その② 季節外れの冬空
その② 季節外れの冬空
今日はずいぶん冷え込むな~。
そう思いながら僕は季節外れの冬空を見上げた。
するとそこから...
「オゼリアプルート殿~」
現れたのはセイウチに乗った、白髭の男。
北の王国の国王に仕える大臣だ。
「オゼリアプルート殿、王子を見かけませんでしたか」
(いや、しばらく見かけてないけれど)
「そうですか」
大臣は額の汗を拭いながら
「いや~、しかし参った。
王子の逃亡癖には困ったものだ」
(今年の寒気団には王子も同行していたのかい?)
「はい、今年は陛下が少し体をこわしてしまったものですから」
(どうりで今年は寒さが厳しいと思ったよ)
僕はポケットから携帯を取り出すと、
気象庁の気象衛星のページを開いて大臣に手渡した。
「いつも申し訳ない
どれどれ、この雪雲が今、寒気団が待機している場所だから...
この不自然な雲が王子に違いない」
大臣は僕に携帯を返すと、手綱を握り直し
「いつも申し訳ない、オゼリアプルート殿
しかし人間とは便利なモノを持っていますな」
(いや礼には及ばないさ、僕もいい加減春が恋しくてね)
「先日も春の精霊と豊穣の女神にドヤされたところです
早く帰らなければまた怒られてしまう」
大臣はそう苦笑いをしながら寒空へと飛び立った。