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オゼリアプルートの幻想日記  作者: 鳳 翔平
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その⑥ どことなくさびしい少女

その⑥ どことなくさびしい少女


春の雨は「しとしと」と、さびしげに降り注ぐ。


それは春の雨の精霊のせいだと僕は思っている。


その姿は小柄な少女。

水色の雨ガッパに赤い長靴、そして黄色の雨傘。


彼女は明るい場所が苦手だ。

でも暗い場所もあまり得意ではないようだ。


だから彼女をよく見かけるのは、

日が沈んでから、霧雨か小雨の舞う街灯の下。


仕事が遅くなって家に帰る途中、ちょうど彼女の姿を見かけた。


街灯の下でしゃがみこんで

カエルかカタツムリとでも戯れているのだろうか?

しきりにアスファルトの上を指先で突っついては

時折「クスクス」と小声で笑っている。


それが春の雨の精霊だとわかっている人間でも

この時間の街灯の下にそんな少女が一人でいる光景を見ると

あまり気持ちのいいものではない。


(なあ、春の雨の精霊さん。一人でそんなにして楽しいかい?)


そっと声をかけたつもりが、かなり彼女を驚かせてしまったらしい。

彼女はビクッと身を震わせると、驚き泣きそうな顔をして後ずさった。


「あなただれ?何者?なんで私の姿が見えるの?」


(僕の名前はオゼリアプルート。

 怪しいものじゃないよ。

 君たちの仲間からもらったこの精霊眼のおかげで

 君たちが見えてちょっとお話ができるただの人間さ)


「ほんと?私たちを捕まえる人じゃないの?」


(大丈夫だよ。後で聞いてみてごらん。

 豊穣の女神や、花の妖精たちとも知り合いなんだ)


彼女は少し安心したようで、

短い時間ではあったが色々と話をすることができた。


どうも彼女は恥ずかしがり屋のようだ。

だから他の仲間たちとも一緒にいないで一人の方が多いらしい。


(でもお譲ちゃん、見える人間にしてみると

 あまり気持ちのいいものじゃないよ。まるで幽霊見たい)


すると彼女はクスクスっと笑うと一言こういった。


「大丈夫よ、こんなかわいい幽霊がいるわけないから」


なにが大丈夫何だかわからないが。

ただ、そのさびしげな外見とは裏腹に

当の本人はいたって楽しそうだ。

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