全てだが。


それに他のもだ。


勉強なんてしないから電子辞書なんか使わない。


日本ネットタカタなんてお呼びじゃない。


嫁も彼女もいないから家族の計画なんてない。


オカモトさんには妬みしかない。


防災セット。あったら安心だが使わんだろう。


つか使う事態になりたくない。


大人のおもちゃについては言及を避けよう。


お絵かきセットって何だよ。


クレヨンにスケッチブック数冊。


幼児なら喜ぶかもしれんが、こちとら三十五歳のいい大人だ。


学生時代の美術の成績は良かったが今更絵を描く趣味も無い。


バイトに行く前に家に置いてこなきゃなぁ。


と引きつった顔の係りに人に見送られながら、両手に大きな袋二つをぶらさげて家に向かって商店街を歩いていたら・・・嫌なものに気づいてしまった。


日中だというのにそこだけ光が差し込まなくなってしまったような薄暗がり。


そこにわだかまる人だったようなモノ。


壊した膝の手術が終わって目覚めたときから見えるようになってしまったモノ。


あとで聞いたら手術の時に誤って麻酔の量が多すぎてすこしヤバイ状況だったらしい。


当時は「勝手に人を薬中にしくさりやがって」と随分恨んだ。


今では幻覚を見てるのではなくて、それがキッカケで霊能力に目覚めてしまって、人外のモノが見えるようになってしまったんだと思っているが。


なんで自称霊能力者かって?


俺についてきたモノに追われて逃げ込んだ神社に、そのモノが入ってこれなかったから。


そして今、俺はその神社に向かって走っている。逃げている。


境内に入って安心して後ろを振り向く。


なんだ境内に入ってきたぞ。うそだろ?


あわてて境内を本殿に向けて走り出す。


良かった。本殿前の鳥居から先には入ってこれないようだ。


でもこの間までは境内に入ってこれなかったはずだが・・・


驚いたせいか、運動不足で酸素が足りないのか目の前がチカチカする。


クラクラする。


深呼吸しても治らないどころかどんどんひどくなる。


そして・・・



目の前がホワイトアウトした。


気がつくと石灯籠に寄りかかって座り込んでいた。


いつのまにか意識が飛んでいたらしいが、ハッと思い出して鳥居の方を見る。


まだあのモノがいる。


ってことは目は覚めてるんだよな。


と普通の人であれば「?」となるような思いにふけっていると


「ようやく会えたました」


俺のストライクど真ん中よりやや高め。


あわてて手を出したらピッチャーフライを打ち上げて凡退して試合終了してしまいそう。


なくらいの美女が話しかけてきた。


この神社に巫女なんて常駐してたっけ?


なにより・・・その格好・・・


たしか巫女さんって行ったら上は真っ白、下は赤とか紫とかの羽織袴で白い足袋に草履。


ってのが一般的なイメージだ。と思う。


間違ってない。


グローバルスタンダードだ。


でも今声をかけてきたのは、魔都秋葉原のDVD屋に行ってもここまで罰当たりな作品はそうそう無いような格好だ。


シースルーの着物に中には胸にさらしを巻き、同じくシースルーの袴の中には・・・


あれは越中か?越中なのか?ふんどしなのか?


素足に鉄下駄と思しき黒く光る下駄を履いて、手には木の枝。


なのに本人は黒髪ロングのスレンダー長身のお姉さん系美女(推定二十五歳)って。


頭が煮えているのだろうか。


いろいろ残念だ。美人なのに・・・


素材だけならストライク絶好球といってもいいくらいなのに。


本当に残念だ。


しかし、厨ニ病にしても変異種だろう。


いろいろ間違った方向にとんがっている。


残念極まりない。


それより残念なのはこの神社の人事担当だ。


採用基準や服務規程を聞かせてほしいもんだ。


つかこの制服というか衣装を準備した担当者もだ。


祭られている神様はどう考えているのか気になる。


鳥居の前までは侵入を許したとはいえ、俺を追っかけてきたモノが入れないくらいの清浄な空間を作れるくらいの神様なんだろう。


もしこの巫女らしき残念美女が神様の趣味だとしたらチョッと考えてしまう。


「今日はお話したいことがあってお待ちしていました。」


残念美女が俺に話しかける。


「キシャァ~」


話しかける言葉にかぶせるように鳥居の外にいるモノが気色の悪い声を上げる。


俺は思わずモノの方を見てしまう。


「ちっ」


視界から外れた残念美女のほうから、舌打ちするような声と変な圧力を感じた瞬間。


モノは消された。


シャボン玉が割れたときのように壊れて消えた。


いや壊されて消された。


般若的なものを後ろに感じた気がする。


あの美女が般若になったようなアノ恐怖。


「さっ、これでゆっくりお話できますね。」


残念美女がアレをやったらしい。


頭が煮えていて怖い人(美女)と認定した。


まだ投稿の仕方などがよくわかっていないため遅れや突然の消滅の可能性が否定できません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ