その⑦ 雲の旅行く先に
雲の精霊達に聞いた、旅行く先の話を思いだした。
風に流されるがままに、宛のない旅を続けているかのような雲にも、旅の目的地はあるのだそうだ。
それは、空の青と、海の青が交わる場所。二つの青が交差し、水平線さえ存在しない、無限の青が支配する場所。
『オールブルー』
元々、雲の精霊は地上で罪を犯した咎人なのだそうだ。
その罪のせいで地上に居ることを許されず、神によって空へと追放され、永遠にさ迷う運命を宿命付けられた者達。
だが神は言った。
永い時の中を旅し、もしその旅の先にオールブルーを見ることが出来たら全ての罪を許そうと・・・。
常識で考えれば、そんな場所なんてあるはずがない。
でも僕は、ある時『青色の精霊』に訪ねてみた。オールブルーは世界のどこかに存在しているのか?・・・と。
すると青色の精霊はこう答えた。
「その問いの答えは、それぞれの心の中にある」と・・・。
空を見上げると、そこに懐かしい顏があった。
イデア・・・かつて僕に旅の行く先の話を教えてくれた雲の精霊。
「イデア、君の旅はまだまだ続くのかい?」
そう呼び掛けると、イデアは僕に笑顔だけ返し、空を行った。
その笑顔を見た時、僕は、イデアはいつかきっとオールブルーにたどり着くが出来るだろう。何故かそう確信することができたんだ