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綾辻あみ 1月17日(水)

初投稿なので多目に見てもらえるとありがたいです。

1月17日(火) [16:45]




その日、私は、珍しく図書室にいた。


放課後、夕暮れ時の図書室。この時間には人がほとんど居ない。居るのは、貸し出しカウンターの向こうに図書委員が1人だけ。私は、面識のないその人から隠れるように本棚の影でケータイをいじっていた。


何でわざわざ図書室に来てまでケータイをいじるんだ。全く最近の若者は。と揶揄する方もいるかもしれないが、別に図書室に用事があって来たわけではない。


その日の私は、人を待っていた。


本当は屋上で時間を潰していようと思っていたのだけども、外は生憎の雨だった。ので。仕方なしに図書室に足を運んだのだ。


予定の時間の午後五時半までは後一時間ほど時間があることを、ケータイの上部の時計で確認する。と同時に、充電が残り少ないことを示すウィンドウが表示された。


ため息をついてケータイの電源を切る。ケータイはこの後使う可能性があるので、最低でも通話ができる状態にはしておきたかった。


ケータイをポケットにしまうと、両手が空っぽになり、空虚感が漂う。


・・・すっかり手持ち無沙汰になってしまった。


しばらくぽけーっと突っ立っていた私だったが、図書委員が書架整理をしに来たので、仕方なく本を眺めているふりをすることにした。


しかし私は、読書をするようなタイプの人間ではない。高校に入ってから図書室で本を借りたことはないし、書店で本を購入したこともない。活字が苦手というわけではなく、雑誌や新聞なんかはたまに読むが、何分創作物が苦手だ。評論文などなら苦もなく読める自負があるが、小説は嫌いだ。人が百パーセントの自己満足で作った話を読んで何が楽しいのか。甚だ理解しかねる。


というわけで、私の足は自然と図鑑や辞典のあるコーナーに向かった。


分厚い蔵書の数々は私に圧迫感を与えるが、くだらない空想を散りばめた紙切れに囲まれているよりはましなはず。


そう思いながら、暇つぶしになるような本がないか探す。


辞典のコーナーを、一番右端の列の手前の棚からしらみつぶしに見ていく。この学校の書架は充実していて、辞典、図鑑だけでも本棚四つがずらっと五列もならんでいた。右端の列から順番に回って行く。その列が終わると、その裏に回って、次の四つの棚を見ていくというように、波をかたどるように移動していたら、なかなか面白そうな本などもあり、それらを手にとったりしていると、最後の棚に辿り着くまでには二十分もかかってしまった。


最後のたなを上から下まで渋い顔で眺め回すと、一冊、目にとまった本があった。


右端の上のほうにあるその本に背伸びしながら手を掛けると、辞書に挟まれているわりにはあっさり、するっと抜けるようにとれた。


なぜこの本を手に取ったのかといえば、背表紙にタイトルが書かれていなかったからに他ならない。


表紙を見ても、タイトルらしきものは見当たらず、やけに抽象的な絵が描かれているだけだった。真っ黒い背景の真ん中に描かれているのは、ただの大きな白いハートマーク。


でもそれは、私にページを開かせるのに十分なオーラを放っていた。


けれど、ページを開いてすぐ私は後悔した。一ページに目に書かれている計十七文字の文章は、私が最も嫌いなものだったから。そう。俳句。

 

「何で俳句がこんなところに・・・。」

 

誰かが間違えて戻してしまったのだろうか。何の気なしにページをぱらぱらとめくると、二ページ目からは俳句ではなく、普通の文章がびっしり書かれていた。どうやら私の苦手とする小説の類らしい。

 

よくこんなの書けるな・・・。私にとってみれば確実に黒歴史になるであろう言葉の羅列だ。

 

暇つぶしどころか暇を生産してしまっていることに気付いた私は、その本を閉じようとした。

 

しかし、目の端っこに見覚えのある単語が飛び込んできた。


 『桐生』


その名前を見た途端に私の目はそれに釘づけになってしまった。これは小説で、その登場人物と実際の桐生くんは全く別の存在であるとわかってはいても、目はそれを追いかけてしまう。

 

それほどまでに、私は桐生くんのことが好きだった。


出会ったのはいつだったか・・・。感動的な出会いであったことに間違いはないのだけれど、私はそれをあまり覚えていない。

 

悪漢に襲われそうだったところを助けてもらったような気もすれば、遅刻ギリギリの朝に曲がり角で額を合わせたような気もする。夏の陽がきらめく炎天下、倒れそうな私をやさしく抱きとめてくれたようにも思えば、冬の雨の中、凍えそうな私に無言で傘を差し出してきてくれたようにも思える。

とにもかくにも、出会ったその瞬間に私は彼に恋をしたのだ。一目ぼれだ。


出会った当時、彼がどこの学校に通う、どんな人かもわからなかった。けれど一年ほど私の中で彼への情熱は燃え続けていた。何としてももう一度彼に会いたい!何度そう神に願ったかわからない。神頼みだけではない。自分で行動もした。いつか出会った時のために女に磨きをかけたし、彼を探して近辺の小中学にひたすらに聞き込み調査を行った時期もあった。その際、一度通報されかけたけれど今ではそれもいい思い出だ。


彼に会いたい、会って話をしたい。あの頃の私はその思いだけを胸に生きていた気がする。

それでも、その怒涛の一年間、一度として彼には出会えなかった。


私は性格のきっぱりした女だとよく言われる。中学二年に進級すると同時に、私は彼のことを一度、綺麗さっぱりあきらめた。苦渋の決断だった。


だが、しかし、けれども、しかるべくして、恋の女神は私に微笑んだ。


あの瞬間の出来事を私は絶対に忘れない!


訪れた合格発表の日。自分の番号を見つけて嬉しさで飛び跳ねたその直後、私は誰かの足を踏んでしまった。


「すいません。」


と合格の幸せの抜けきらないだらしない半笑いのまま、足の主人に謝ろうと顔を向けたその時に、


運命が動き出すのを感じた。


私が足を踏んだその人が、まさにその桐生くんだったのだ。


「いいえ。こちらこそよそ見をしていて・・・。合格・・・ですか?」


私の半笑いから合格したことを察した桐生くんはそう言って私に笑いかけてくれた。私は声も出ず、ただうなずくので精いっぱいだった。バカみたいにずっと首を縦に振っていたら、それを見て桐生くんはおかしそうに笑った。


「僕もです。これから三年間、よろしくお願いしますね。」


あああその笑顔反則反則反則。


「お・・・、おな、同じクラスになり、なれたらいいですね。」


どもったうえに噛んだ・・・遅れて顔が熱くなるのを感じた。


あぁ、一年間ずっとこの瞬間を夢見てきたのに。何十通りも返す言葉を考えたのに、いざその時になると、どうしても躊躇ってしまう。



一度前に会ったことがあるんですけど、覚えていますか?



そう言おうと、開きっぱなしの口を一度引き締め、半分ほど開いた時に「それでは、また入学式に。」と桐生くんが言った。


喉元・・・いや、舌の先まで出かかった告白の言葉を飲み込み、私は「はい」とつぶやくように言い、去っていく桐生くんの背中を、ぼうっと見ていた。


言えなかった・・・。言えなかったけれど・・・。



『これから三年間、よろしくお願いしますね。』



桐生くんの言葉が頭の中で蘇る。


三年間、桐生くんと同じ学校に通える。きっとチャンスは何度でもある。


何よりもまずは、彼と一緒の校舎で過ごす三年間を思って、私は心から嬉し泣きをした。




そして現在。あの時飲み込み、その後の二年間伸ばしに延ばした告白の言葉を私はあと数十分後には言い終えているはずだ。


桐生くんには今日の朝、「放課後、話したいことがあるから、三年A組に来てくれないかな」と言ってある。彼は笑って「部活の後でもいい?」と言った。


彼はサッカー部に所属していて、今日のような雨の日は部活が五時半頃に終わる。


五時半になるまで、あと十五分。一度は落ち着いたと思っていた私の心臓が、また暴れだしてきた。


大丈夫だ。ずいぶん遅い告白になるけど、その分私はこの二年間で、彼との距離を詰めてきたつもりだ。最初は話しかけるのにも勇気が必要だったけど、今では気軽に話せる仲だし、何回か放課後に遊びにいったりもしている。大丈夫大丈夫大丈夫。絶対に。


そろそろ教室に行って待っていようか。一世一代の告白をするのだから、十五分前行動してもおかしくはないだろう。


本棚を離れるときには、図書室には私一人になっていた。図書委員はどうしたんだろうと思ったら、その図書当番と、何人かの先生の声が司書室の中から聞こえてきた。何やら慌ただしいようすだ。


まあどうでもいいか。


ちらっと時計を確認するとちょうど5時15分。そこで私は、さっき持っていた本を手に持ったままなことに気付いた。引き返そうと一瞬思ったけれど、桐生くんの名前が入った本だ。なんだか縁起がよさそうだし、ゲン担ぎのつもりでそのままバッグにしまった。告白が終わったら、桐生くんと一緒にここに返しに来ればいい。雑談でもしながら。


桐生くん、そういえば私さっきまで図書室にいたんだ。桐生くんが図書室にいるところはあんまり見たことがないけど・・・。え?私が本なんて読むのかって?へへへ、こう見えても成績いいこと知ってるでしょ!それでね、面白いことがあったの!見てここ桐生くんと同じ名前のキャラクターだよ!あ、でも将来的には私も同じになるのかな?桐生あみ・・・なーんて。




[17:50]




振られた振られた振られた振られた振られた振られた振られた振られた。


玉砕!


うわああああああ

何でえええええええ

どうしてええええええ!


こんな展開、全く想像していなかった。


振られたの?私?マジ?


何が「桐生あみ・・・なーんて☆」だ。数十分前の私の顔面を殴ってやりたい。幸せな思考で埋まるはずだった頭の空白に、ネガティブな思考がなだれ込む。


私のどこがダメなの?

慣れなれしいところ?声が大きいところ?おしとやかじゃないところ?頭よくないところ?女子のくせに男子に体力テストで勝っちゃうところ?ダイエットのためって言ってお弁当の野菜、友達にあげたりするところ?それでいて近所の焼き肉屋さんの十五分大盛り完食チャレンジ成功させちゃったりするところ?


・・・わからない。確かめたいけど今の私にはそれは無理だ。確かめるなら、彼が教室を出ていく前しかなかった。

あの時の私はショックで茫然としていてそれどころじゃなかったのも確かだけれど・・・。

そんなことを考えていたら、いやでも数十分前のことが思い出される。




[17:35]




窓から差し込む夕の光で、薄いオレンジ色に染まった教室。いつもなら上の階の音楽室から、吹奏楽部の演奏がかすかに漏れ聞こえてくるはずだけど、私の耳にはその音は届いていない。掃除不足で少し埃っぽい床に足を踏ん張って、私は彼に長い告白の言葉を言い切るところだった。


「・・・えっと・・・だからつまり・・・私は実は桐生くんのこと、中学の頃から好きで・・・」

緊張で言葉につまり、うつむき気味だった顔がさらに下がる。

あぁ、こんなんじゃだめだ。せめて告白の言葉ははっきりと言おう。

私はばっと顔をあげた。


「だから、もしよければ!私と付き合・・・」

「ごめん」


桐生くんは、いつもの彼らしくないはっきりとした声音でそう言った。

その声が耳に届いて、状況を整理するのに少し時間がかかった。

窓を背にした桐生くんの顔は、逆光のせいで影になり、表情は見えない。彼はそのまま何もいわずに、教室を出ていった。後ろでパタンと教室のドアが閉まる音が聞こえた時ようやく、握りしめていた手から力が抜けた。



[17:50]



結果として、私は帰りの通学路を1人で歩いている。1人で帰るのはいつぶりだろうか。高校に入ってからというもの、帰り道にはいつも誰かがいた。それは親友のえりだったり、同じバスケ部の部員だったり、それこそ桐生くんだったり・・・。


あぁ、そんなことを考えていたらまた暗い気持ちになってきた。

私はさっぱりした性格のつもりだったけれど、今回ばかりはさすがにこたえそうだ。

何といってもこの二年間、私は桐生くんに会うために学校に通っていたと言っても過言ではないぐらいなのだ。


というか、本当に振られたのか、私。


何だか信じられない。

今さっき人生の最大の目標を失ってしまったなんて。

こんなことなら、告白なんてしなければ良かった。高校三年間、どんなに苦しくても切なくてもいいから、桐生くんの隣にいたかった。


あぁ、明日からどんな顔して会えばいいのよ・・・。


いつの間にか、歩道の真ん中で立ち止まって、しゃっくりあげて泣いていた。

さっきまで私を照らしていた夕日はもう沈んで、街には照明がつき始めている。

通行人が、物珍しそうに私を見て通り過ぎていく。こんな時、桐生くんだったら、声をかけてくれるんだろうなと、また、馬鹿なことを考えた。




[21:50]




ケータイの電源を入れたのは、家に帰ってかなりたった後だった。

夕ご飯をストライキした私は、冷水シャワーを浴びるなりずっと自室にこもっていた。

特にこれといったことをするでもなく、何を考えるでもなく、時折振られた瞬間のことを思い出し、「ああああ」と濁ったうめき声をあげるぐらいで、他には何もしていない。陰鬱な気持ちを抱えたままただぼーっとしていたけれど、午後十時を回ったくらいでようやく立ち上がった。


その拍子にケータイが目に入ったので、電源を入れた。

かじりかけのリンゴが画面中央に表示されて、私の目をちかちかと刺激する。そこでようやく、部屋が真っ暗なことに気付いたけど、電気のスイッチに手を伸ばすのも面倒くさかった。

こんな時にゲームアプリを起動する元気はないし、かと言ってSNS系で桐生くんと接触するのも避けたかった。なので結局数秒でケータイを閉じるはめになった。

左手を添えながらケータイをベッドにシュートしたら、落下地点にちょうど本があった。何だっけこの本。タイトルが書かれてないぞ。と思った後で、思い出す。

と同時に桐生くんに対する思い出全般が脳内で自動再生され、数十秒もだえる羽目になった。


こんな本なんて!


破こうと本を広げ両端に手をかけたところで、図書室の本だったことを思い出し、やめる。こういうところで思い切りがよくないのは、自分のいいところなのか悪いところなのか。

本をぱらぱらとめくると、桐生という文字が何度か目についた。この小説での桐生は、主人公の友達、および知り合いといった立ち位置のようだ。


数ページ追いかけるうちに、少し引き込まれそうになったけど、今の私にはダメージでかすぎた。桐生くんに振られる前だったら、もしかしたら嫌いな小説といえども、読んでいたかもしれない。

本を閉じて現実に戻ると、ベッドの上のケータイがピロリんとなった。見ると、LINEの通知が来ていたみたいだ。桐生くんからかと思い、一瞬期待するも、振られたことを思い出しそれが不安に変わった。おそるおそる画面をみると、親友のえりからメッセージが届いていた。



えり:あみー



・・・これは明らかにこちらの反応を待っている。そういえば、えりにだけは、今日桐生くんに告白することを伝えていたんだっけ。


えりのことだ。何時間も私から告白成功のLINEが来ないので、大体の事情を察して、慰めようとLINEしてきたんだろう。いや、違うな。えりのことだから頭に失敗のことなんてないはずだ。純粋に、幸せな結果が聞きたくてそわそわしているのかも。   


あんなに息巻いていたのに、どんな顔して告白が失敗したことを話せるというのか。


そう思っていたんだけど、思えば、LINEでは顔が見えないわけで、どんな顔をするもないわけだ。明日学校で直接言うよりは、今ここで言ったほうが気が楽かもしれないとも思った。


ただ、この精神状態で果たして明日学校に行けるのだろうかとも思ったけれど、考えるより先に私はアプリを開いていた。

既読をつけてしまったので、もう後戻りはできない。



あみ:えりー

えり:あ!

あみ:振られた



ちょっと単刀直入に言い過ぎたかなとも思ったけど、余計な前置きを入れていいずらくなるよりはこっちのほうがいい。それに、えりには余計な言葉も顔文字も必要ないだろうと思った。

メッセージを送ってしばらくすると、えりからの電話を知らせるバナーが画面に表示された。

あぁ、えりらしいなと、少し顔がほころんだ。画面の向こうで心配そうにケータイを耳に当てておろおろしているえりの姿が頭に浮かぶ。

流石に通話する気分でもなかったけれど、気づけば応答ボタンをタッチしていた。



『あっ・・・もしもし?あみ?』



電話口からえりの声が聞こえてくる。その声は想像していた通り、不安気ではっきりとしない、か細い声だった。


「もしもし。そうだよ。」

『あの・・・、大丈夫?』


全てにおいて単純なえりのことだ。きっと電話でしゃべる内容など考えずに、通話ボタンを押してしまったに違いない。

既に何を話したらいいかわからなくて困っている感じが、見なくても伝わってきた。


「大丈夫・・・でもないかなぁ。まさか、振られちゃうとはね・・・。」


私はそう言ってベッドに腰掛けた。


『私もまさかあみが振られるとは思ってなかったよ・・・。桐生くん、絶対あみに気があると思ってたのに・・・。』

「えー?ほんとにそんなこと思ってたのー?」

『ほんとだよ!あみに桐生くんが好きって聞いた時から、ずっと応援してたんだから!』


私が笑いながらからかうと、えりはむきになって反論してきた。それをさらにからかって流す。


「嘘だー」

『ほんとに!ほんとだって!』

「だって、私が桐生くんと二人で映画行こうとした時あんなに反対したじゃん?」

『それは!初デートで映画館はNGって記事を読んだからアドバイスのつもりで!』

「いやいや付き合ってないもんね」

『そ、それは!』

「それに、掃除当番の時、私と桐生くんが二人で行こうとしたら必ずえりついてきたじゃん」

『それはあみがついてきてってお願いしてきたからでしょう!』


そんなやり取りをしばらくしていると、不意にえりが黙り込んだ。


「あれ、どしたー?」

『・・・あみ、やっぱり辛いでしょ?』


 その言葉に、今度は私がしばらく黙る。


「まぁ、そりゃあ、少しは」

『少しなわけないよ。桐生くんのこと追いかけてるあみずっと見てきたもの』

「・・・」

『無理しないで・・・』


えりに泣きそうな声でそう言われて、一気に涙が押し寄せた。慌てて止めようとするも、瞼にたまったそれは、すぐに満杯になって地面に落ちる。

電話越しとはいえ、人前で泣いてしまうなんて。

こんなことは、小学校以来だろうか。 


しばらく私は、「うわあああん」と子供のような声で泣いていた。


えりは何も言わずに黙ってずっと聞いていてくれた。時々鼻をすする音が聞こえてきたけれど、もしかするとえりも、電話の向こうで泣いてくれていたのだろうか。

 

私はいつの間にか電話を切っていて、それでも泣き続けていたけれど、いつの間にかそのまま眠ってしまった。


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