第11話「紅蓮の絶叫」part-C
一方で、韓国支部にいたシエラを始めとする援護部隊は既にロシア・中国の動きに気付いていた。
援護の為に来たにもかかわらず、仕事が無いのだ。
決して彼女らだけで処理できるほど、連合残党の対処は簡単な仕事ではなかった。
「……私、何をしてるんだろう」
曇った夜空を見上げながら、シエラは独りごちる。
彼女らは戦うためにここにいるのに、戦えないのだ。
別に、戦いに餓えているわけではない。自分にできることが無いのが、悲しいのだ。
「悩んでもしょうがないか」
自分に苦笑し、シエラは夜空に背を向け、愛機の下に踵を返す。
韓国支部の格納庫は広いのだが、それに見合う数のヴェルクはない。今あるのも、ほとんどは日本支部のモノだ。
その内の一機の足元で止まり、シエラはそれを見上げた。
(――シオン君)
心の中で、ここにはいない少年の名を呟く。
実の所、彼女の乗るヴェルクのAIは今、変化を見せている。
これまで、彼女は他の人と同様に、最も想っている人――兄のカイトをAIに設定していた。
しかし、急にその性格が変わったのだ。特に彼女が命じたわけではないのに。
それはつまり、彼女は――。
「……ううん、今はこの戦いで生き残ることを考えないといけないね」
小さく首を振り、シエラは愛機に微笑む。
「でないと、もやもやしたままだから」
彼女の願いを聞き入れるかのように、雲の間から僅かに月が顔を出した。




