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綾辻あみ 1月18日(木)

書いていって、小説の中での時間が一日分進んだら、更新していくことにしました。

1/18  


 

[6:30]



 すごくお腹がすいて目が覚めた。結構寝た気がするけどなんだか頭が痛い。時計を見ると朝の六時半だった。

 ベッドから出ながら、今日一日の予定を考える。

 今日は部活もないし、放課後はフリーだ。どこかに遊びに行きたい気分だから、いつもの何人かで遊びに行こう。桐生くんも誘えるといいな。

 時間割を整え、散らかった部屋を軽く掃除するも、なんだか気分は優れないままだ。

 お手洗いを済ませ、少し霞みがかった頭で洗面台まで行き、ねぼけた自分の顔を見た。

 何だか、目が赤い。泣いた後みたいだ。昨日何かあったっけ。

 そこまでして、やっと、昨日桐生くんに振られたことを思い出した。

 「あぁ」

 と口から嘆息が漏れる。

 振られたことに対してではなく、鏡を見るまで桐生くんに振られたことに気づかず、当たり前のように桐生くんのことを考えていた自分にため息が漏れた。



[8:00]

 


 登校準備を終えた荷物を目の前に、私はまだ決心がつかずにいた。

 学校に行くか、サボるか。

 既に制服は装着完了。髪もいつもどおり後ろで一つに束ねたし、いつでも家を出れる状態ではあった。

 うちの学校は私立というのもあり、サボったのがばれた暁にはそれなりのペナルティが課せられる。この前学校をサボって京都に旅行に行った山田くんは、もう学校にいない。

 普段だったらサボることなど考えもしないのだけど、桐生くんの顔を思い浮かべると、どうしてもかばんをつかめなかった。

 

 「あみー!起きてるー?」

 リビングから私を呼ぶお母さんの声が聞こえた。

 「あー分かってる!分かってるから!今行くってば!」

 

 自分への決心のつもりでもそう言ったのだけど、続いたお母さんの声は私の予想の斜め上を横切っていった。

 「そうじゃなくて、今日学校行かなくていいみたいよ?」

 横切っていったお母さんの声を何とか引っつかみ、頭の中で反芻する。

 学校行かなくていい?

 

 小走りでリビングに行くと、あさごはんのしたくをするお母さんが居て、テレビドラマにでも出てきそうな和やかな朝の風景が広がっていた。

 ソーセージの焼けるいい匂いがして、お腹が鳴った。そういえば、お腹が空いて目が覚めたっていうのに、まだ何も食べていなかった。

 「学校行かなくていいって、何で?」

 テーブルに腰かけながら尋ねる。お母さんはゆでたソーセージをお皿に移して、

「さっき学校から連絡が来て、今日は事情があって休校らしいのよ」

 華麗に目玉焼きをかぶせた。

 「そうなんだ」

 表向きはクールにそう言いながらも私の心は安心感で一杯だった。

 良かった。根本的な解決にはならないけど、今は少し時間がほしい。

 「事情って、何だろ?」

 私がそう聞くと、お母さんも首をかしげる。

 知らされていないみたいだ。

 おかしいな。あの堅物教師の集まる偏屈学校が、今まで理由もなしに休校にすることがあっただろうか。

 お母さんが持ってきてくれた朝ごはんを食べながら、私は桐生くんに振られたことを思い出してから緊張しっぱなしだった筋肉が緩んでいくのを感じていた。



 [10:00]



 ツイッターが騒がしくなっていることに気づいたのは、十時を少し回ったあたりだった。どうやらみんな、休校になった理由について話しているみたいだけど、その理由というのがなにやら穏やかじゃない。

 発端は、朝学校があると勘違いして登校した生徒Aのつぶやきのようだ。それには

『何かあったのかな?てか今日学校は?』というつぶやきとともに、正門に止まっている救急車の写真がアップされていた。

 

 誰か倒れでもしたのだろうか。

 

 一部の生徒は『学校休みにするぐらいだから相当なんじゃない?』『あ、校長先生とか?』『もしかして死んだりするレベルだったりして』『まあ学校休みでラッキー♪』などと不謹慎この上ない。

 

 私自身も学校が休みなことは嬉しいけど、手放しで喜べる事態ではなさそうだった。

 不安になり、学校のホームページを確認したけど、目新しい情報は載っていない。

 クラスLINEもにぎわってきている。一通りのぞいてみたけど、桐生くんの名前はなかった。

 


 [18:00] 



 えり:クラスのグループライン見た?

 あみ:見た見た

 えり:私、休校のほんとの理由知っているんだけど

 あみ:え?

 えり:誰にも言っちゃだめだよ?

 あみ:うん

 えり:図書室司書で現国担当の、鈴木先生。亡くなったらしいよ。

 えり:殺されてたみたいだったって。


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