その⑤ 春の訪れ
その⑤ 春の訪れ
雪解けがだいぶん進み、虫たちも少しずつ動き始めてきた。
温かな風と、太陽のやわらかな日差しが
春の訪れを感じさせてくれる。
雪の精霊「スノーマン」が去って数日。
ようやく春が始まったようだ。
「オゼリアプルートではないか」
そよ風とともに聞こえてきたのはどこか懐かしい声。
肩まである桃色の髪をなびかせ、
春風とともにやってきたのは懐かしい顔だった。
春の精霊「サクラ」
(久しぶりだねサクラ。元気だったかい?)
「ウム、わらわはいつも以上に元気じゃ。
そちはかなり疲れておるようじゃが」
(冬も長かったしね、寒さ疲れさ。
でもサクラ、一体どうしたんだい?
君はこの地の担当を離れて、南の地へ渡ったんじゃなかったっけ)
するとサクラは、少し不機嫌そうな顔をして
「今年は冬の連中がモタモタといつまでも居座っておったのでな、
助っ人を頼まれたのじゃ」
(大変そうだね)
「そうでもないぞ、南はすでに春を初めてきた。
比較的暖かかったのでな。
まあ見ておれオゼリアプルートよ、
今年の春は二つの精霊団の力を持って、
いつも以上に温かな息吹をもたらしてくれようぞ」
(そうかい、期待してるよ。
でも君だけじゃなくて精霊団も一緒に連れてきたの?)
「全部ではないがな、わらわだけでは出来ることが限られる。
そなたがこの地におるなら、古株が顔を見せにくるかもしれんよ」
そう言うとサクラは、扇をやわらかく仰ぎながら
宙に舞い上がり、春の訪れを知らせる舞を始めた。
「さあ、冬の眠りについている者たちよ。
春の訪れじゃ、そろそろ眠りから覚めよ」
もうすぐ本格的な春が始まる。