SHOUT-IA
暗黒に包まれた宇宙空間。どこを見ても、恒星、またはその光を反射した星が瞬いている。
そこを動き回る【彼女】にとっては幾度となく見たものであり、既に興味の対象ではなくなっている。
「……漸く、見つけた」
【彼女】はにやりと、口の端を釣り上げた。同時に安堵の息を漏らす。
【彼女】はこれまで、無限に限りなく近い時間を過ごしてきた。このセカイを救う為の術を探すために。
それが今、見つかったのだ。太陽系第3惑星、地球――たったの1億年で人間が食い荒らした星で。
「シオン、スレイド」
救世主となるはずの者の名を呼びながら、真っ青な海に浮かぶ小さな島国を見つめる。それが『日本』と呼ばれる国であることを【彼女】が知るのはもう少し先だ。
【彼女】は藁にもすがる思いだった。例え彼が、本当は救世主などではないのだとしても構わない――それほどまでに、疲弊していた。
僅かな可能性に、全てを賭ける。
これで最後でもいい。そんな覚悟までしている。
「今度こそ、私は」
地球を包み込むように手を動かし、【彼女】はその赤い瞳から涙を流す。
それは意志を持ったように動き、肥大し【彼女】を包み、怪しく光った。
「あの方を止める」
光の中から現れたのは、宇宙空間でも映えるほど黒く光る炎。
翼を広げるように炎の勢いを強めると、時が止まった――いや、『加速』を始めた。
いくつもの事象が目前で流れゆく中【彼女】はそれを無視し、救世主を得るための要素を集め始めた。
どんな犠牲を払ってでも、セカイを救うために。