その④ 冬の終わり
その④ 冬の終わり
ある晴れた休日。
温かな日差と風が、ようやくの春の訪れを感じさせてくれる。
ふと、見上げた青空からチラチラと雪が舞い降り始めた。
雪はアスファルトの上に降りると、すぐに溶けて黒いシミとなった。
その中にまざり込むように現れた丸い影。
その上に一体の雪だるまが現れた。
雪の精霊「スノーマン」だ。
「やぁ、オゼリアプルート。半年振りだね」
その雪だるまの、作られたような顔がニコやかに緩んだ。
(やあ、スノーマン。ようやく帰れるのかい?)
「そうだね。今年の冬はなかなかに慌ただしかったから、
帰るのがずいぶんと遅くなってしまったよ」
(それじゃあ、やっと春が始まるんだね)
「それがそうでもないんだ。
今年はあまりにもバタバタしてたから、
いつもはボクが一番最後に帰るのだけれど
まだハグれてしまった後続隊が何組か残っているんだ。
もう少しの間、突然に寒くなることがあるかもしれないね」
(そうか、まだしばらく本格的な春は来ないのか)
「でも安心してよ。冬が長引いた分、春の精霊たちが張り切ってたから
冬が去ったらいつも以上に春の進行は早いはずだよ」
そう言って、もう一度ニコやかに微笑むと、
雪だるまはフワッと舞い上がって行った。
「また初雪が降るころに、やってくるよ。
それまでまた半年、サヨナラだね」
(またな、スノーマン)
今まで幾度となく繰り返してきた、冬との別れと、再会の約束。
もうすぐこの北の地にも、本格的な春が訪れる。