その① 冬に咲く花
その① 冬に咲く花
昔、花の妖精たちとこんな話をしたことがあった。
なぜ季節の移り変わりがあるのか。
ある妖精が、自分たちに伝わる一つの言い伝えを教えてくれた。
季節の移り変わりは、冬に咲く
ある一輪の《花》が元になっていると言われています。
夏、その花の種が芽を出し大地に根付くと
徐々に周りから命のエネルギーを吸い始めます。
それが秋への、季節の移り変わりに繋がって行きます。
少しずつ失われて行く命のエネルギーを最小限に抑えようと
木々は葉を落とし、花は枯れて種となり、
動物たちは眠りの準備を始めるのです。
秋の終わり頃には花はつぼみに、
そしてその花びらが開こうとする頃、
空から雪が舞い降り始めます。
少しずつ花びらが開いて行くにつれ、
花はより多くのエネルギーを必要とします。
最も美しく、大きく咲き開いた頃が真冬。
それを境にして、花は少しずつその頭を下げ始めるにです。
そしてついに、その花が落ちてしまったとき
残ったクキを大砲のように、その花の種が
世界のどこかに向けて飛び出すんです。
落ちてしまった花は、今まで美しく咲くために
吸い取ってエネルギーを、今度は逆に大地にそそぎ込み始めます。
すると生き物たちは、少しずつ命のエネルギーを取り戻し始め
目覚めの準備を始めるのです。
そして大地の春の訪れとともに、一斉に目覚めの時を迎えます。
そそがれるエネルギーと共に命の息吹は増し
全てのエネルギーをそそぎ込んで花弁が枯れ果てる頃
大地は命にあふれ、真夏を迎えています。
そして花が枯れ果てたのを察知したかのように
種が芽を出し、再び世界が巡るんです。
なるほどね~、ある意味考え方の逆転だね
冬は眠りの季節だと思ってたから
冬に咲く花か...
「ちなみにですよ、その花の咲いている地方が
一番厳しい冬を迎えるそうです。
今年、一番冬が厳しかった所の近くに
その花が咲いていたかもしれませんね」
妖精は最後にそう付け足すと、にっこりと微笑んだ
この第一話は、以前アメーバブログで連載していた中から、転載、一部編集したものです。