なろうの流行の歴史と未来
1.はじめに
なろうで一山上げよう、だが何を書けばいいかわからない。今人気の要素を盛り込んだ作品を書いても周りと差別化できない。似たり寄ったりの作品が多すぎる。
そう思っている方が多いと思います。かくいう私もその一人です。
そんな私が現状からの脱却を目指して考えた結果、流行の移り変わりを分析して、未来の流行を先取りすることができれば解決につながるという結論に至りました。
一人で悶々と書いていてもモチベーションが上がらないのでどうせ書くのならば使うあてもないし投稿することにしようと思ったので投稿します。
最初に断わっておきますが、詳細なデータをとっていない、私のあやふやな記憶と感覚から構築した理論ですので突っ込みどころは多々あると思います。
そう言う部分を指摘していただいたら幸いです。
2.流行
2.1流行とは何か
なろうで流行が移り変わる理由を考察します。
まず、なろうでは読み手と書き手があると定義します。
読み手>>書き手のため複合型は考えません。
読み手は消費者、書き手は生産者といい変えてもいいでしょう。
めんどくさいので各ジャンル、各要素ごとの書き手のレベルは相似とします。
つまり、例えば書き手が10人いれば上手い人が1人いる。100人いれば上手い人が9人すごく上手い人が1人と考えます。
読み手の心理としては面白い作品を探しています。
そして、十分に面白い作品を見つけた時にポイントを入れ、そのポイントの数によって評価されるのが書き手です。
ですが、この面白いというのが曲者で、例えば同じ要素を書いている100人ずつの書き手のグループがあるとして、あるグループでは書き手の上位10名が評価されて、あるグループでは上位50名が評価されます。
このかたよりを流行り、もしくは流行と呼ぶことにします。
2.2流行の移り変わり
では、流行があるのならば書き手は流行しているグループに移ればいいというのがまず皆が考えるでしょう。それは有力な方法ですが、通用するのは最初のうちだけです。
この流入が安定すると各グループの書き手のレベルは相似形なので1000人のグループで上位50名が評価されるならば950名の書き手が評価されません。
しかしながら、この950名の書き手の作品は残るのです。
例え評価されなくても読み手の有限な読書量を圧迫します。
一例を挙げますと、一日10作品見る読み手が一つの面白い作品に出合う確率は両方の場合でいくらか。
計算してみると面白いでしょう。
面白い作品に出合えない読み手はこのグループはつまらないと錯覚し、飽きを生じさせてしまいます。
結果としてそのグループは見放され、評価される割合が減ることになります。
そして、減った評価数が新たなグループに振り分けられこの動きによって新たな流行が生まれるのです。
3.なろうにおける流行の移り変わり
この部分を書くにあたってまずは私が男であること、恋愛ものを読み始めたのがつい最近であることを表明します。
記憶データの不備に目を瞑ってくださいということです。
あと、結構長いので4まで飛ばしても大丈夫なように書きます。
3.1.『古典的主人公最強物』
最初の流行は『主人公最強物』別名俺TUEEEものと呼ばれるものでこれはなろう黎明期で支配的でした。
現在も流行する最強物と分けて『古典的主人公最強物』、略して『古典最強物』と呼称します。
このタイプの作品を一行で説明すると
「トラックにはねられた俺は土下座する神様にチートをもらって異世界で無双」
なんかタイトルっぽくなってしまいましたが大体合っているでしょう。
にじファンが分離する前ですので異世界の部分に作品名が入ることもありました。
また、無双のしかたにも現代の知識でなどとつくことがあります。
重要なのは結果をポンとご都合的に与えることで無双するところです。
なろうの方向性と基礎を決めたこのタイプの作品を『古典なろう文学』と呼んでもいいかもしれません。
メリット「主人公が戦って敵を倒すだけで爽快感がえられる」
デメリット「現実との乖離。登場人物が主人公、踏み台、ハーレム要因しかないため書き分けが困難」
3.2『アンチ最強物』『アンチアンチ最強物』
『古典最強物』の最大のデメリットは世界が1人を中心としているように見える不自然さです。
この不自然さに目を向けたのが『アンチ最強物』と『アンチアンチ最強物』です。
『アンチ最強物』は
「異世界で勝手する最強主人公を倒して俺TUEEE」です。
『アンチアンチ最強物』は
「あいつら俺の本当の強さ(orこの世界での矛盾点)に気が付かないで無双してやんの」です。
二つとも出来上がったステレオタイプを踏み台にすることでより効果的に最強を演出しています。
『古典最強物』派生ですが、同じことをやっているのに不都合を『古典最強物』に押し付けることで疑似的にグループに存在するデメリット部分から目をそらさせることに成功しています。
メリット「明確な敵を作ることでの他作品との違いを明瞭にできるところ。『古典最強物』と同程度の爽快感」
デメリット「明確な敵のせいで必要になる『終わり』。あとは『古典最強物』と同じ」
3.3『努力チート』
さて、上記の二つは実は同じようなことをしていると書きましたが、今回も同じです。
というより、なろうはずっと『古典最強物』の派生が続きます。
『努力チート』という言葉の意味は
「俺TUEEEんだけどTUEEEのには理由あっから」です。
これはもっと『古典最強物』派生のデメリットを抑えようという努力の元生まれたジャンルです。
これには最強になる理由づけを作品内でもっともらしく語っているところが重要になります。
典型的な例が異世界で子供の時から魔力使っていたから魔力がたくさんというところでしょうか。
もしくは、ステータスやVRMMO物のように急速に強くなっていく作品もこの亜種であると言えるでしょう。
現在も根強く残っているジャンルです。
このあたりで転移、憑依のかわりに主流が転生になった気がします。
メリット「『古典最強物』のデメリットの緩和」
デメリット「設定を出すことによるインフレのコントロールが必要」
3.4『脇役物』
これは正確には『アンチアンチ最強物』と『努力チート』の合いの子でしょうか。
いつものように言うと「俺関係ないんだけど構わないでくれよ(チラ)」です。
実はこれは『古典最強物』派生と言えないかもしれない部分があります。
というよりは主にはやったのが恋愛ものの方面な気がするからです。
それとも恋愛ものから移ってきたのでしょうか?
追い求められるという部分に恋愛物のにおいを感じますが前後関係がわからないのでこの部分はあまり考察できませんごめんなさい。
メリット「最強物からの脱却に成功?」
デメリット「イベントが少ないのでストーリーが組みにくくだれやすい」
3.5『悪役物』
『アンチ最強物』が『脇役物』などを取り込んだ正当進化系でしょう。
たしかにじファンがなくなったころに出てきたはずです。
それまで未来情報チートを書くならば二次創作の方が便利だったのですがにじファンがなくなることによってなろうでは書くことができなくなりました。
ハーメルンなどに移った部分もありますが、元から両方を書いていた書き手の層が関係しているのではないか推測できます。
特性は「世界が俺の敵だけど対抗できる俺SUGEE」です。
上記の通り『アンチ最強物』の明確な敵の部分を物語の主役や世界などの強力な部分に置くことで発生したとも思えます。
世界が敵という特性上挫折が多い
今もまだ微妙に流行が移っていない『悪役令嬢』もこの部分に存在するでしょう。
メリット「敵が強大(初期状態がひどい)ので主人公がいくら活躍しても大丈夫」
デメリット「世界が敵という特性上挫折が多いor失敗するとただの『古典最強物』」
3.6『ぶらり最強物』
結構多様化していますがこれが現在の主流ではないかと思います。
先に言いますと「俺世界征服できるぐらいTUEEEけど何もしねえわ」でしょうかね。
力はぽっと手に入りますが世界をその時々の目的で渡り歩く。
『古典最強物』の直系子孫と呼んでもいいでしょう。
現在はなろうルネッサンスと言ってもいいかもしれません。
メリット「『古典最強物』と同じ」
デメリット「うまくやらないと山なし谷なし」
3.7『勘違い』
こっちはもう一つの主流で系統的には『悪役物』『脇役物』派生でしょうか。
実は結構古くから存在していて根強い人気が続いています。
最強物の他人視点あたりが元祖で元々主人公が強いことを描写する方法が主人公が強くなくても使えるというパラダイムシフトの元新たなジャンルになったのでしょう。
「俺関係ないんだけど他人が関係あると思って困ってる」
もしくは俺は強くないんだけど……ですね。
ただ、これは相対的にほかが分散することによって上層に浮上してきた部分があると思います。
メリット「『最強物』のデメリットがない」
デメリット「物語を組むのが大変」
4.未来予想とそれをふまえて
最近になればなるほど古い系統が邪魔して先が読みにくくなっています。
ですが、それでもわかることがあります。
流行は基本的に飽きが来た主流のジャンルを一部否定するか、書き手のいなくなった古くさいジャンルを掘り起こして今風にデザインするかの二通りでしょう。
ただ、重要となるのはどうあがいても最強という要素を否定できない部分です。
なろうで書く以上流行の主流に常に影響を与えてきた『古典最強物』から始まる『最強物』を否定するよりは取り込んだ方がよいということもあります。
それを踏まえて『ぶらり最強物』の弱点を見ると緩急をつけた作品がはやるのではないでしょうか。
例えば「最強主人公が短いスパンで以て起承転結のある行動をする」「最強主人公が攻めて来る敵を次々に受動的にさばき続ける」あたりが結構ねらい目だと思います。
逆に現在のように主流がばらけていると、腕に自信があるならば安定している分野を書いてもいいかもしれません。
つまり、人が少なくて2.1での例で言うと100人中15人ぐらいが評価される分野ですね。
ただ、そのすべてが『物語を組むのが大変』というデメリットをしょっています。
代表されるのは歴史物、勘違い物、戦記あたりです。
5.最後に
ここまでお読みいただいてありがとうございました。
一応もう一度書きますと結論としては「最強主人公が短いスパンで以て起承転結のある行動をする」「最強主人公が攻めて来る敵を次々に受動的にさばき続ける」作品となりました。
ただ、これは私のあくまで予想ですので『書いたのにはやらなかったぜこの馬鹿野郎』というのはおやめください。
逆にここが間違っているんじゃないかという指摘はありがたいです。
記憶から思考を重ねているだけなので記憶が間違ってる可能性は結構あると思います。あと論理的におかしいという部分もあるかもしれません。
とまあ予防線はこの程度にして本題です。
投稿を始めてみて思ったことは結局自分の書きたい作品を書いたほうが書きやすい場合が多いというところです。
特に最初はそうなるのではないでしょうか。
私も何度も何度も筆が止まってしまって最近ようやく投稿することができました。
何が言いたいのかというとこのエッセイの結果を使おうという奇特な方がおりましたらまずはその作品を愛せるかを考えた方がいいと思います。
100名中50名評価されるジャンルだとしても下の50に入ったら意味がないですからね。
それを踏まえてこの結果を使ってくださるなら大歓迎です。
改めて最後まで読んでいただきありがとうございました。