その⑧ Reminiscence~回想~その1
僕の目は人の目には映らないモノを映し出す。
例えば精霊、例えば妖精・・・
でも、僕にはもともとそんな能力なんてありはしなかった。
今から1500年は前の話――
あの頃の僕は、どこか周りを海に囲まれた小さな島にいた。
そこは魔法使いや、
異能の為に人中で暮らせなくなった者達が
集まり、ひっそりと生活している場所。
でも、その中にあっても僕は
他人を避け、一人森の奥での暮らしを送っていた。
僕の目には、人の心の色を映す
そんな能力があったから。
ある日の森の中で僕は、
人の心が読めない、心の精霊と出会った。
彼は言った
「自分は人の心が解らないから
自分が憑いている人の感情をうまく表現できないんだ」と。
彼が言うには、人に感情があるのは
心の精霊が心の動きを読み取り
それを感情を司るそれぞれの精霊に伝え
感情の精霊が人の意思に働きかけているからなのだという。
「その中心たる自分が人の心が読めないから
自分が憑いている人は無表情なんだ」
その精霊に僕は、自分の目の事を話し
そして「逆に僕は、人の心が見えなくなりたい」と。
すると彼が言った
「僕の目と、君の目を交換しよう」
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それが僕が、人の目には映らないものを見るようになった経緯だ。
あれは僕にとって大きな心の変革の時でもあったんだと思う。
なぜなら、そのおかげで僕は知ることが出来たんだ。
世界の本当の素晴らしさを・・・
世界は、本当に多くの命であふれているということを。