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全裸で異世界落ちした俺の、今日も誤解される街暮らし 〜魔法少女見習いと亡霊パンツと牢屋生活〜  作者: 月影ポンコツ


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決断の朝 、選ばないという選択は、もうできない

朝。


牢屋に差し込む光は、

いつもより白かった。


夜が終わったことだけは、

はっきり分かる。



鍵の音。


ガチャリ。


その一音で、

全員が顔を上げた。


隊長が立っている。


今日は、

迷っていない目だった。



「……時間だ」


短い一言。


それだけで、

この朝が“普通じゃない”と分かる。


アキトは、

立ち上がった。


「結論は、

 もう決まってますよね」


隊長

「聞かせてもらうまではな」



一拍。


アキト

「俺は」


言葉を探すように、

少し間を置く。


「隔離、

 受けます」


エルミナ

「……っ」


息を呑む音が、

小さく響いた。



「理由は

 昨日言った通りです」


アキト

「街は守るべきで、

 俺は危ない」


「納得してます」


隊長は、

すぐには答えなかった。


それが、

一番重かった。



エルミナ

「……待ってください」


一歩、

前に出る。


「それ、

 アキトさんが

 全部背負う必要

 ありますか?」


声は、

震えていない。


「危ないのは

 事実です」


「でも」


拳を、

強く握る。


「一人にするのが

 正解だとは

 思えません」



隊長

「感情論だ」


エルミナ

「承知です!」


即答だった。


「でも私は、

 感情で

 人を見ます!」


アキト

「エルミナ……」


「だって!」


目が、

真っ直ぐだった。


「一人で

 全部受け入れる顔、

 おかしいです!」



沈黙。


ラーデンが、

ゆっくり口を開く。


「坊主」


アキト

「はい」


「選ぶというのはな」


少し笑う。


「痛い方を

 引き受けることじゃ

 ない」


「……」


「誰かと

 分けることじゃ」



隊長は、

深く息を吐いた。


「……分かった」


エルミナの顔が、

ぱっと明るくなりかけて、

止まる。


「隔離は行う」


空気が、

張りつめる。


「だが」


一歩、

踏み出す。


「条件付きだ」



「完全単独ではない」


エルミナ

「……!」


「同行は認めない」


エルミナ

「……え」


「だが、

 定期接触と

 監視付き面会は許可する」


アキト

「それは……」


隊長

「最大限だ」


視線を、

逸らさない。


「これ以上は、

 街が許さない」



エルミナは、

唇を噛んだ。


それでも、

うなずいた。


「……分かりました」


完全に納得していない、

うなずきだった。



アキト

「……ありがとうございます」


隊長

「礼を言われる

 判断じゃない」


そう言って、

背を向ける。


「準備しろ」


「今日中に

 移送する」



扉が閉まる。


静かに。


エルミナは、

アキトを見る。


「……行っちゃうんですね」


アキト

「一時的、

 ですよ」


無理に、

笑った。


ラーデン

「嘘が下手じゃな」


アキト

「黙ってください」



朝の光が、

牢屋を満たす。


誰も、

その光を

明るいとは思わなかった。


今日も牢屋は……別れを決めるには、あまりに慣れた場所だった。

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