第6話「私にできるコト」part-C
シオンが初めてアーキスタ、レイアと顔を合わせた質素な部屋。そこにその3人と、捕虜となった連合兵3人がいた。
ちなみにレイアだけはパイプ椅子に座らず、壁にもたれて立っている。ここに来る途中で彼女は、シオンに「私にできるコトをするから、気楽にやれ」と言っていたから、これがそのできるコトなのだろう。
「さて、顔を合わせるのは初めてになるな。私はアーキスタ・レルラ。反連合組織プレイス日本支部の司令官を務めている」
厳かな雰囲気を纏ったその言葉で、連合兵達がどよめく。
(……まあ、なんだかんだで若いしな、アーキスタも、レイアも)
「年齢については気にしないでほしい、こちらもそんなことを気にしている場合ではなくてな」
「わ、わかった」
「では、本題に移ろう。――ああ、脱走なんて考えないように。ガキの集まりと侮ると痛い目を見るぞ」
「承知の上だ」
アーキスタが困ったような息を吐く。その目は「やけに素直だな」と言っている、シオンにはそんな気がした。
「そうだな、まずは連合軍の目的を聞こうか?」
「俺達のようなツォイク乗りは、災害復興を阻害するプレイスの殲滅が主な目的だ」
「ふむ」
と、アーキスタがその手を顎に当てる。
シオンとしてはまだ出る幕ではないので、黙ってやり取りを見ているしかできない。
ちらとレイアを見ると、鋭い目つきで連合兵を睨んでいる。
(視線だけで殺す気かよ、あいつ……)
「実はこちらの隊員が、ちょっと前にツォイクに襲われたらしくてな」
「……何かの見間違いでは?」
ほら言え、とアーキスタが視線でシオンに言う。
唐突に振られて困惑したが、すぐに自分を落ち着かせて口を開いた。
「……いや、確かに襲われた。明らかな殺意を以て」
自分の命が狙われて、死を間近にした時、どれだけの恐怖を覚えたか。
シオンの脳内には、まだ色濃く残っている。
「待ってくれ、俺達はそんな、民間人を襲う命令を受けたことはない。本当だ!」
「本当だと言われてもな。だとすれば、連合内で2つに派閥が別れていることになるが」
「……それは、分からない」
「シオン、お前自身の意見を聞きたい。どう思う」
「どう、って。………」
今度は言葉で発言を促され、シオンは思考を始める。
要するに、信じるか信じないか、そういうことなのだろう。
「……確かめないことには、何もわからないだろう。疑いすら正しいのか、それが分からないんだから」
「ま、その通りか。――念のために聞いておくが、何のために戦っていた?」
「もちろん、市民の平和の為だ。それを襲うなどとは」
「――だとよ。どうする、シオン?」
「やっぱり情報が足りない、な。だが、そういう人もいるんだって分かったのは随分な収穫だ」
「……ここは、本当にテロ組織なのか? 俺にはとても、そんなことをするようには……子供が……!」
隊長ではない、その部下と思しき男が声を大にした。
それに対し、アーキスタは鼻を鳴らす。
「年齢は関係ないと言ったばかりだ。それに俺達がしているのはテロ行為に相違ない。連合軍がしているのが、人を襲う行為でないのなら、な」
「………」
「それが、俺達が『反連合組織』と名乗る所以だそうだ。国連を本当はどこかで信じている人が、そう名付けたんだと」
「俺達は……」
「ひとまず部屋に行ってもらおう。もちろん色々制限してはいるが、人間としての生活を失わないように尽力する」
「あ、ああ。ありが、とう」
「なあに、コイツには逆らえんのでな。なあ?」
と、アーキスタが試すような視線を送ってくる。
つまり、ここで脅せと言いたいらしい。
「……紹介が遅れた。俺は、シオン・スレイド。お前らが『紅蓮』と呼ぶ、赤いヴェルクの搭乗者だ」
「「「んなっ!!?」」」
予想通りと言うか、連合兵たちはシオンの発言に声をそろえて驚いた。
おそらく「声が似ているが、さすがにここまで子供ではないだろう」とでも思ったのだろう。
その反応がおかしかったのか、アーキスタは笑いを堪えて鼻から息が漏れている。
「まあ本当にガキの集まりだが、悪人の集まりじゃあない。ただガキである以上、感情に動かされる。そこまで理解して、こいつを認識しておけよ?」
「は、はいッ!」
「………」(なんか、変な感じだな……)
「じゃあ、行こうか。レイア、頼む」
「ああ」
「シオンはミュウの所へ行け。そろそろ起きるだろう」
「りょ、了解」
そうして解散し、部屋に一人残されたシオン。
自分は間違っていないだろうか。正しい事をしているのだろうか。
自分のしたいことをしているのだとしても、自問は止まなかった。
ただただ時間は過ぎ、制圧作戦は始まりを告げようとしていた。
平和と錯覚しかけていた者達に、現実を思い出させるように。




