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第5話 気さくな少女

勢いに乗った僕たちはワクドナルドへやって来た。 


飛び入り参加の有原さんは、別に両親が来ているのにもかかわらず、楽しそうだからという理由で桜井君に頼んだらしい。

親といることがどれだけ幸せなのか… とも思ったが、価値観はやっぱり人それぞれなんだよね。


意外と学校から遠くはない事に感心し、2階の窓側にある4人席に座った。久しぶりにファストフードを食べに来たので、より空腹感が増して奮発してしまった。


ダブルチーズバーガーのポテトLサイズセット… 夜は野菜も食べなきゃ。

みんなが食べ終わると、早速学校トークに入った。


「なぁなぁ、あの学校ってどうなんだろうな?」


「まだ始まったばかりだからなんとも言えないけれど、良い学校なんじゃないかな?…」


残ったジュースを片手にしながら僕は答えた。


「確かにそうだよなぁ〜。他のお2人さんは?」


相変わらず桜井君は元気だ。


「私も… まだ良く分からない、かな?…」


「私は絶対楽しいと思うよ! 早く授業とか始まらないかな〜」


山田さんがおろおろとしている一方、有原さんは桜井君みたいに意気揚々としていた。

そんなに学校が楽しみで仕方がないのか… なんだか違和感がした。


ワクドへ向かっている途中、有原さんが都心の方から引っ越して来たという話を聞いた。何か大きな理由でもあったのかは聞かなかったが、少し気になる。


「だよな… だよな〜! 分かってくれる仲間がいてくれて俺は嬉しいよ…」


「私もだよ桜井君〜!… うぅ涙が…」


桜井君と有原さんはネタだが大げさに泣き真似をし始めた。なんだか良く分からないが、とても楽しそうだ。

でも、みんなこの学校に入ったことに希望を抱いて来ているんだ。1人を除く親御さんが来れなかった僕達だけれども、これから始まる新しい事に不安と期待を持つのは当たり前だったのかもしれない。


「――なんだ、ただ心配しすぎただけか…」


「うん? 今なんか言ったか?」


安堵してつい口に出してしまった僕は、焦り何でもないと誤魔化した。


「ふーん、なあ有原ってどこ住みなんだ?」


そっか、と言い桜井君はすぐさま話題を変えた。


「わたし? ここが地元だよ」


「マジか! じゃあ、どこ小?」


いつも、というか出会って一日なのだけれども… とにかくいつものノリで話しかけた。


のはずだったが… 


さっきまで元気だった有原さんの表情が一瞬で暗くなっていた。


どうしてなのか分からない。僕達3人が不安になりながらも反応を待った。


「えっと…… そんなに話さないといけない、かな?…」


数秒硬直してから有原さんは答えた。少し落ち着いたのか、苦笑いでその場を濁していた。


「い、いやぁー… 別にそこまで必要ではないっかな? あはは…」


「うん… ごめんね」


悲しんだ顔で有原さんはそう言った。


「ねえ、なんか他のこと話そ! 確か年間予定表のプリント貰ったよね? みんなで見ようよ!ー」


「おう、そうだな!」


桜井君に続いて僕と山田さんもうん、と頷いた。

なるべくさっきの話に触れないように気を付けながら……


それから空気が微妙な感じにはなったが、ちょっと過ぎたら元通りになったので悪い終わり方にはならなかった。


でも、初日なのに話しすぎたせいで気づけば夕方。

今から帰るとしたら地元の駅まで着くのは完全に暗くなっている頃だろう。


みんなと別れ、用心して僕は電車に乗った。




―――――



夜道、心細くなりながらも僕は家に向かって歩いていた。


大丈夫、僕はもう中学生なんだ。そう思っていてもただ職業が変わっただけであって、中身がまだお子様なのは知っている。


怖いんだ。


周囲には誰もいないのに、僕のとはちがう足音が聞こえはじめた。


それはだんだんと僕の方へ近づいて来ているのが分かる。


誰なの?… 僕を襲ったりしても何も出ないよ?…


ぶつぶつと早歩きをしながら足音から逃げようとする。

でも足取りは完全に向こうの方が早い。


もう逃げ切れない

来る…… 誰なんだ!?…





「春希!」


「うわっ!」


驚き振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。


「なんだ、母さんか…」


「他に誰だと思っていたのよもう… というか今帰りなの?」


「うん、ちょっと仲良くなったみんなとワクドで遊んでたらこんな時間に…」


「あら、早速友達が出来たのね。なんだか安心したわ!」


胸に手を置いて、母さんは安心した表情を浮かべた。


「うん、なんとかね…」


「良かったわねぇ。とにかく帰ってお話聞かせて?」


「うん……」



よくわからない1日が終わった。

なんだか知らない内に友達が出来て、今までの不安が嘘だったかのように終わった。


でも、そんな夢みたいな日々は長く続かなかったんだ。


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